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「レバー」だけじゃない! 実は「鉄分」が豊富な食べ物8選

鉄分を多く摂取できる食べ物には、代表格「レバー」以外にもさまざまな食材があります。その中には、意外な野菜や身近な食品も…? 管理栄養士が解説します。

鉄分が豊富なのはどんな食材?
鉄分が豊富なのはどんな食材?

「鉄分が豊富な食べ物」と聞いて、「レバー」を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。実は、鉄分を多く摂取できる食べ物の中には、意外な野菜や食品もあるようです。レバーが苦手な人も取り入れやすい「鉄分が豊富な食材」、どのようなものがあるのでしょうか。管理栄養士の岸百合恵さんに聞きました。

最も鉄分が多いレバーは「豚」

Q.そもそも「鉄分」とはどんな栄養素ですか。

岸さん「鉄分は、人体に必要なミネラルの一種です。成人の体内に3〜5グラム含まれており、このうち60~70%が血液中にある赤血球中のヘモグロビンに、4%は筋肉中のミオグロビンに含まれています。残りは『貯蔵鉄』として、肝臓や脾臓(ひぞう)、骨髄などに存在します。

鉄分の主な役割は酸素の運搬です。ヘモグロビンとなって肺で酸素を取り込み、全身の細胞に供給します。さらに、細胞から二酸化炭素を回収し、肺へ運搬して体外へ排出させます。そのため、鉄分が不足すると酸素の運搬がスムーズに進まなくなり、酸素が含まれた血液が不足して目まいや立ちくらみ、頭痛、動悸(どうき)、息切れなどが起きやすい状態になります。

鉄は吸収率が低く、通常の食事で取り過ぎることはないといわれていますが、サプリメントや鉄を強化した食品を過剰に取り続けると、便秘や吐き気、嘔吐(おうと)といった胃腸障害や、体内に鉄が過剰にたまる『鉄沈着症』などを引き起こす可能性があります。

なお、食材から摂取できる鉄分は大きく分けて2種類あり、肉や魚といった動物性食品に多く含まれる鉄は『ヘム鉄』、野菜や海藻類、大豆製品などの植物性食品に多く含まれる鉄は『非ヘム鉄』といいます。体内への吸収率は、ヘム鉄が10~20%程度、非ヘム鉄が2~5%程度です」

Q.レバーは実際に鉄分が豊富な食べ物なのでしょうか。

岸さん「はい、レバーは鉄分が多い食品です。含まれる量は牛、豚、鶏で異なり、牛レバーは4ミリグラム、豚レバーは13ミリグラム、鶏レバーは9ミリグラム(全て可食部100グラム中)で、豚レバーに最も多く含まれています」

Q.レバーと同程度、あるいはレバー以上に鉄分が豊富な食材には、どのようなものがありますか。

岸さん「レバー以外で鉄分が豊富な食材としては、次の8つが挙げられます(いずれも可食部100グラム中)。ただし、1食分としての適量がそれぞれ異なるため、それを考慮する必要があります」

・アサリの水煮缶…30.0ミリグラム
・煮干し(カタクチイワシ)…18.0ミリグラム
・がんもどき…3.6ミリグラム
・シジミ(生)…8.3ミリグラム
・シジミ(水煮)…15.0ミリグラム
・納豆…3.3ミリグラム
・小松菜……2.8ミリグラム
・牛モモ肉…2.4ミリグラム

Q.1日当たりの鉄分の理想的な摂取量や、効率的な取り方について教えてください。

岸さん「厚生労働省が定める『日本人の食事摂取基準』(2020年版)によると、1日に必要な鉄分の推奨量は、女性は月経なしの場合、18~64歳が6.5ミリグラム、65歳以上が6.0ミリグラム、月経ありの場合、18~49歳が10.5ミリグラム、50歳以上が11.0ミリグラムです。男性は、18~74歳が7.5ミリグラム、75歳以上が7.0ミリグラムとなっています。

先述したように、鉄には『ヘム鉄』と『非ヘム鉄』の2種類が存在しますが、『ヘム鉄の方が、吸収率が高いから』とヘム鉄ばかりを摂取することはお勧めしません。ヘム鉄を多く含む動物性食品には抗酸化物質が少なく、腸内環境や食事バランスが悪い人には向かなかったり、過剰摂取で疾患リスクが増える可能性があったりするためです。

鉄分を効果的に摂取するためには、ヘム鉄と非ヘム鉄の両方を摂取し、その吸収率を上げる食べ物を同時に取ることが重要になります。タンパク質やビタミンC、クエン酸、酢酸と一緒に摂取すると吸収が高まるため、例えば『梅肉和えにする』『非ヘム鉄を含む野菜(小松菜など)を、タンパク質が豊富な肉類と一緒に調理し、味付けでレモンや酢を使う』『ビタミンCが豊富なイチゴやキウイ、かんきつ系の果物をデザートにする』などの工夫で、効率的に吸収率を上げることができる上、食事としてのバランスも整います。

逆に、紅茶や緑茶、コーヒーに含まれる『タンニン』、ホウレンソウに含まれる『シュウ酸』は鉄の吸収を阻害するため、組み合わせの際は注意が必要です」

Q.その他、鉄分が豊富な食材を取り入れる際に注意すべきこととは。

岸さん「栄養が非常に豊富で、鉄分の補給によい食材であるレバーには、ビタミンAが大量に含まれています。レバーは他の食材と比較してもビタミンAの含有量が桁違いに多く、100グラム摂取すると、推奨量の20倍のビタミンAを摂取することになります。時々であれば問題ないですが、週に何回もレバーを食べてしまうと『ビタミンA過剰症』に陥る可能性があります。なお、ビタミンAの耐容上限量は、19歳以上の男女で3000マイクログラムです。

このように、鉄分に限らず、他の栄養素についても自分に必要な量、過剰になってしまう量を把握し、特定の食材を多く摂取するのではなく、さまざまな食材をバランスよく摂取することが大切です」

(オトナンサー編集部)

【すごい】「レバー」超えの意外な食材も? 実は「鉄分」が豊富な食べ物8選

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岸百合恵(きし・ゆりえ)

プロボクサー、管理栄養士、日本糖尿病療養指導士

病院食の管理・調理業務や企業での特定保健指導を経て、生活習慣病診療を専門とするクリニックにおいて5年間、栄養指導を実施。アスリートとしても夢を追い掛け、2017年に日本ボクシングコミッション(JBC)のプロテストに挑戦し、一発合格。「闘う管理栄養士」として、チャンピオンを目指して日々トレーニングに励みながら、ボディーメークや健康管理の指導を行う。現在は、スポーツ・睡眠歯科分野の診療を行う歯科医院で、アスリートへの食事指導や、一般患者へのダイエット、フレイル・サルコペニア予防の指導を行う他、内科クリニックで生活習慣病患者に対する食事指導を行っている。

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