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平安の恋!? 男女が銭湯で“短歌”を詠む婚活イベント話題に、カップルも成立 主催者に聞く

銭湯で短歌を詠み合い、お気に入りの相手を見つけるユニークな婚活イベントが話題です。

銭湯で短歌を考える参加者(陸奥賢さん提供)
銭湯で短歌を考える参加者(陸奥賢さん提供)

「みやびな婚活してみませんか」

 趣向を凝らした婚活イベントが増える中、「歌垣風呂」と呼ばれるイベントが関西を中心に開かれ、話題となっています。銭湯で、男湯と女湯に分かれて、湯船に浸かりながら短歌を詠み、歌の内容や声の調子から気になる相手を見つけるというもので、SNS上では「平安貴族のよう!」「レベル高そう」などの声が上がっています。主催者に取材しました。

男女隔てる「壁」を生かす

 考案したのは「観光家/コモンズ・デザイナー/社会実験者」という肩書を持つ陸奥賢(むつ・さとし)さんです。歌垣風呂は、これまでに10回開催し、約150人が参加。毎回必ずカップルが成立しているそうです。

Q.どのようなきっかけで始めたのですか。

陸奥さん「『昭和湯』(大阪市東淀川区)という銭湯を経営している友人から『銭湯が衰退している。若者が集まる企画をしてほしい』と酒の席で相談されたことがきっかけです。2015年12月に始めました」

Q.そもそも「歌垣」とは。

陸奥さん「古代の“恋活”です。『垣』(壁)を作って、その周りに男女が集まり、顔も名前も分からない状況で歌を贈り合い、歌や声だけで相手のことを判断、気に入った人同志が結ばれるものです」

Q.歌垣風呂は、どのようなルールで行うのですか。

陸奥さん「男性と女性が開始前に顔を合わせないよう、時間をずらして銭湯に集合します。男風呂と女風呂に分かれて入ってもらい、『男性1番』『男性2番』『女性1番』などと番号を割り当て、防水メモとペンを渡します。次に、主催者が『初恋』『すれちがい』などの『お題』を出します。

参加者はそれぞれ男湯、女湯で短歌を作ります。『5・7・5・7・7』の31音が標準ですが、『5・7・5・5・5』『7・7・5・8』などの変則的な構成でも構いません。最初に渡した防水メモに書いて、男女それぞれが自分が作った歌を、大きな声で詠み上げます。

男性は女性の歌を、女性は男性の歌を聞いて『いいね!』と思った番号を防水メモに書きます。脱衣場を出て男女が合流してから、回収したメモを主催者が確認、発表します。仮に『男性2番』さんと『女性4番』さんがお互い『いいね!』と書いていたら、カップル成立となり、連絡先を交換します」

Q.相手を知る手段が限られる中、どのような要素でお互いに関心を持つのでしょうか。

陸奥さん「『歌だとその人の内面が出るのでは?』と言う人もいますが、正直よく分かりません。『何となく歌が気にいった』『好きな声なので』といった漠然とした感想で、皆さんほぼ直感で決めているようです」

Q.短歌の作り方はアドバイスするのですか。初心者には難しそうです。

陸奥さん「特に行いません。季語が必要な俳句と勘違いする人もいますが、短歌は5・7・5・7・7の31音で作るということだけがルールです。さらに『字余り』『字足らず』でもOKとしていますので、誰でも簡単に作れます」

Q.銭湯でこのイベントをやる意味は。

陸奥さん「銭湯は男湯、女湯があり、その間に『垣』の役割をする『壁』があります。さらに多くの銭湯の天井は通風口で通じています。顔は見えないですが、男女間で声や歌のやり取りが可能な構造をしているので、歌垣に最適な構造だと思いました。

昭和湯さんはミュージシャンや落語家などを呼んでイベントを実施しているのですが、『男湯と女湯が壁で分かれているのでお客さんが1カ所に集えない。壁がなければ集客が2倍になるのに…』という悩みを聞いたこともヒントになりました。壁を邪魔者扱いするのではなく、『壁があるからこそ、できることもある』という逆転の発想でした」

Q.これまでにカップルは何組生まれましたか。

陸奥さん「大阪と京都で各2回、兵庫で3回、滋賀、奈良、東京で1回ずつ計10回開催し、男女計149人が参加し21組のカップルが生まれました。うち3組が一緒に暮らし始めました。結婚の報告はまだありませんが、そのうち出てくると思います。次は9月15日に大阪市の千鳥温泉で行う予定です」

Q.他の婚活イベントと違う魅力は何でしょうか。

陸奥さん「さまざまな恋活や婚活に参加してきた人から言われましたが、歌垣風呂は傷つきません。多くの恋活、婚活は個人情報を開示します。顔や年齢、年収、仕事、学歴、趣味、特技などを示して、その上で相手に断られると自分を全否定されたような無惨な気持ちになります。

しかし、歌垣風呂は『歌と声』だけが判断材料です。仮に相手に選ばれなくても拒否されたショックが少なく、『恋活疲れ』『婚活ストレス』のようなものはありません」

Q.今後、どう展開しますか。

陸奥さん「歌垣風呂は『オープンソース』を標榜しています。いつでも、どこでも、誰でも無料で企画を実施してよいという『風呂遊び』です。ぜひ、日本全国のいろいろな銭湯で『歌垣風呂』をやってほしいと思っています」

(報道チーム)

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