モバイルバッテリー発煙で新幹線停止…そのメカニズムや人体への影響、注意点は?
新幹線車内で乗客のモバイルバッテリーから煙が発生し、緊急停止するトラブルが発生。バッテリーを落としただけで、発煙することがあるのでしょうか。

先日、新幹線車内で乗客のモバイルバッテリーから煙が発生し、新幹線が緊急停止するトラブルがありました。モバイルバッテリーを床に落としたところ、煙が上がったと報道されています。スマートフォンの充電用に持ち歩く人も多いモバイルバッテリーですが、落としただけで事故が起きることがあるのでしょうか。
製品事故の調査などを行う独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)に聞きました。
煙を吸った乗客が病院に搬送
JR東日本によると、トラブルがあったのは11月9日、東京発盛岡行きの東北新幹線はやぶさ65号でした。
上野-大宮間を走行中、6号車の車内に白煙が充満し緊急停止。煙は、乗客のモバイルバッテリーから上がったもので、車掌が消火器で消し止めましたが、乗客4人が「煙を吸って気分が悪くなった」などと訴えて病院に搬送され、仙台駅で別の乗客1人が「やけどをした」と申し出ました。報道によると、女性客がモバイルバッテリーを床に落とした際に、煙が上がったそうです。
製品評価技術基盤機構製品安全センターの担当者に聞きました。
Q.モバイルバッテリーを落としただけで、発煙や発火することはあるのですか。
担当者「2015年5月、東京都内で、ズボンのポケットに入れていたスマホが発熱・発煙し、男性がやけどをする事故が発生しました。ポケットにスマホを入れた状態で転倒したため、スマホに外部から衝撃が加わり、スマホ内のリチウムイオンバッテリーで内部ショートが生じ、異常発熱して焼損したと考えられます。
モバイルバッテリーもリチウムイオンバッテリーが入っているので、スマホと同様に落下などの衝撃で異常発熱する可能性があります」
Q.モバイルバッテリーが衝撃で発煙する仕組みを教えてください。
担当者「モバイルバッテリー内では『セパレータ』と呼ばれる膜が、正極板と負極板を絶縁しています。そのセパレータが外部からの衝撃によって損傷し、正極板と負極板の間で電流が流れて異常発熱が生じる可能性があります」
Q.煙は何の煙と考えられますか。「気分が悪くなった」という乗客もいたようですが、人体への影響は。
担当者「煙は主に高温の二酸化炭素や水蒸気と思われます。一般的に、物が燃えた時に煙が出るものと同じです。他に、わずかの量ですがアルデヒドのような揮発性有機化合物が出る可能性があります。瞬間的なもので、それほど高濃度ではないと思いますが、臭いがして、目にしみたり、鼻がつんとしたりすることは考えられます」
Q.モバイルバッテリーを落としたことによる事故は過去に事例がありますか。
担当者「2012~16年度の5年間で、モバイルバッテリーの事故は108件届け出がありました。充電中の事故が47件と多いのですが、持ち運び中の事故も12件あります。そのうち1件が落下などの衝撃が影響した可能性がある事故です」
Q.モバイルバッテリーを使用・所持する上での注意点を教えてください。
担当者「かばんに入れて持ち運ぶ際は衝撃が加わらないように注意し、取り出す際などに落下させないよう注意してください。発煙や発火した場合、大量の水をかけたり、水をためたバケツに入れたりする、などの対応が事故の拡大を防ぐのに有効です。製品自体が高温だったり、火炎が激しかったりして対応が困難な場合、バッテリー近くにある可燃物を遠ざけ、その場を離れてください」
(オトナンサー編集部)
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