よく聞く「緑内障」ってどんな病気? 完治は可能? 眼科医が解説する原因&治療法
緑内障とはどのような病気なのでしょうか。発症する原因や治療法などについて、眼科医に聞きました。
毎年、3月上旬から中旬までの1週間は「世界緑内障週間」(2024年は3月10日から同月16日まで)と定められており、国内外で「緑内障」に関するさまざまな啓発活動が実施されます。例えば、現在、国内のランドマーク施設や医療施設などでは、緑内障のシンボルカラーである「緑」にライトアップする「ライトアップ in グリーン運動」が行われています。
日常生活でよく聞く緑内障ですが、実際にどのような症状が出るのか、分かりにくいと感じたことはありませんか。緑内障とはどのような病気なのでしょうか。完治させることは可能なのでしょうか。緑内障の原因や治療法などについて、いわみ眼科(兵庫県芦屋市)理事長で眼科医の岩見久司さんに聞きました。
視野が欠けて失明に至る病気
Q.そもそも、緑内障とはどのような病気なのでしょうか。
岩見さん「簡単に説明すると、目の奥の光を感じる『網膜』という神経が部分的にやせていき、視野が欠けていく病気です。進行すると視野がどんどん欠けていき、最終的には失明に至る怖い病気のため、注意が必要となります。
昔、『眼圧(目の硬さ)が高い人は瞳の部分が緑もしくは青く光る』と考えられていたことから、『緑のうちの障り』として緑内障と名付けられました。ちなみに、白内障は緑内障と名前が似ていますが、瞳が白くなる症状が現れることから、白い内側の障り(体に悪いもの)ということで名付けられました」
Q.緑内障を発症した場合、すぐに視野が欠ける症状が出るのでしょうか。
岩見さん「緑内障の初期から中期にかけて、自覚症状はほとんどありません。その後、視野の中で見えない範囲が出てきますが、放置すると視野がどんどん欠けていき、失明してしまいます。そのため、健康診断などを通じて、できるだけ早い段階で目の異変に気付くことが大切です」
Q.緑内障患者に対しては、どのような治療が行われるのでしょうか。完治は可能なのでしょうか。
岩見さん「治療をしても、緑内障によって失われた神経を回復させることができないため、視野は元に戻りません。そのため、緑内障の治療は、眼圧を下げ、目の状態を維持することを目的に行われます。有効な治療法は点眼治療、レーザー治療、手術です。例えば点眼治療の場合、点眼薬を1日1~2回、生涯にわたって欠かさずに使い続ける必要があります。
レーザー治療は『線維柱帯』と呼ばれる、目の中の水の流れる先の所にレーザー光線を当てることで、水の流れを良くして眼圧を下げる治療です。これは言わば『切らない手術』に属します。平均で3年ほど効果が持続するといわれており、有効であればしばらくはメンテナンスをせずに済むほか、効果が切れても繰り返し治療ができるとされています。
手術の場合、『低侵襲緑内障手術(MIGS)』という小さな切開で済む手術から、大掛かりな手術まであり、段階的に行っていくことが多いです。
いずれの治療も人によって相性が異なるため、治療を受けたからといって必ず眼圧が下がるとは限りません。眼圧が治療前より下がっていることを確認する必要がありますし、継続して眼圧が下がっていることを医療機関で確認しなければなりません」
Q.どのような人が緑内障にかかりやすいのでしょうか。
岩見さん「緑内障は眼圧が高い人が発症する印象がありますが、緑内障を発症した日本人の8割強は、眼圧が正常範囲の『正常眼圧緑内障』に該当するといわれています。原因としては加齢や体質(遺伝)のほか、外傷やステロイド薬の使用などが挙げられます。生まれ持った目の構造の問題による『先天緑内障』というケースもあります。
緑内障は、加齢とともに発症する確率が上がり、特に40歳以上の場合、20人に1人がかかるといわれています。また、親戚の人に緑内障の人がいる人も発症しやすいです。
近視の人の緑内障の有病率は、そうではない人の数倍といわれていますが、遠視の人でも白内障が出てくる年齢帯になると、『閉塞隅角(へいそくぐうかく)緑内障』と呼ばれる状態になることもあります。
睡眠中に何度も呼吸が止まる『睡眠時無呼吸症候群』の人の緑内障の有病率は、正常な人の10倍といわれています。男性の25人に1人、女性の50人に1人が睡眠時無呼吸症候群にかかっているといわれていますが、意外と緑内障との関連性が知られていないため、注意が必要です。
このほか、糖尿病や高血圧、喫煙、飲酒などが緑内障の発症に影響するという研究もありますが、はっきりした結果は出ていません。
多くの人が緑内障を発症するため、日本眼科医会は40歳を過ぎたら眼底検査を受けるよう、呼び掛けています。日本における視覚障害の原因疾患として最も多いのは緑内障といわれているため、人ごととは思わずに健康診断を受けることが大切です。特に健診で『視神経乳頭陥凹拡大』と診断された場合は緑内障の可能性があるため、必ず眼科を受診しましょう」
(オトナンサー編集部)
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