「寝相」が悪いのはなぜ? 改善できる? 原因&対処法を専門家が解説
睡眠中に寝相が悪くなる原因や改善法について、専門家に聞きました。
寝相が悪いことが原因で起床時に布団を掛けていなかったり、ベッドから落ちそうになったりした経験はないでしょうか。SNS上では、「布団をはねのけて寝ていた」「寝相が悪くてベッドから落ちる」という内容の声が上がっています。
睡眠中に寝相が悪くなるのは、なぜなのでしょうか。寝相を改善する方法は、あるのでしょうか。姿勢調整師の塗木洋平(ぬるき・ようへい)さんに聞きました。
寝返りが多いのが原因
Q.そもそも、睡眠中に寝相が悪くなるのはなぜなのでしょうか。
塗木さん「寝相が悪くなる原因として、頻繁に寝返りを打つことが挙げられます。寝返り自体は、睡眠中に必要な人間の生理現象です。寝返りを打つのは、次の3つの理由があるといわれています」
(1)睡眠中、体にかかる圧力を分散している
同じ姿勢で寝ていると、体の同じ部位に負荷がかかり続けます。例えば、あおむけに寝ている場合は、背中や腰などです。そこで、特定の部位に負担をかけないように無意識に寝返りを打ち、姿勢を変えているのです。
(2)体温の調節
同じ姿勢で寝続けていると、寝具と接している面のみ、熱がたまります。そうなると体温が上がったり、発汗が多くなったりします。それらを防ぐため、睡眠中は寝返りを打って熱がたまらないようにするとともに、寝具の温度を下げています。
(3)関節可動域の回復
同じ姿勢で寝続けると、関節の動きが悪くなります。人間は動くことで背骨や筋肉などのバランスを取ります。ずっと同じ姿勢を続けていると関節面がゆがみ、固まってしまいます。寝返りには、それらを防ぐ役割があります。
個人差がありますが、健康な人は一晩で20~30回の寝返りを打つとされています。それ以上の回数の寝返りを打つと、多いと思います。
Q.頻繁に寝返りを打つことで寝相が悪い場合、体にどのような影響を与えるのでしょうか。
塗木さん「睡眠には、体は休んでいるが、脳は活発に働いている浅い睡眠『レム睡眠』と脳が完全に休んでいる深い睡眠『ノンレム睡眠』があります。これらを寝ている間に交互に繰り返すことで、体や脳の回復を図ります。寝返りを打つのは、脳が休んでいるノンレム睡眠のときといわれています。
寝返りが多くなると、睡眠深度が浅くなる可能性が考えられます。つまり、睡眠の質が下がっている可能性があります。睡眠の質が下がると、『寝た気がしない』『寝たのに疲れが取れない』といったことが起きる可能性があります。
また、睡眠の質が下がるということは、体だけでなく脳もうまく休めていないため、集中力や判断力、注意力を低下させます。睡眠が不十分だと、認知症につながる可能性があるという研究結果もあります」
Q.寝相を改善するための対処法について、教えてください。
塗木さん「寝返りが多くなる理由は、睡眠環境が悪い可能性が高いです。睡眠環境を悪化させる大きな要因は、次の3つだといわれています」
(1)部屋が暑過ぎたり、寒過ぎたりする
部屋が暑過ぎたり、寒過ぎたりすると、体は体温を一定に保つために寝返りを打つようになります。エアコンを使う際は、室温が適度になるように設定温度などを調節するのはもちろん、サーキュレーターを使い、部屋の空気を循環させると、室温が均一になるのでお勧めです。
(2)寝具が体に合っていない
柔らか過ぎたり、硬過ぎたりする寝具を使うと、体への負荷が大きくなります。そのため、負担から逃れようと、たくさん寝返りを打つようになります。自分の体に合った寝具を探すのがポイントです。体に負担がかからない寝方は次の通りです。
・背骨がS字カーブ(生理的湾曲)を維持できる。
・寝ている間に筋肉が緩んでいる。
これらの状態をつくることが可能な寝具の硬さは、寝る部屋の床によって変わります。例えば、フローリングの場合はせんべい布団1枚分、畳の場合は毛布1枚分です。
枕は頭ではなく、首に当てましょう。
(3)寝る前に飲食をする
寝る直前に飲食をすると、内臓は食べ物を消化しようと働いてしまいます。その場合、脳は休んでいるけど、体は起きているという状態になり、睡眠環境が悪化します。食事は就寝3時間前まで、飲み物の摂取は就寝30分前までにそれぞれ済ませましょう。
(4)寝る直前までスマホやテレビを見ている
スマホやテレビなどから発せられるブルーライトを浴びると、睡眠ホルモンである「メラトニン」の分泌が抑制されます。その場合、なかなか寝つけないほか、眠ったとしても睡眠深度が浅くなってしまいます。スマホの操作やテレビなどの動画の視聴は、寝る1時間前までに終わらせましょう。
寝相が気になる場合は、室温や寝具、生活習慣を見直してみましょう。
(オトナンサー編集部)
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