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有名店のブランドカップ麺がコンビニの売り場を席巻する理由

有名ラーメン店の名前を冠したオリジナルカップ麺が、コンビニの売り場で存在感を増しています。その理由とは――。

大手コンビニと有名ラーメン店がコラボしたカップ麺
大手コンビニと有名ラーメン店がコラボしたカップ麺

 日清食品の創業者・安藤百福が世界初の即席麺を開発するまでの経緯をもとにした、NHK連続テレビ小説「まんぷく」が終了しました。終盤になるにつれ、同社の「チキンラーメン」「カップヌードル」の売り上げが右肩上がりとなり、今後も同商品を含めた即席麺全体の売り上げの伸びが期待されます。

 そんな中、各コンビニでは、有名ラーメン店の名前を冠したオリジナルカップ麺が売り場で存在感を増しています。ラーメン店の味が手軽に楽しめることから、SNS上などでたびたび話題となり、品切れとなることもあります。コンビニでオリジナルカップ麺が増え続ける理由について、流通アナリストの渡辺広明さんに聞きました。

本格的な販売開始は2000年ごろ

Q.現在、コンビニ店にはさまざまな種類のカップ麺が並べられています。

渡辺さん「15年ほど前、全国で1年間に販売されるカップ麺は約600種類でしたが、現在は1000種類を超えます。メーカーが新商品を出し続けた結果、増えました。定番商品だけでは売り上げを確保することが難しいためです。カップ麺の開発関係者でも、流通する全商品を食べた人はいないのではないでしょうか。ほとんどの商品が発売後すぐに売り場から消えるため、競争は激しいです」

Q.コンビニで、有名ラーメン店とコラボしたカップ麺が売られるようになったのは、いつごろからでしょうか。

渡辺さん「1990年代に、一部コンビニで取り組みが始まりました。国内で初めて有名ラーメン店の名前を冠した商品を製造したのは、北海道幕別町にあった食品メーカーの十勝新津製麺(当時の社名、その後改名して経営破綻し、他社が事業継承)と言われています。ローソンやサンクスが同社と組み、有名ラーメン店のカップ麺を販売していました。

本格的な販売が始まったのは2000年ごろです。同年4月、セブン-イレブンが『日清名店仕込み 札幌すみれ』『日清名店仕込み 一風堂』を発売し人気商品となりました。『すみれ』『一風堂』が今も販売されているのは、商品のレベルが高いのと、商品を徹底的に売り抜くセブン-イレブンの姿勢が影響していると思います」

Q.なぜ、コンビニやメーカーはオリジナルカップ麺の販売に注力するのでしょうか。

渡辺さん「『セブン-イレブンはこのラーメン店とコラボした』『ファミリーマートはこの有名店とコラボした』など、他社と差別化を図るためだと思います。また、オリジナルカップ麺は、店舗数の多いコンビニだからできるビジネスで、大手スーパーも容易にまねできません。カップ麺のPB商品の最低ロット数は10万~15万個です。大手のコンビニは、全国に約1万5000~2万店舗あり、1店舗あたり5~6個販売すれば在庫をさばけるため、在庫を抱えるリスクが減るのです。

メーカーにとっても、製造数・販売数が確約されているPB商品の製造を行えば、手堅く利益が得られるため、双方にメリットが生まれます」

Q.ラーメン店の味を再現するのは難しいのではないでしょうか。

渡辺さん「大手メーカーの技術があれば、ある程度のところまでは比較的容易に再現できると関係者から聞いています。実際のラーメン店のように何時間もスープを煮込むことなく、エキスのみで味付けをしているからです。もちろん、店の味を完全に再現するのは困難です」

Q.コンビニ店側がカップ麺を販売して得られる利益は。

渡辺さん「メーカーのNB(ナショナルブランド)商品の場合、店舗の利益率は30~35%、PB商品であれば、場合によって50%前後ともいわれています」

Q.渡辺さんはローソン在籍時、カップ麺の商品開発に携わったことはありますか。

渡辺さん「ローソン在籍時は経験していませんが(エステ業界大手)TBCグループ在籍時に『TBCビューティーヌードル』(税込み297円、販売終了)というカップ麺を開発しました。当時、『美容によい』として春雨が流行していたためです。小ロット生産が可能なメーカーに製造を委託し、成城石井やナチュラルローソンなどで販売していました」

Q.ラーメン店によっては、商品化を断るケースもあるのではないでしょうか。

渡辺さん「もちろん、あると思います。カップ麺では店の味を完全に再現できません。商品化を承諾するかどうかは、ラーメンの味を重視するか、売り上げを重視するかだと思います。来店しておいしいラーメンを食べてほしいと考える店は断るでしょうし、反対に、全国チェーン展開したいと考える店は商品開発に積極的に協力すると思います」

Q.「まんぷく」効果などで、カップ麺の売り上げは今後も伸び続けますか。

渡辺さん「伸びると思います。日本即席食品工業協会の発表によると、2018年の即席麺の出荷ベースでの売り上げは、前年比2.3%増の5990億2600万円、数量ベースでも前年比2.1%増の57億7856万食でした。昨年発生した西日本豪雨や北海道胆振東部地震、大阪北部地震といった自然災害により、非常食としてのニーズも高まっています。

また、多くの外国人観光客が来日しており、今後、東京オリンピックや大阪万博などのイベントで、カップラーメン文化が定着していない国の人が食べるようになれば、さらなる売り上げの伸びも期待できるのではないでしょうか。

一方、逆風となる要素もあります。セブン-イレブンやローソンでは、有名ラーメン店とコラボしたチルド麺も販売しています。カップ麺に比べ味の再現度が高いため、今後はカップ麺に代わり、チルド麺に人気が集まるかもしれません」

(オトナンサー編集部)

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)

流通アナリスト、マーケティングアナリスト、コンビニジャーナリスト

1967年4月24日生まれ。浜松市出身。東洋大学法学部経営法学科卒業後、ローソン入社。22年勤務し、店長、スーパーバイザーを経てコンビニバイヤーを16年経験、約700品の商品開発を行う。同社退社後、pdc、TBCグループを経て、2019年3月、やらまいかマーケティング(https://www.yaramaikahw.com/)を設立。同時期に芸能事務所オスカープロモーションに移籍し、オフラインサロン「流通未来研究所」(https://camp-fire.jp/projects/133593/preview?token=1el9lzc4&fbclid=IwAR3GD4YzOAqgGt7X0xdi1XIpv9jG-EpT1wd57is5xCwlKN2UDjkqqcwWGeI)を開設。テレビ、ラジオなどで幅広く活動する。著書に「コンビニの傘はなぜ大きくなったのか」(グーテンブック)

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