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“秋の憂鬱”、実はうつ病? 日照時間、居住地が影響? 原因&対策を産業保健師が解説

秋になると、気分が憂鬱になる人がいるようですが、どのような原因が考えられるのでしょうか。産業保健師に聞きました。

秋になると気分が憂鬱になる理由は?
秋になると気分が憂鬱になる理由は?

 暑さがようやく和らぎ、過ごしやすい気候になりました。一方、秋になると、気分が憂鬱(ゆううつ)になるなど、精神的な不調に陥る人がいるようです。この場合、どのような原因が考えられるのでしょうか。憂鬱な気分にならないようにするには、どのように対処したらよいのでしょうか。産業保健師の谷島礼さんに聞きました。

「セロトニン」の分泌の低下が原因

Q.そもそも、秋に気分が憂鬱になりやすいのはなぜなのでしょうか。原因について、教えてください。

谷島さん「秋から冬にかけて気分が憂鬱になりやすいのは、『日照時間の短縮』『遺伝的な光感受性の減弱』『住居地の緯度の低さ』が関与していると考えられています。

人は日光を浴びることで、幸せホルモンと呼ばれる『セロトニン』の分泌が活発になり、精神状態が安定します。秋になり、日照時間が短縮することによって、セロトニンの分泌が減少し、憂鬱になりやすいと考えられています。

特に冬は1年の中でもセロトニンの分泌量が最も低下する季節です。秋から冬にかけ、うつ症状が現れる気分障害は、『季節性うつ』『冬季うつ』『ウィンター・ブルー』などと呼ばれています」

Q.できるだけ気分が憂鬱にならないようにするには、どうしたらよいのでしょうか。

谷島さん「規則正しい生活習慣を心掛け、できるだけ屋外に出て日光を浴びるようにしましょう。午前中に起床し、起床後すぐに日光に当たるのがお勧めです。日光に当たることが難しい場合は、明るい照明を選ぶとよいでしょう。

食事の際は、タンパク質の摂取を心掛けましょう。タンパク質に含まれるトリプトファンは、セロトニンの原料となります。肉類のほか、ブリ、イワシなどの魚介類、卵、豆腐などがお勧めです。トリプトファンの吸収を促すために、炭水化物も一緒に摂取しましょう。

ウオーキングなどの有酸素運動もセロトニンの分泌を促します。『1日20分』を目安に、屋外でできる手軽な運動を取り入れてみましょう」

Q.気分が憂鬱な状態が続く場合は、どのように対処すればよいのでしょうか。

谷島さん「先述のように、季節が原因で季節性うつを発症することがあります。憂鬱な気分、興味の消失、やる気・集中力の低下、過眠、過食などの症状が1日中続く場合は要注意です。この状態が2週間以上続く場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

また、季節が原因で憂鬱な気分になることがあらかじめ分かっている場合は、普段よりも気分や体調の変化に注意するとともに、体調に異変があった場合はできるだけ早めに対処するのが大事です」

(オトナンサー編集部)

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谷島礼(たにしま・あや)

産業保健師

急性期精神病院などの看護師を経て、法人向けの産業保健サービスを提供するエムステージに入社。複数の企業で従業員の健康管理、予防医療に携わっている。エムステージ(https://www.mstage-corp.jp/)。

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