「心療内科」「精神科」、何が違う? どんな症状で受診? 目安を精神科専門医が解説
心療内科と精神科の違いについて、精神科医に聞きました。
「何となくだるい」「気分の落ち込みが続く」などの不調を感じた場合に、心療内科や精神科を受診しようと考える人は多いと思います。ただ、これらの診療科の違いがよく分からないと感じたことはありませんか。
心療内科と精神科は何が違うのでしょうか。それぞれどのような症状が出たときに受診するとよいのでしょうか。判断する際の目安について、精神科専門医の田中伸一郎さんに聞きました。
体調不良は心療内科、メンタル不調は精神科
Q.そもそも、心療内科と精神科は何が違うのでしょうか。
田中さん「心療内科と精神科の違いは、分かりにくいですよね。例えば、何となく調子が悪くて、これから病院に行こうとしていると仮定します。その際、『体がだるい』など、どちらかというと体調が悪そうな場合は心療内科、『気分の落ち込みが続く』など、メンタルの不調の場合は精神科という形で区別をするとよいでしょう。
もちろん心と体は密接に結びついているため、どちらが不調なのかが明確に分からないことがありますが、問診のほかに体温・血圧を測ったり、採血したり、レントゲンを撮ったりする必要があるときに行くべきなのは、『心療内科』です。つまり、心療内科は内科の一つであって、ストレスが原因となって身体疾患を発症していないかどうかを調べる診療科です。
例えば、気管支ぜんそくや胃潰瘍、アトピー性皮膚炎、慢性関節リウマチなどの心身症・身体疾患が対象となります。
一方、『気分の落ち込みが続く』などのメンタルの不調のときに行くべき診療科は、『精神科』です。精神科では、医師が患者から不調のきっかけや状況を聞き、どのような症状でどの程度、生活に支障が出ていて困っているのかを確認した上で、適応障害(適応反応症)やうつ病などの精神障害を発症していないか、背景に発達障害の特性が見られないかを調べます。基本的に身体的な検査を行いません。
例えば、先述のうつ病や適応障害(適応反応症)のほか、不安障害、パニック障害、双極性障害(双極症)、統合失調症などが対象となります」
Q.どのような症状が出たときに心療内科や精神科を受診するとよいのでしょうか。受診の目安について、教えてください。
田中さん「病気の診断のためには、検査以外にも、年齢や発症状況、症状の程度、持続期間、家族歴、既往歴など、さまざまな情報が必要です。そのため、これから説明することは、あくまで目安としてください。
『眠れない』『食欲がない』『食べては吐く』『便秘と下痢を繰り返す』『過呼吸』『動悸(どうき)』『体のあちこちが痛い』など、体の不調が続いてなかなか治らないときは、心療内科を受診するとよいでしょう。
『気分が落ち込む』『自傷行為』『死にたいと思う』『不安』『パニック発作』『ハイテンション』『幻覚』『妄想』などの精神症状が見られ、日常生活に支障が出ているときは精神科を受診するのがよいと思います」
Q.身体的な不調なのか、精神的な不調なのかはっきり分からないことがあると思います。「とりあえず」という意識で心療内科や精神科を受診した場合、どうなるのでしょうか。
田中さん「心療内科は、ストレスが原因となって心身症・身体疾患を発症しているかどうか、あるいは身体疾患が原因となって精神症状を発症しているかどうかを調べてもらえるのがメリットです。身体疾患の治療を進めることで精神症状を軽減させることができるでしょう。もし身体疾患が否定され、精神障害ありと診断された場合、軽症の精神障害であれば心療内科でも対応可能です。
『とりあえず』という意識で精神科を受診した場合、先述のように、多くのクリニックでは身体的な検査を行わないため、心身症や身体疾患が原因となって精神症状を発症していることが見逃されるリスクがあります。
精神症状が重度で、入院治療が必要かどうかを判断したり、背景に発達障害の特性があるかどうかを診断したりする必要があれば、精神科専門医のいる精神科で対応してもらうのがよいでしょう」
(オトナンサー編集部)
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