横浜の中学校は昼食時間「15分」、早食いによる問題はない? 習慣化による影響は?
横浜市内の公立中学校の多くが、昼食時間を「15分」に設定しているそうです。健康面の問題はないのでしょうか。
横浜市教育委員会が、市内の公立中学校と義務教育学校(小中一貫校)全148校を対象に2018年度の昼食時間を調査したところ、9割を超える135校が「15分」に設定していたことが分かりました。「15分」では友人と歓談することはもちろん、ゆっくり食べていては時間内に食事を終えることができません。時間内に食べ終えようと、「早食い」に走る可能性も懸念されます。成長期に早食いする習慣が身についてしまった場合、健康上問題はないのでしょうか。内科医の市原由美江さんに聞きました。
15分では満腹中枢が働かない
Q.食事の時間が「15分」というのは、十分な時間なのでしょうか。
市原さん「食事開始後約20分経過すると、脂肪細胞から『レプチン』という食欲を抑えるホルモンが分泌され、これが脳の視床下部に働いて満腹中枢を刺激します。つまり、食事を15分で終えてしまうと満腹中枢が働かないままなので、必要以上に食べてしまう可能性があります。栄養は補えますが、糖質や脂質など、取り過ぎるとよくない栄養素まで多く取ることになります」
Q.昼食時間が短いと、早食いをせざるを得ない状況になるかと思います。胃や腸への影響は。
市原さん「食べ物の消化のためには、ゆっくりよくかんで食べることが大切です。早食いをすると、消化や吸収に時間がかかって胃もたれを起こしたり、胃の内圧が上がることで逆流性食道炎になったりするなど負担がかかります」
Q.血糖値の上昇、その後の反動などの影響は。
市原さん「先述の通り、早食いをすると満腹中枢が働かないので食べ過ぎることになり、また短時間で一気に食べ物が胃に入るので、食後の血糖値が急上昇しやすくなります。境界型糖尿病(糖尿病には至っていないが正常ともいえない状態)や2型糖尿病の初期の人は、こうした血糖値の急上昇に反応して過剰にインスリンが分泌され、数時間後に低血糖を起こすことも珍しくありません。また、食べ過ぎによる肥満の結果、糖尿病になることも十分あり得ます」
Q.成長期に「早食い」の習慣が身についてしまった場合、健康への影響はありますか。
市原さん「早食いをしないように、子どもの頃から、よくかんでゆっくり食事する習慣を身につけることが大切です。成長期に早食いをしていると、若いうちから肥満になる可能性が高まり、糖尿病はもちろん、高血圧や脂質異常症などの生活習慣病に早くからなってしまう可能性があります。このような生活習慣病の期間が長いほど動脈硬化は進むので、脳梗塞や心筋梗塞などの血管の病気につながりやすくなります」
Q.時間内に食事を終えようと早食いをして胃腸の調子が悪くなった場合、どのように対処したらよいのでしょうか。
市原さん「消化のための血流を胃に集中させるため、なるべく安静にして休むことです。消化を助ける市販薬もあるので試してもよいでしょう。それでも改善しない場合や不調を繰り返す場合、病気が原因で起こっていることも考えられるので、医療機関を受診しましょう」
Q.昼食時間がどうしても長くできない場合、胃腸など体に負担をかけずに食べる方法はありますか。
市原さん「ゆっくりとよくかんで食べても、昼食を時間内に食べ終えられる量にとどめることをお勧めします」
Q.食事にかける理想的な時間は。
市原さん「満腹中枢が刺激される時間を考えると、最低でも30分は欲しいです」
(オトナンサー編集部)
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