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パートナーの“不機嫌”がつらい…「不機嫌ハラスメント」で離婚できる? 弁護士に聞いた

周囲の人を振り回す「不機嫌ハラスメント(フキハラ)」。パートナーの不機嫌に悩む人もいるようですが、フキハラを理由に離婚できるのでしょうか。弁護士が答えます。

パートナーの「フキハラ」で離婚は可能?
パートナーの「フキハラ」で離婚は可能?

 突然、不機嫌になって態度や口調に現れ、周囲の人に過剰に気を使わせる「不機嫌ハラスメント」という行為が知られるようになってきました。略して「フキハラ」とも呼ばれるこの行為について、「夫のフキハラが本当にひどい」「いつも妻のフキハラに振り回されている」など、「パートナーのフキハラに悩んでいる」人も少なくなく、中には「精神的に限界」「離婚したい」と考える人もいるようです。

 実際のところ、不機嫌ハラスメントを理由に離婚することはできるのでしょうか。佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

「フキハラ」だけだと難しいケースも

Q.暴力などの直接的な行為ではない「不機嫌ハラスメント(フキハラ)」で離婚をすることは、法的に可能なのでしょうか。

佐藤さん「可能です。夫婦の話し合いにより、お互いが納得して離婚する場合には、どんな理由であっても離婚できるからです(民法763条)。慰謝料の支払いを含め、離婚の条件についても、双方の話し合い次第になります。

ただし、相手が離婚に応じない場合、『フキハラ』だけを理由に離婚するのは難しいと考えられます。

離婚について、話し合いが成立しない場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。調停では、夫婦双方が顔を合わせることなく、調停委員を介して話し合いを進めることができます。離婚調停が成立すれば、離婚条件などについて調書がまとめられ、離婚が成立します。

調停が不成立となると、家庭裁判所に離婚訴訟を提起し、判決によって離婚を認めてもらうことになります。裁判で離婚を認めてもらうためには、『法定離婚事由』が必要になります。法定離婚事由には、(1)不貞行為(2)悪意の遺棄(3)配偶者の生死が3年以上明らかでないこと(4)配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないこと(5)その他婚姻を継続し難い重大な事由があること―の5つがあり(民法770条1項)、いずれかが認められる必要があります。

フキハラは(1)〜(4)には当てはまらないため、(5)に当たるか否かが問題になります。『その他婚姻を継続しがたい重大な事由』とは、婚姻中の一切の事情を考慮しても、婚姻関係が破綻しており、修復の見込みがないことをいいます。そのため、『相手が突然不機嫌になる』『相手の不機嫌にしょっちゅう振り回される』といった事情があり、そのせいでけんかが絶えない状況があったとしても、それだけで直ちに『その他婚姻を継続しがたい重大な事由』が認められるわけではありません。

それに加え、例えば、別居期間が何年も続いていたり、夫婦としての会話や関係が一切なかったりなど、さまざまな状況を踏まえて、総合的に婚姻関係の破綻が認められるかどうか判断されます」

Q.フキハラの場合、慰謝料請求は認められるのですか。

佐藤さん「裁判で慰謝料が認められるかどうかは、事案によって異なります。例えば、フキハラといっても『性格が気分屋なだけ』と評価されれば、慰謝料請求は認められないでしょう。一方、不機嫌になった際、人格を否定するような暴言があり、それが継続したために大きな精神的苦痛を被っているようなケースでは、慰謝料請求が認められる可能性もあると思います」

Q.離婚可能と考えられる、「フキハラ」行為の具体的な例はありますか。

佐藤さん「一定の暴言などを伴う、ある程度深刻なフキハラだったとしても、それだけで裁判上の離婚は認められない可能性が高いです。

それに加え、先述したように、別居期間が一定期間継続していることや、夫婦としての会話や関係が一切ない状況が継続していることなど、修復の見込みがないほどに夫婦関係が破綻していることが必要になります」

Q.「フキハラ」を理由に離婚したいと考える場合、どのような準備をすれば有利になると考えられますか。

佐藤さん「相手が離婚に応じてくれない場合、フキハラだけでは裁判で離婚が認められにくいので、夫婦間にあるさまざまな問題の証拠を残すようにしましょう。例えば、『不機嫌になったときに暴言を吐く』『不倫の疑いがある』『暴力を振るわれることがある』などです。

不機嫌なときの言動の録音・録画、その日の出来事を書き留めた日記などは、有力な証拠になります。また、別居を開始・継続するといった具体的な行動を始めることも大切です」

(オトナンサー編集部)

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佐藤みのり(さとう・みのり)

弁護士

神奈川県出身。中学時代、友人の非行がきっかけで、少年事件に携わりたいとの思いから弁護士を志す。2012年3月、慶応義塾大学大学院法務研究科修了後、同年9月に司法試験に合格。2015年5月、佐藤みのり法律事務所開設。少年非行、いじめ、児童虐待に関する活動に参加し、いじめに関する第三者委員やいじめ防止授業の講師、日本弁護士連合会(日弁連)主催の小中高校生向け社会科見学講師を務めるなど、現代の子どもと触れ合いながら、子どもの問題に積極的に取り組む。弁護士活動の傍ら、ニュース番組の取材協力、執筆活動など幅広く活動。女子中高生の性の問題、学校現場で起こるさまざまな問題などにコメントしている。

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