オトナンサー|オトナの教養エンタメバラエティー

盲導犬同伴を理由に飲食店などへの入店を拒否する行為、法的問題は?

盲導犬同伴を理由に、飲食店などで「入店拒否」などの差別的扱いを受けた経験のある人が多くいます。こうした扱いに法的問題はないのでしょうか。

盲導犬理由に入店拒否、法的問題は?
盲導犬理由に入店拒否、法的問題は?

 先日、視覚障害者をサポートする公益財団法人アイメイト協会(東京都練馬区)が、盲導犬利用者を対象に行った調査結果を発表しました。調査によると、盲導犬を連れていることを理由に、飲食店や商業施設などで「入店拒否」などの差別的扱いを受けた経験のある人が全体の52.9%いました。盲導犬を連れた人の入店を拒否することの法的問題について、弁護士の藤原家康さんに聞きました。

入店拒否が認められるのは例外的

Q.盲導犬を連れた視覚障害者の入店を断ることは法律違反なのでしょうか。

藤原さん「違法になると考えられます。補助犬を使う身体障害者の自立や社会参加を促進するための『身体障害者補助犬法』では、盲導犬などの補助犬の同伴を、原則として拒んではならないことになっているためです。例外的に、同伴によって店に著しい損害が発生し、またはお店を利用する人が著しい損害を受ける恐れがある場合や、その他のやむを得ない理由がある場合は拒むことができます。

また、盲導犬を連れた視覚障害者の入店を断ることは、『障害者権利条約』『障害者基本法』が禁止する『差別』、障害者差別解消法が禁止する『不当な差別的取扱い』に当たるものと考えられます。また、東京都のように、条例においても差別を禁止している地域があり、その差別にも当たると考えられます」

Q.違反した場合、罰則はあるのでしょうか。

藤原さん「刑事罰はありませんが、拒否された人は民事上の損害賠償請求(慰謝料の請求など)ができると考えられます」

Q.「食べ物を扱う」「バリアフリー設備がない」などを理由に入店を断ることは認められるのでしょうか。

藤原さん「『身体障害者補助犬法』における、『例外的に入店を拒否できる場合』には当たらないと考えられます。なぜなら、同法において盲導犬は、障害者の生活にとって極めて有用であり、なおかつ、盲導犬の使用者が適切な管理をすることが前提とされているからです。同法ではこのほか、国民は、補助犬を使用する身体障害者に対し、必要な協力をするよう努めなければならないとされています。

これらのことから、『食べ物を扱う』『バリアフリー設備がない』といった理由では、入店を拒否できないことになります。『動物アレルギーや犬嫌いの人が店内にいる』といった理由も同様です」

Q.飲食店に盲導犬を入店させた場合、店側が食品衛生法に触れる可能性はありますか。

藤原さん「食品衛生法が定めている内容である、『販売する食品の受け渡しなどは清潔で衛生的に行われなければならない』に違反するかどうかの問題となります。もし、衛生的に問題がある盲導犬を障害者が同伴していた場合は、食品衛生法違反になる可能性があり、入店を拒否できる場合があると考えられます。しかし、衛生的に問題のない盲導犬であれば、食品衛生法に触れず、入店拒否はできないと思います。通常は、こちらのケースだと思います」

Q.盲導犬を入店させたことで他の客からクレームがあった場合、店側はどのように対処すべきなのでしょうか。

藤原さん「『盲導犬の入店を拒否すべきやむを得ない理由が具体的かつ客観的にない限りはクレームに応じることができない』ことを客側に説明するほかないと考えます」

Q.盲導犬を連れた障害者の入店拒否が違法なのに、なぜこうした行為が横行するのでしょうか。

藤原さん「法律が広く認知されていないことや、刑事罰などの制裁規定がないことが理由といえます。また、盲導犬の社会的価値が共有されていないからかもしれません」

(オトナンサー編集部)

藤原家康(ふじわら・いえやす)

弁護士

東京大学法学部第一類卒業。2001年10月弁護士登録(第二東京弁護士会)。一般民事事件・刑事事件・家事事件・行政事件・破産事件・企業法務などに携わる。日本弁護士連合会憲法委員会事務局次長、第二東京弁護士会人権擁護委員会副委員長などを歴任。中学校・高校教諭免許(英語)も保有する。TBS「ひるおび!」「クイズ!新明解国語辞典」「夫婦問題バラエティ!ラブネプ」、フジテレビ「お台場政経塾」などメディア出演多数。

コメント