キャッシュレス化の波は“現金のみ”券売機メーカーに逆風か、追い風か 各社に聞く
「キャッシュレス決済」の普及が進んでいますが、飲食店などでは、昔ながらの現金のみ対応の券売機も健在です。メーカーはキャッシュレス化の波にどう対応しているのでしょうか。

交通系や流通系の電子マネー、クレジットカード、スマホ決済など「キャッシュレス決済」の普及が進む中、ラーメン店などの飲食店や、スポーツ施設のような公共施設にある券売機には、昔ながらの現金のみ対応のタイプも多く見られます。政府もキャッシュレス化を後押しする現状を、券売機メーカーはどのように捉えているのでしょうか。各社に聞きました。
決済の多様化は「追い風」に
日本自動販売システム機械工業会(東京都新宿区)によると、2017年末時点で、国内で稼働している券類自動販売機(乗車券販売機は除く)は約4万台。業務効率化のため、小規模飲食店を中心に導入するケースが増えているとのことです。
券売機の代表的メーカー、グローリー(兵庫県姫路市)のリテール販売企画二部、販売企画1グループ専門課長の井上秀人さんに聞きました。
Q.グローリーの券売機の主な配置先と販売台数は。
井上さん「設置台数は1万7000台以上で、国内シェア1位です。導入先は飲食市場が7割以上を占めます。その他、学校や病院の食堂など、さまざまな場所に設置されています。人手不足対策や現場の負担軽減の観点から導入が増えています」
Q.他社も含めた券売機市場全体も拡大しているのでしょうか。
井上さん「人手不足による券売機導入が顕著で、設置台数は年々増加しています」
Q.政府のキャッシュレス化推進の動きはメーカー側にとって、逆風なのでしょうか。それとも、追い風なのでしょうか。
井上さん「『追い風』と捉えています。当社が目指しているのは、多様な決済手段をストレスなく利用できるシステムを構築することです。キャッシュレス化の広がりで決済手段が多様化する中、人手不足気味の店舗にとっては、売上金の管理コストや手間の低減が課題となっており、ますます券売機の需要は広がると予想しています」
Q.これまでに製造したキャッシュレス対応の券売機は。また、販売台数は。
井上さん「2008年に発売した『VTシリーズ』から対応しております。電子マネー決済にも対応可能で、累計販売台数は約2000台です」
Q.キャッシュレス決済対応の券売機を製造する上で難しい点はありますか。
井上さん「キャッシュレスだからといって、製造工程には特に影響はありません。ただ、キャッシュレス対応に必要なリーダライタ端末などを搭載するため、その分、コストが上乗せになります」
Q.キャッシュレス決済の普及を見据えて、どのような対策をしていますか。
井上さん「電子マネーに加え、QRコードやモバイルなど多様な決済に対応していきます。今後は、当社で運用する情報処理センターを通じて、お客さまが多様な決済手段を実現できるようにするほか、ユーザーエクスペリエンス(製品やサービスの利用を通じて得られる体験)、ユーザーインターフェースの最適化にも取り組んでいきます」
Q.販売先からは、製品についてどのような意見や要望が寄せられていますか。
井上さん「これまでの交通系・流通系電子マネーに加え、インバウンドに対応する決済への要望も強まっています。今年10月の消費税増税時に政府が導入を予定しているキャッシュレス決済へのポイント還元策や決済サービス各社のキャンペーンの影響もあり、現金以外の決済方法へのニーズの高まりがあると感じています」
Q.今後、販売を予定している券売機は。
井上さん「QRコード決済に対応した券売機を発売する予定です」
コメント