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出産直後、義両親に訪問された女性から「困惑」「疲れた」の声、必要な配慮は?

「出産後すぐに義理の両親が病院に来て戸惑った」という体験談がネット上で話題になりました。産後の女性の状態と、面会時に必要な配慮とは――。

孫の顔を早く見たい気持ちは分かるけど…
孫の顔を早く見たい気持ちは分かるけど…

「出産後すぐに義理の両親が病院に来て戸惑った」。このような体験談が先日、ネット上で話題になりました。「赤ちゃんが生まれた」というおめでたい知らせが入ると、妻側の両親も夫側の両親も「早く孫の顔が見たい」と思うのは当然のことです。しかし、出産した女性の中には、「産後間もなく義両親が面会に来て困惑した」「産後の翌日から義両親が毎日病室に長居して疲れた」など義両親への対応に頭を抱えた人も多いようです。

 ネット上では「実母ならいいけど、義母は正直迷惑」「気持ちはありがたいけど、産後は心身がついていかない」「ぐったりしているところを義両親に見られるのは苦痛」など、さまざまな声が上がっています。産後の女性の状態と、面会時に必要な配慮について、産婦人科医の尾西芳子さんに聞きました。

義両親に気を使えないのは当然

Q.一般的に、陣痛から出産後の女性はどのような状態なのでしょうか。

尾西さん「陣痛が強まってくると、その後の出産に向けてナイーブな気持ちになる人もいます。出産直後は、分娩時に傷ついた部分を縫うなどの処置のほか、出血で貧血気味になったり、ホルモンバランスの急激な変化で体調が優れなかったりすることも多いです。それまで陣痛と闘っていて疲労感が強く出るので、まずゆっくり休んでもらうことを基本としています。出産後しばらくたってからは、血栓症の予防のために歩いてもらったり、排尿がスムーズにできるかなどを確認したりします。その後、落ち着いたら授乳の練習を始めます。

ちなみに、母親となった責任感から、自分以外の人が子どもを触ることに嫌悪感を抱く女性もいますが、これは本能的なものであり、母になった証拠です」

Q.出産直後に面会に訪れたり、病室に長時間滞在したりする義両親は実際に多いのですか。

尾西さん「日本では、子どもが男性側の姓を引き継ぐことが多いため、子どもも『男性家族のもの』という意識が強く、女性は義両親の面会を断りにくい側面もあると思います。陣痛時や出産時に義両親がスタンバイしている光景もよく見かけます。

出産する妊婦さんが望んでいるのであれば問題ありませんし、『実の両親より義両親の方が仲が良い』ケースの場合は頼りにするのもよいと思います。しかし、普段それほど義両親と連絡を取り合っていない場合、やはり女性は気を使ってしまいます。そして、痛がっている顔は誰でも人に見せたくないものです。

出産後、義両親に気を使う気力や体力が残っていればよいのですが、疲れ果てて気を使えないことでその後、義両親との関係が悪化してしまうことも考えられます。また、出産直後は敏感な時期なので、ストレスがあると母乳が出にくくなってしまうこともあります」

Q.出産直後の義両親の面会を快く思っていない産後の女性は多いようです。

尾西さん「産後、憔悴(しょうすい)しきっている妊婦さんをたくさん診てきたので、義両親にまで気を使えなくて当然だと思います。しかし、義両親が心配したり、楽しみにしていたりするのもよく分かるので、出産前に『当日は(赤ちゃんの)写真を送るね』『○○ごろになったら面会できるかも』と伝えておくとよいかもしれません。言いにくいという人は、息子であるご主人にそうした交渉をお願いしてみてもよいのではないでしょうか」

Q.産後の女性への面会を希望するとき、どのような配慮・意識が必要でしょうか。

尾西さん「『出産は大きな交通事故に遭うのと同じくらい心身にダメージがある』といわれている通り、出産当日はもちろん、翌日以降も顔や体がむくんだり、出産時の傷が痛んだりするなど、引き続きダメージが残ります。また、うまく授乳ができないことでストレスを抱える女性も少なくありません。産後の女性がこうした状態にあることを念頭に置き、『いつなら訪ねてよいか』を本人または息子さんに確認するようにしましょう」

Q.出産直後に病院に駆けつける義両親について、産婦人科医の立場からどのようなメッセージを伝えたいですか。

尾西さん「『早く孫の顔が見たい』という気持ちはとてもよく分かるのですが、当日はゆっくり休んでもらい、翌日以降に体調を確認してから訪ねるようにしましょう。今はスマホや携帯があるので、当日は赤ちゃんの写真を送ってもらう約束をしておくと、はやる気持ちも少し落ち着くかもしれませんね」

(オトナンサー編集部)

尾西芳子(おにし・よしこ)

産婦人科医(神谷町WGレディースクリニック院長)

2005年神戸大学国際文化学部卒業、山口大学医学部学士編入学。2009年山口大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学附属病院研修医、日本赤十字社医療センター産婦人科、済生会中津病院産婦人科などを経て、現在は「どんな小さな不調でも相談に来てほしい」と、女性の全ての悩みに応えられるかかりつけ医として、都内の産婦人科クリニックに勤務。産科・婦人科医の立場から、働く女性や管理職の男性に向けた企業研修を行っているほか、モデル経験があり、美と健康に関する知識も豊富。日本産科婦人科学会会員、日本女性医学学会会員、日本産婦人科乳腺学会会員。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yoshiko-onishi/)。

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