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予期せぬ妊娠をした36歳女性、父親になろうとしない相手に“責任”を取らせた方法(下)

責任の取り方はデキ婚することだが…

「ヤリモクの分際で何様のつもりですか? 心外です!」

 3つ目のポイントは、デキ婚拒否の代償と命の価値の検討です。麻衣さんはそんなふうに憤りますが、もし麻衣さんが明日の生活に困るほど困窮しているのなら、最低限の倫理観すら欠落し、金目のものは何でも現金化する…身ごもった新しい命ですら換金しようと試みるかもしれません。目先のお金欲しさに胎児の命を絶つことも厭わないでしょう。

 しかし、麻衣さんが本当に望んでいるのは、彼と結婚して一緒に暮らし、夫婦として新しい命を育むことです。決しておろしたくておろすわけではありません。彼のしかるべき責任の取り方は麻衣さんとデキ婚をすることです。「できない体だから(コンドームを)つけなくても大丈夫って油断させておいて…絶対に許せない!」という男らしからぬ女々しい泣き言を封印し、苦虫をかみつぶしながら「お嬢さんを僕にください!」と麻衣さんの父親に頼み込むのを手始めに、指輪や式場選び、結納や結婚式、披露宴、新婚旅行などのハネムーン行事に作り笑いを浮かべながら参加すれば何の問題もないのです。

 しかし、彼は「はらませたら一緒になるのが責任」という、常識中の常識すら守ろうとしないのに、「金のために中絶するんだろ!」と麻衣さんを揶揄するのは論外です。

「子どもの命の方が大事に決まっているでしょ! 本当に欲しいのはお金じゃなくて結婚なのに、そっちに結婚する気がないから、お金で手を打とうって言っているのが分からないの?」

 麻衣さんは嘔吐(おうと)や頭痛、そして、腹痛を我慢しながら最後の力を振り絞ってLINEを送ったのですが、彼はどんな反応をしたのでしょうか。

「できない体だってうそをついて妊娠した揚げ句、金をせびるなんて美人局と同じだ!」

「人の振り見てわが振り直せ」という言葉がありますが、彼は麻衣さんの振りを見ても自分の振りを直そうとせず、どういうわけか加害者なのに被害者のように振る舞っており、とにかく疑り深い。

 請求額25万5000円を受け取っても飽き足らず、事あるごとに「もっともっと」とゴネるのではないか、今回の件を実家の両親や会社の上司、そして、近い将来に現れる新しい彼に言いふらすのではないか。最悪の場合、後遺症の症状や投薬の副作用、そして元からの情緒不安定を理由に「慰謝料を受け取ったかどうか記憶があやふや」などとシラを切るのではないか…。「(子どもが)できないと言っていたのにできた」せいで彼は疑心暗鬼の塊と化していたのです。

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露木幸彦(つゆき・ゆきひこ)

行政書士(露木行政書士事務所代表)

1980年12月24日生まれ。いわゆる松坂世代。国学院大学法学部卒。行政書士・ファイナンシャルプランナー(FP)。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。男の離婚に特化し行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7000件、公式サイト「離婚サポートnet」の会員数は6300人を突破し、業界最大規模に成長させる。他で断られた「相談難民」を積極的に引き受けている。自己破産した相手から慰謝料を回収する、行方不明になった相手に手切れ金を支払わせるなど、数々の難題に取り組み、「不可能を可能」にしてきた。朝日新聞、日本経済新聞、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインで連載を担当。星海社の新人賞(特別賞)を受賞するなど執筆力も高く評価されている。また「情報格差の解消」に熱心で、積極的にメディアに登場。心理学、交渉術、法律に関する著書を数多く出版し「男のための最強離婚術」(7刷)「男の離婚」(4刷、いずれもメタモル出版)「婚活貧乏」(中央公論新社、1万2000部)「みんなの不倫」(宝島社、1万部)など根強い人気がある。仕事では全国を飛び回るなど多忙を極めるが、私生活では30年以上にわたり「田舎暮らし」(神奈川県大磯町)を自ら実践し「ロハス」「地産地消」「食育」の普及に努めている。公式ブログ(https://ameblo.jp/yukihiko55/)。

注)離婚手続きに関して、個別事情を踏まえた離婚手続きや離婚条件に関する法的観点からの助言が必要な場合は弁護士に依頼してください。

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