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欧州で睡眠障害のリスク指摘…「サマータイム制度」は生活リズムや健康を壊さないのか

睡眠の専門家「条件付きの賛成」

 それでは、睡眠の専門家の見解とはどのようなものでしょうか。近著に「あきらめていた『体質』が極上の体に変わる」(ダイヤモンド社)がある、ナイトケアアドバイザー・睡眠改善インストラクターの小林麻利子さんは、日本でのサマータイム導入について、「体が慣れるまで無理は禁物」であるものの、「基本的には賛成」としています。

「日の出の時刻は、同じ地点でも、1年で4時半ごろ~7時ごろと大きく変わります。体内時計の働きを考えると、『太陽が昇ると目覚め、沈むと眠る』『夏は早く起き、冬はゆっくり起きる』というように、日の出に合わせて起床時刻を変える方が自然なのです。実際、冬は夏よりも睡眠時間が長くなり、夏は短くなる傾向にあります」(小林さん)

 ただし、小林さんの「賛成」は、「睡眠教育」「フレックスタイム制の導入」「ウインタータイムの導入」の3つの条件付きだと話します。それぞれのポイントは以下の通りです。

【適切な睡眠教育を行う】

・日本人の男女別平均睡眠時間は、男性6時間30分、女性6時間40分で、主要28カ国中最短(2018年、ポラール・エレクトロ・ジャパン株式会社の睡眠データ分析より)
・日本の場合、サマータイムを導入したから不眠の人が増えるのではなく、現状ですでに睡眠時間が足りていない人が多い
⇒睡眠の重要性が認識されないまま時間だけが変わると、心身に支障をきたす人が増える危険性がある

【時刻の切り替え時期に、フレックスタイム制の導入を促す】

・人間の体内時計は、時刻を前にずらすよりも、後ろにずらす方が適応しやすい
・前にずらすサマータイムの切り替え時期は、心身に不調を抱える人が増える
⇒猶予として、最短でも1週間はフレックスタイム制を導入し、起床と出勤時間を調整しやすい環境を整えるべき

【「ウインタータイム」も設ける】

・夏より冬の方が、「起きるのがつらい」と感じる人が多い
・体にとっては、季節の日照時間に合わせて、睡眠時間を変える方が自然
⇒睡眠の観点から考えると、サマータイムを設けるのであれば、ウインタータイムも導入することで通年を通して睡眠の質が上がり、日中活動しやすくなる人が増える

 上記3つの条件の中でも、小林さんが特に重視しているのが、「睡眠教育」です。

「睡眠教育とは、適切な睡眠時間や睡眠の質を下げる行為などについて学ぶクラスのことです。スコットランドをはじめとする海外では、トレーニングを受けた睡眠教育の専門家が、学校や企業で睡眠のレクチャーをする試みが広がっています。

睡眠時間が世界最短の日本こそ、小中学校の義務教育をはじめ、高校、大学、新入社員研修、幼稚園や保育園での保護者向け勉強会など、さまざまな機会や場面で、正しい睡眠情報を勉強する必要があると考えています。学校の授業で学んだ知識を定着させる上でも、睡眠は欠かせません。

睡眠について学ぶ教育制度が整っていない状況で、サマータイムは設けるのは大変危険なことです。朝が早くなっても就寝時刻が変わらなければ、睡眠障害を引き起こし、うつや生活習慣病、認知症を発症するリスクや事故を起こす危険性が高まります。適切な睡眠教育がなされないのであれば、サマータイムの導入には断じて反対です」

 五輪開催は一大イベントではあるものの、サマータイムの導入については「簡単に決めるべきではない」と小林さんは主張します。

「サマータイムは、健康で豊かな生活を支える『睡眠』の質に直結する問題です。実際に導入するのであれば、単純に時計の針を動かすだけでなく、睡眠や体内時計のリズムを考慮した制度作りが不可欠であると考えます。

特に切り替え直後、体が慣れるまでの約1週間は心身のバランスが崩れやすくなるので、先述のフレックスタイムの導入など、サポートシステムが必要でしょう。サマータイム導入の議論を機に、自分のライフスタイルの中で、質の高い睡眠時間を確保する方法について見つめ直す方が増えることを願っています」

(ライフスタイルチーム)

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小林麻利子(こばやし・まりこ)

ナイトケアアドバイザー、睡眠改善インストラクター

生活習慣改善サロン「Flura(フルーラ)」主催。最新のデータや研究を元に女性の自律神経の改善を行う。睡眠と入浴を中心とした、生活に合った無理のない実践的指導が人気を呼び、サロンは予約1年半待ちの人気。著書に「あきらめていた『体質』が極上の体に変わる」(ダイヤモンド社)、「美人をつくる熟睡スイッチ」(ジー・ビー)など。

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