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楽曲無断使用でJASRACが飲食店提訴、結婚式や披露宴の楽曲も著作権申請が必要?

飲食店経営者が提訴されるなど、楽曲の無断使用に厳しい目が向けられています。6月は多くの結婚式や披露宴が行われ、さまざまな楽曲が使われますが、著作権申請はどこまで必要なのでしょうか。

結婚式で使う楽曲も著作権申請が必要?
結婚式で使う楽曲も著作権申請が必要?

 6月に結婚する花嫁「ジューンブライド」は幸せになるとされ、6月は多くの結婚式や披露宴が行われます。その会場では、新郎新婦がお気に入りの曲で入場するなど、さまざまな楽曲が使われますが、日本音楽著作権協会(JASRAC)は最近、楽曲の無断使用で大阪、山梨、福岡各府県の飲食店経営者を提訴するなど、楽曲使用について対応を強化しています。結婚式や披露宴で流す楽曲は、どの範囲まで著作権申請をしなければならないのでしょうか。知的財産権に詳しい、芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

通常、式場がJASRACに使用料

Q.そもそも、楽曲の著作者やレコード会社には、どのような権利が認められているのですか。

牧野さん「楽曲の著作者には、創作した楽曲(著作物)に対して『著作権』や『著作者人格権』が与えられます。また、楽曲をCDとして発売するレコード会社などには『著作隣接権』が付与され、著作者に与えられた著作権や著作者人格権のうち、録音権など一部の限られた権利を行使することが認められています。

一般人が個人で聴くこと以外の用途で楽曲を使用することは、著作権や著作隣接権に抵触するため許諾なしではできません。CDをそのまま再生して利用する場合、著作権については日本音楽著作権協会(JASRAC)へと使用料を支払って許諾を得ることが必要になります。編集(複製)する場合には、著作権の許諾のほか、著作隣接権について日本レコード協会などでの手続きも必要になります」

Q.結婚式や披露宴では、新郎新婦の入場時などにBGMとして数多くの楽曲が使われます。こうした楽曲も、一つ一つ著作権申請が必要なのでしょうか。

牧野さん「結婚式や披露宴のBGMでCDの楽曲を流す場合、通常は式場が、著作権についてはJASRACへ使用料を支払って許諾を得ているでしょう。BGM用に編集(複製)する場合には、JASRACなどに著作権の許諾を得る必要があるほか、著作隣接権について日本レコード協会などでの手続きが必要になりますが、この手続きも代行してくれるところがありますので、式場に相談してみましょう」

Q.友人代表が新郎新婦の門出を祝うためにストーリービデオを事前に制作し、サプライズで流すこともよくあります。このビデオ内で使う楽曲も利用の許諾が必要ですか。

牧野さん「ストーリービデオなど個人的な制作物の場合、制作については、友人がJASRAC などの許諾を得る必要があります。楽曲を流すことについては、式場側が 1 年間に一定の 金額を支払えば楽曲が使い放題になる『音楽著作権年間包括契約』をJASRACと結んでいれば問題ありません」

Q.友人がサプライズで、新郎新婦を祝う目的で歌をプレゼントすることもあります。その際、カラオケを使用することもありますが、この場合も著作権申請が必要ですか。

牧野さん「CDをそのまま利用するのではありませんが、楽曲の著作権を使用することになりますので、歌をプレゼントする友人がJASRACへ直接、あるいは代行業者を通じて、許諾を得る必要があります。しかし、先述の通り、式場側が年間を通じての許諾をJASRACから得ていれば、問題ないでしょう」

Q.著作権という制度は大変窮屈にも思えます。ここまでしないといけない理由は。

牧野さん「技術の進歩により、高性能の複製機器やネット上で楽曲が簡単にやり取りできるようになり、許諾を得ていない利用が増えている事情があります。著作権侵害による損害が拡大しており、CDの売り上げの激減、ネット配信の売り上げが芳しくないことも相まって、権利者側がかなりセンシティブになっているからです」

Q.もし、楽曲の著作者が著作権などについて徴収を求めないことを宣言すれば、こうした申請の必要性がなくなるかもしれません。そうした事例はありますか。

牧野さん「人気ロックバンドのGLAYが、『GLAY』名義で発表している楽曲を結婚式や披露宴で使用する場合に限り、『著作隣接権』について使用者から料金を徴収しないことを発表しました。

この方針は、式場以外の、課金が十分できていない『商業利用業者』が対象となっている側面もあると思います。例えば、ビデオ制作業者が披露宴で流すストーリービデオにCD音楽を利用するケースなどです。使用料を支払っていない業者に対し、GLAYの楽曲については『著作権使用料だけでも支払ってください』とのメッセージになりますし、隣接権無償化をきっかけに、使用料を支払っていない業者に改めて問題提起する意図もあるのかもしれません。

なお、隣接権無償化という大胆な方針を打ち出せるのは、GLAYなど楽曲を自作・自演するアーティストに限られ、他のアーティストが追随する可能性は低いかもしれません。というのも、歌唱しか担当しないアーティストの場合は、隣接権を無償化しても著作権の使用料が入ってくるわけではないので、GLAYのような方針を採用することは難しいと考えられるからです」

※一部修正しました(6月4日16時30分)。

(オトナンサー編集部)

牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

コメント

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2件のコメント

  1. BGM利用のとき日本レコード協会に使用料を支払っているはずだと記事中にありますが、レコード協会への支払いは不要のはずです。著作権には演奏権がありますが、著作隣接権にはそれに相当する権利はありませんから。記事の訂正を希望します。

    • ご指摘ありがとうございます。訂正いたしました。