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「若者と薬物」の現場から~先輩に大麻を渡された18歳・暴力団員に覚せい剤漬けにされた16歳~

未成年の薬物事件が後を絶ちません。子どもの薬物入手経路や使用の実態、周囲の大人が取り組むべきこととは何でしょうか。

未成年の薬物使用の実態とは?
未成年の薬物使用の実態とは?

 若年層を中心とした、薬物汚染の広がりが懸念されています。特に、大麻事件の検挙件数は年齢・性別を問わず増加傾向にあり、警察庁によると、昨年の検挙件数は526件増の3956件で過去最多を更新。高校生の摘発は2013年以降の5年間で約5倍に増加し、昨年は53人に上りました。中学生は2人、大学生は55人でした。

 子どもたちの薬物入手や使用の実態について、元上席少年補導専門員として青少年の非行問題に数多く携わってきた、少年問題アナリストの上條理恵さんが解説します。

先輩に無理やり大麻を渡された専門学生

 未成年者を含む薬物乱用者が、薬物に手を出すきっかけの約8割が、遊び仲間からの誘いです。「断りきれない」「仲間外れにされたくない」「嫌われたくない」などの理由から、その場しのぎのように手を出してしまい、取り返しがつかなくなるケースがほとんどです。

 専門学生のトオル(18歳・仮名)もそうでした。

「先輩に『お前が持ってろ』と言われて断れなかった。持っているうちに興味が湧いて使ってしまった」

 トオルはもともと不良グループとつるんでいたタイプ。高校時代から慕っている先輩は「少年院上がり」でした。この先輩から、半ば強制的に大麻を渡されたのです。

「大麻なんてみんなやってる」「やったってどうってことないよ」

 憧れている先輩からそう言われて、「やらない」という選択肢はなかったといいます。

「ちょっと悪いことがかっこいい」「先輩に近づける」。そんな気持ちもあったのでしょう。初めて大麻を手にした1カ月後には、カーテンを閉め切り電気も消した真っ暗な部屋で、お香を炊き、大音量の音楽をかけて、大麻を吸うのがトオルの日課となっていました。

 自宅で大麻を吸う未成年者は、それをごまかすために、強い匂いのお香を焚(た)いたり、異常な量の香水をつけたりすることがよくあります。また、これは大麻に限らず、薬物を使い始めると、光を嫌うようになるのも典型です。天気の良い日でも雨戸やカーテンを閉めて、真っ暗な状態を好むようになります。

「初めてタバコを吸う時より、大麻の方がハードルが低かった」

 後に、トオルはこう話していました。実は、同じようなことを言う少年たちは少なくありません。

 最近は、シンナーの乱用者が減り、また、危険ドラッグの規制が強化されたことなどから、若者中心に大麻へと流れる傾向にあります。「覚せい剤ほど怖くない」「タバコより体にいいし、依存もしない」といった間違った情報が少年たちの間で広まり、大麻に対する抵抗感はかなり低くなっています。

 しかし、これは大きな間違いです。大麻にも十分中毒性があり、乱用すると思考力や気力の低下、根気がなくなる、幻覚や妄想などの症状が現れます。大麻を常用していた中学生が突然、自殺してしまったケースもあります。

 大麻は、たばこやお酒、シンナーなどと同様、より副作用が強い薬物使用への入り口となる「ゲートウェイドラッグ」です。将来の薬物使用者を減らす意味でも、未成年の大麻使用を食い止めることは社会的急務と言えるでしょう。

 学校で開催された「薬物乱用防止教室」に参加し、自分の持っている物が違法薬物であると自覚したトオルは教師に相談。教師から連絡を受けた両親に連れられ、警察署に出頭してきました。

 初めこそ「大麻なんて大したことない」とふてくされた態度を崩さなかったトオルですが、私が「お前もつらかったな。でも自分からよく言ってくれた」と声をかけると、肩を震わせ泣き始めました。薬物に関わる未成年の多くが、悪ぶっていても、心の内では「警察に狙われているのでは」「逮捕されたらどうなるんだろう」と不安でいっぱいなのです。

 トオルの場合、先輩に言われて、本当は嫌だったのに断れない関係だったことや、自首であること、深く反省し、保護者もトオルの今後の善導を誓ったことなどから、書類送致に。しかし、せっかく入学したばかりだった専門学校は退学処分となりました。

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上條理恵(かみじょう・りえ)

少年問題アナリスト

少年問題アナリスト、元上席少年補導専門員、東京経営短期大学特任准教授。小学校、中学校、高校講師を経て、1993年より、千葉県警察に婦人補導員として、青少年の非行問題(薬物問題・スマホ問題・女子の性非行)・学校との関係機関の連携・児童虐待・子育て問題に携わる。学会活動として、非行臨床学会の会員としての活動も行う。小中学生、高校生、大学生、保護者、教員に向けた講演活動は1600回以上に及ぶ。