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「無礼講」は危ない! 上司の言葉を真に受け、異動させられた40歳・UCLA卒のエリート部長

納涼会シーズンです。会社の上司と飲みに行く機会も増えますが、酒席で上司が口にする「無礼講」に要注意、と筆者は指摘します。

上司が言う「無礼講」は危ない?
上司が言う「無礼講」は危ない?

 今年は観測史上最速の梅雨明けとなりました。東京では6月中に梅雨が明け、いきなり夏が到来し、連日記録的な猛暑が続いています。こんな暑い日には、よく冷えたビールがたまりません。夏季休暇前に「納涼会」を控えている会社も多いと思われますが、品格のあるビジネスパーソンを自認するならば、納涼会のルールを正しく理解しておきたいものです。

 納涼会に限らず、社内のイベントで上司が必ず口にする言葉に「無礼講」というものがあります。役職や年齢など、堅苦しい礼儀を抜きにして行う酒盛りのことを指しますが、部下は常識の範囲で気遣いをしなければなりません。もしも、無礼講の“本当の意味”を知らなければ、それは大きなリスクになることを覚悟する必要があります。

 たとえば、納涼会の目的は何か。納涼会を、社員を慰労する場と考えてはいけません。納涼会は、上司が自らの威厳や存在を示し、再確認する場です。上司は納涼会の様子を見ながら、「こいつは忠誠心がないから異動」「こいつは降格。給料も下げてやる」「こいつは見どころがあるから昇進させよう」など、さまざまな思惑を巡らせています。

シンクタンクの「ブランデーグラス事件」

 シンクタンクに勤務している頃、以下のような出来事がありました。若い人には役立つケースかと思いますので、紹介します。

 このシンクタンクは、S総研という国内大手のバンク系シンクタンクです。ある日、クライアントのN酒造から工場見学のオファーがありました。役職者を中心に派遣メンバーが決められ、幹部クラスは自家用車での合流が許されました。

 藤井常務の年齢は50歳半ば。中堅大学を卒業し、新卒で入社、これまで営業畑を歩んできました。トヨタのクラウンが愛車で、スマホの待ち受け画像はもちろん愛車のクラウンでした。

 そして、待ち合わせ場所に最後に登場したのが、井上部長でした。年齢は40歳、UCLAを卒業し、米国の政府系金融機関に就職しました。2年前に、ヘッドハンティングでS総研に入社、社内でも次期取締役候補として将来を嘱望(しょくぼう)されていました。

 しかし、井上部長の登場を境に藤井常務の表情が険しくなったのです。

藤井常務「今、何時だと思っているんだ! 君は既に取締役になったつもりかね?」

井上部長「10時集合に間に合っています。何がご不満でしょうか?」

藤井常務「当たり前だ! 部長の分際で最後に合流するとは何事だ! けしからん奴だ!」

井上部長「そう言われても…困ります」

 井上部長は、藤井常務がなぜ怒っているのか分かりません。実は、藤井常務のクラウンが廉価モデルだったのに対し、井上部長のクラウンは「スーパーセレクト」という最上級モデルだったのです。部下の方がグレードの高い車を乗っていたので、面白くなかったというわけです。

 その場はどうにか収まったものの、宴会で修羅場が待っていました。既に、藤井常務の「無礼講」のあいさつがあり、宴もたけなわで、カラオケ大会も終盤に差しかかっていました。

 藤井常務の十八番は石原裕次郎の「ブランデーグラス」でした。井上部長は、藤井常務に気を遣い「藤井常務! 最後にビシッと決めてください」と一言。藤井常務は「今日は飲みすぎて声が出ない。君が歌ったらどうかね。今日は無礼講だ!」と返しました。

「それでは」と井上部長、おもむろにマイクをつかみ「ブランデーグラス」を歌い始めたのです。石原裕次郎ばりに低音ボイスでビブラートが効いた、まさに熱唱でした。周囲は“マイナス10度”に凍り付いていましたが、酔った井上部長は満足そうな表情でした。

 その翌月、井上部長は九州データセンターに異動になりました。データセンターは過去の資料や出版物を扱う資料室のようなもので、花形とは言えません。その後、井上部長にスポットライトが当たることはありませんでした。社内では「ブランデーグラス事件」として語り継がれることになりました。

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尾藤克之(びとう・かつゆき)

コラムニスト、経営コンサルタント、明治大学サービス創新研究所研究員

代議士秘書、EQJAPAN、ピーエイ、MIAなどでディレクターとして活躍後、IT系上場企業、大手研修会社の役員・パートナー、内資IT企業役員を歴任。日本初のモバイル課金型アプリや、日本初の結婚情報相談アセスメント、世界最大のリスクマネジメント団体(リスクマネジメント協会日本支社)の正会員認定資格の監修など、ビジネスで多数の成功実績を持つ。また、社会貢献活動として、障害者と健常者の共生型教育を行う、(一社)アスカ王国青少年自立支援機構(会長は故橋本龍太郎元首相夫人の橋本久美子)の役員として、団体の運営も行っている。NHKや民放各社のテレビ出演や、経済誌などからの取材、掲載多数。人気コラムニストとして、多くの媒体で連載や執筆も行っている。著書はビジネス書を中心に多数。2018年に出版された「あなたの文章が劇的に変わる5つの方法」(三笠書房)は、即重版となる人気作家でもある。