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気付かないことも多い「発達障害グレーゾーン」とは? 周囲はどのように接するべき?

発達障害とはいえないものの、その特徴を持つ「発達障害グレーゾーン」の人がいます。社会の認知が進まず、当事者も周囲とどう接すればよいか悩んでいます。

増加している「発達障害グレーゾーン」とは?
増加している「発達障害グレーゾーン」とは?

 ここ数年、発達障害関連の情報が大幅に増えました。そうした中で最近、「発達障害グレーゾーン」というものが注目されつつあります。「発達障害とまではいえないが、その特徴は少なからず持っている」というグレーゾーンに属する人は、発達障害と診断される人よりも圧倒的に多いとされており、本人が気付いていないケースも多いようです。発達障害の専門家で臨床発達心理士の吉野加容子さんに聞きました。

各年齢で10~20%と推測される

Q.そもそも「発達障害」とは。

吉野さん「脳のある部分が未発達だったり、働きがうまくいかないことで起こる、さまざまな状態の総称を発達障害といいます。みんなが苦労せずにやっていることが難しかったり、他の人とは違うやり方で行動したりすることがあり、周りから理解されにくいことが多いです。代表的には、3つに分類されます。

(1)衝動的な言動や不注意などが目立つ注意欠如・多動性障害(ADHD)
(2)独特のマイルールがあったり、コミュニケーションに問題が生じることが多い自閉スペクトラム症(ASD)
(3)知的な問題はないのに計算や読み書きが苦手な学習障害(LD)

いずれの場合も、何かをマスターするまでに時間がかかりやすく、何度も教えなければならなかったり、同じようなミスを繰り返しやすかったりする特性があります」

Q.最近は発達障害の認知度が高まり、気になることがあれば「発達障害ではないか」と医療機関を受診する人が増えています。どのようなことが気になるのですか。

吉野さん「大人の場合、最も多いのは人間関係です。上司と折り合いがつかない、仕事をするときに同僚とうまくコミュニケーションが取れない、などです。次は、ミスの多さです。仕事でミスをする頻度が高く、上司から毎日のように怒られるといったことで気付きます。

頼まれた仕事を忘れてしまう、数字を間違えて記入する、顧客への受け答えがうまくいかず、悪気はないのに相手を怒らせてしまう、なども受診のきっかけになります」

Q.受診する人は、どれくらいいるのですか。

吉野さん「正確な数は分かりません。受診しようにも予約待ちで、受診できていない人が多くいるのです。大人も子どもも、発達障害の専門クリニックの予約は、どこも数カ月待ちは普通だと思います。発達障害を専門に診てくれる医療機関が、日本にはまだまだ少ないからです」

Q.「発達障害グレーゾーン」とは。発達障害の人との違いは。

吉野さん「簡単に言うと、発達障害の診断基準の条件を満たさないものの、特徴を持っている人の状態が『発達障害のグレーゾーン』です。基本的には、発達障害の人と特性(症状)は同じです。発達障害と一口に言っても、医学的には細かく病名が区別されています。

発達障害の診断基準は、それぞれ異なります。基準となる症状が複数並べられており、それらの特性がいくつ該当するかということに加えて、複数の環境で症状が出るか、大人への成長期から特性が見られたか、どのくらい継続しているか、生活にどのくらい支障をきたしているかなどから総合的に診断されます」

Q.医療機関では「あなたは発達障害グレーゾーンです」と診断するのですか。

吉野さん「『あなたはグレーゾーンです』と診断されるわけではありません。医師からは『あなたは発達障害とまでは言えませんが、一部その特徴があるグレーゾーンですね』と口頭で説明されることが多いと思います」

Q.なぜ、グレーゾーンの人が生まれるのですか。

吉野さん「そもそも、発達障害は、得意能力と不得意能力の差が極端でアンバランスな状態です。あることは問題なくできるのに、別のことになると通常の『苦手』というレベルではなく、『どう頑張っても難しいこと』が混在しています。近年では、発達障害という言い方ではなく『発達凸凹(でこぼこ)』という言い方が広まっています。

誰にでも得意・不得意があるように、発達障害との線引きはとても難しいです。そのため、近年では、発達障害の診断基準に『日常生活への適応に問題があるかどうか』という観点が追加されました。

忘れっぽい、空気が読めない、怒りっぽい、ミスをよくするなど発達障害とおぼしき症状が少しあっても、診断基準を満たさず、日常生活に極端な不都合がなく、通常の学級(クラス)や会社でやっていける範囲だと判断されれば、グレーゾーンとなります」

Q.グレーゾーンの人は、日本にどれくらいいますか。

吉野さん「自らがグレーゾーンだと気付いていない人も多く、気付いていない人は医療機関に行かないので実際の数は分かりません。しかし、複数の研究者が論文で指摘しているパーセンテージから推測すると、各年齢で10~20%くらいではないかと、発達障害の専門家の間では予想しています」

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コメント

1件のコメント

  1. 世間的認知度が低いこともg店員の一つと考えられるが、自分も塾講師の体験談があり、「発達障害」と言っても十人十色の場合が多く見受けられるので、先ずは保護者の方々はマイナスに取らないで自分んお子供の場合は「充分な天才の可能性」があると前向きに取られたらいかがでしょうか。また、講師、教師の方々は保護者の方に文句を言われようが、最初に指摘をする義務があるように思われます。