「牛乳で口臭が抑えられる」は本当? 口臭を抑えられる食べ物は? “真偽”&対策を歯科医師に聞いてみた
牛乳を飲むと口臭を抑えることができるのは、本当なのでしょうか。歯科医師に聞きました。
商談や職場での会議など、人と対面で話すときに口臭が出ないか不安に思ったことはありませんか。特に食後は口臭が出やすいため、人と会う約束があるときは摂取する食べ物に注意する必要があります。
ところで、SNS上では、「牛乳を飲むと口臭を抑えられる」「ニンニクを食べた後は、牛乳を飲むと臭いにくくなるらしい」という内容の情報があります。牛乳が口臭の抑制に効果的なのは、本当なのでしょうか。口臭が出る原因や口臭に効果的な食べ物などについて、医療法人社団みずた歯科医院(東京都西東京市)理事長で、歯科医師の楊義弘さんに聞きました。
牛乳のタンパク質が臭い成分の「アリシン」と結合
Q.そもそも、口臭が出ることがあるのはなぜなのでしょうか。原因について、教えてください。
楊さん「口臭は大きく分けると『生理的口臭』と『病的口臭』に分かれます。生理的口臭は主に硫化水素が原因で、唾液の分泌量が減る起床直後や空腹時、緊張時などに出やすいです。特に多くの人は起床直後に出る傾向にあります。
一方、病的口臭は、『メチルメルカプタン』と呼ばれる化学物質が原因で発生します。一般的に、病的口臭の9割以上が歯周病や進行した虫歯、ドライマウスなど、口腔(こうくう)内での異変が原因で生じます。他には鼻や喉の病気、呼吸器系の疾患、糖尿病などが原因で生じるといわれています」
Q.SNS上では、「牛乳で口臭を抑えることができる」という内容の情報がありますが、本当なのでしょうか。
楊さん「本当です。例えば、牛乳はニンニクやニラ、タマネギなど、香りが強い食材を摂取した後に生じる口臭を軽減するといわれています。牛乳の主成分であるタンパク質が、ニンニクなどに含まれる刺激性の香気成分である『アリシン』と結合することで、体内で吸収されにくくし、口臭の抑制が期待できます。
牛乳以外でニンニクなどの臭いを抑制するのに効果的な食べ物や飲み物としては、リンゴ(リンゴジュース)やお茶が挙げられます。
リンゴの成分である『リンゴポリフェノール』のほか、お茶に含まれるポリフェノールの一種である『カテキン』がアリシンと結合し、臭いにくい成分に変化することで口臭予防につながります。リンゴポリフェノールはリンゴの皮やその周辺に多く含まれているため、皮ごと食べるのが効果的といわれています。
口臭抑制の効果を発揮するタイミングは、それぞれ異なります。牛乳は食前に取ると効果的です。牛乳を飲むと食べ物に含まれるアリシンを包み込んだり、粘膜に膜を張ったりして、アリシンの体内への吸収を抑えるからです。一方、お茶は食事中に摂取、リンゴは食後に摂取するのがそれぞれよいといわれています。
これらの食べ物や飲み物を摂取したからといって、完全に口臭が消えるわけではありません。あくまで口臭を軽減する方法の一つとして覚えていただきたいと思います」
Q.食べ物以外で口臭をできるだけ抑えるには、どうしたらよいのでしょうか。
楊さん「食後の口臭は、食べ残しによる細菌や唾液不足が原因で生じることが多いです。そこで、口をよく動かし、よくかむことで、唾液の分泌量を増やすことができます。ガムをかむのも効果的といえます。
歯磨きは、食後30分以降に行うのが良いです。食事を取ると口腔内は酸性に傾くため、その状態で歯を磨くと歯のエナメル質を傷つけ、歯をもろくしてしまうリスクがあります。
一方、食後30分が経過すると、唾液によって口の中が徐々に中和されていきます。水でゆすぐだけでも、中和には多少の効果があります。このほか、舌の汚れも口臭の原因になるため、可能であれば食後に舌ブラシで舌の汚れも取ると効果的です」
Q.口臭が気になるときに摂取すると、かえって逆効果となる飲み物や食べ物について、教えてください。
楊さん「口臭を紛らわすために、よりきつい臭いの食べ物や飲み物を摂取するのは逆効果です。ニンニクはもちろん、コーヒーを飲むのも効果的ではありません。コーヒーに含まれるカフェインには利尿作用があり、体内から水分を奪うことで、口腔内が乾きやすくなり、口臭の悪化につながるからです。
先述の通り、病的な口臭は歯周病や進行した虫歯などが原因で生じるため、根本的に治療が必要となります。まずは定期的に歯科検診に行く習慣を付けていただきたいと思います」
(オトナンサー編集部)
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