前歯の「正中線」にズレが…やっぱり治した方がいいの? 放置するとどうなる? 歯科医師に聞いた
「正中線」と呼ばれる、上下の前歯の真ん中でそろう中心線。これにズレがみられる場合、やはり治した方がいいのでしょうか。歯科医師に聞いてみました。
上下の前歯を合わせたときに、真ん中でそろう中心線(歯と歯の間)を「正中線(せいちゅうせん)」といいます。この正中線にズレがみられる人の中には、「ズレてるのはよくないの?」「やっぱり歯並びが悪いせい?」「ズレを放置しているとどうなるの?」「歯列矯正しないと治らない?」といった疑問を持つ人が少なくないようです。
正中線のズレは、やはり治した方がいいのでしょうか。千葉センシティ矯正歯科(千葉市中央区)院長で歯科医師の石川宗理さんに聞きました。
ズレが生じる「原因」は3つある
Q.そもそも「正中線」とは何ですか。
石川さん「正中線は、大きく『顔面正中』と『歯列の正中』に分けて考えることが多いです。
『顔面正中』は、レントゲンなどから判断する骨格的な正中と、正面から顔写真などを見て判断する軟組織も含めた正中に分けられます。瞳孔を結ぶ線や、口角を結ぶ線など基準をもとに判定することが多く、基準の取り方にもさまざまな方式があります。
『歯列の正中』とは、『中切歯(ちゅうせっし)』と呼ばれる真ん中の平らな歯と歯の間のことを指します。人の歯は、基本的には上下左右で本数が同じであるため、上下でそれぞれ正中が存在します。
この顔面正中と、上下の歯列の正中が一致することが、良好な状態と考えます」
Q.正中線がきれいにそろわなかったり、ズレがあったりする場合、その原因は何ですか。
石川さん「正中線にズレが生じる原因としては、次の3つが考えられます」
【原因1:骨格的なズレ】
上下顎の骨格的なズレが著しいケースでは、顔全体に対して上顎や下顎の正中がズレることがあります。この場合、歯列がどんなに整っていたとしても、顔の正中自体がズレてしまうため、歯列の正中もズレて見えることがほとんどです。
【原因2:歯列やかみ合わせに左右差がある】
骨格的なズレがなかったとしても、奥歯のかみ合わせにズレがあったり、歯列自体に凸凹があったりすると、歯の正中が顔面正中からズレてしまうことがあります。
【原因3:歯の本数に異常がある】
歯の本数が少ないと、歯全体の位置がない部分に寄ってしまうこともあります。これには先天的に歯がないケースや、歯茎に埋まっていて口の中に出てきていないケース、また虫歯や歯周病で歯を失ったケースも含まれます。
Q.正中線がズレている状態というのは、やはりよくないのでしょうか。ズレがあるまま放置すると、どうなることが考えられますか。
石川さん「正中線のズレそのものが、見た目以外に直接的に与える悪影響はありませんが、ズレの原因となる問題は将来的な影響を与えることがあります。
例えば、先述した骨格的なズレが強いことが原因による正中のズレは、機能的にも問題が生じることが多く、将来的に入れ歯などになったときも治療が困難になることが多いです。そのため、矯正治療の中でも、骨格の手術を併用する方法なども視野に入ることになります。成長途上の子どもに関しては、早めに矯正相談を受けることによって、骨格的なズレの悪化を防ぐことができる可能性もあります。
また、歯列のズレも、実際にはかみ合わせや歯の本数、凸凹などさまざまな問題の表現型として現れることがあるため、一度矯正相談に行くことをお勧めいたします」
Q.正中線のズレはどのように治すのですか。
石川さん「骨格的なズレに関しては、根本的には手術によって顎の位置を改善させる外科的な矯正治療が挙げられます。歯のズレに関しては、適切な矯正治療を行うことで改善が可能となります。
かみ合わせではなく、見た目のみの改善を図る場合には、美容整形などで『プロテーゼ』(医療用人口軟骨)を入れたり、脂肪吸引などで軟組織のバランスを整えたりすることも有用である可能性があります。
こうした治し方は、ズレの程度や状態によって大きく異なるため、気になる場合は実際に矯正相談にかかることを強く推奨します」
(オトナンサー編集部)
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