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子どもが身を守れるように…「こども六法」出版の大学院生、動機はいじめに遭った過去

図書室で出合った本

 第2志望の中学には合格し、いじめっ子たちとは離れることができました。そこで、一つの出合いがありました。1年生のとき、図書室の棚に置いてあった分厚い本が、目に留まりました。

「六法全書でした。今でもはっきり覚えています、有斐閣の平成13年版です。小学生のとき、公民の授業が好きで、憲法は興味を持って読んでいました。だから、自然とページをめくったんだと思います」

 最初は憲法の読み直しから始めましたが、一番興味を持ったのは「刑法」でした。

「人にけがをさせたら『傷害罪』、けがをさせなくても暴力を振るったら『暴行罪』、バカとかアホとか言ったら『侮辱罪』。小学校時代、僕がやられていたことは法律違反だった。本当は、国に止めてもらうことができた。六法を知っていれば、自分の身を守れたんじゃないか…」

 あのとき、おかしいと思いながら何もできなかった。ぶつけようのない怒りと悔しさがこみ上げてきました。

 埼玉県内の公立高校を経て、慶応義塾大学へ進学。法律の教育を通じた、いじめ問題の解決を研究課題に選びます。それは、法知識がないゆえに自分の権利を主張できなかった、12歳のときの後悔からでした。そして「12歳の自分」に届ける法律書作りを思い立ちます。

「法律はみんなのためのルールのはずなのに、小学生は難しくて六法全書を読めない。ならば自分で作ろうと思ったのが、最初の『こども六法』です」

 大学3年のとき、研究計画書を作成し、大学が設けた研究奨励金を獲得。小学生向けの副教材として完成させました。刑法や民法の一部などを六法全書から抜粋して、子ども向けに「翻訳」。漢字には、すべて読み仮名を付けました。

「人(ひと)をぶつ、蹴(け)る等(など)して怪我(けが)をさせた人は、15年以下(ねんいか)の懲役(ちょうえき)か50万円以下(まんえんいか)の罰金(ばっきん)とします」(傷害罪)

「『バカ』『アホ』等(など)の曖昧(あいまい)な言葉(ことば)であっても、他(ほか)の人(ひと)たちの前(まえ)で人(ひと)を馬鹿(ばか)にしたり悪口(わるくち)を言(い)ったりした人(ひと)は、拘留(こうりゅう)か科料(かりょう)とします」(侮辱罪)

 小学生時代、自分が受けた行為です。「法律では許されない行為」として並べました。

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コメント

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2件のコメント

  1. こども六法、私は大人ですが、とても興味があります。

    私も小学生の時に一時期、いじめが原因で、不登校児童でした。でも、確かにあの時、自分の身を守るために自分が出来ることが何かなど、考える余地も、それを考えるように導く大人もいませんでした。

    子供だって、大人と同じように悩み、苦しむことがあるんですよね!

    自分を守るために戦う、それは暴力等ではなく、法律という正当な根拠を持って。

    ますが私も一冊、欲しいですが、購入のための手段を知りたいです。

  2. 「全国の学校に1冊、目標は各教室に1冊」ということですが、職員室の全教員の机にも1冊置かれると良いです。出版が待たれます。