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何日も便が出ない…“便秘”の原因は? 放置するとどうなる? リスク&対処法を消化器科専門医に聞く

便秘になる原因や便秘を放置するリスクについて、消化器科専門医に聞きました。

便秘になる原因は?
便秘になる原因は?

 「何日も便が出ない」という、いわゆる「便秘」の症状に悩まされた経験がある人は多いのではないでしょうか。SNS上では、「便秘がつらい」「便秘がひどくておなかが気持ち悪い」「5日間便秘に苦しんでいる」などの意見が寄せられています。

 そもそも、なぜ便秘になるのでしょうか。便秘を放置した場合、どのようなリスクが生じる可能性があるのでしょうか。便秘の対処法などについて、八王子クリニック新町(東京都八王子市)院長で消化器科専門医の井藤尚武さんに聞きました。

カフェインの過剰摂取も便秘の原因に

Q.便秘の主な症状や原因について、教えてください。

井藤さん「便秘になると便が腸内にたまるため、腹痛や腹部の膨張感、食欲低下などの症状が出ます。便秘は次の6つの要因でなることが多いです」

(1)食物繊維が不足
食物繊維は腸内の動きを促進し、便を軟らかくする役割があります。食事の際に食物繊維の摂取が不十分だと、便が硬くなりやすいです。

(2)水分不足
十分な水分を摂取しないと便が乾燥して硬くなり、排便が困難になることがあります。また、水分を摂取すると便のかさが増し、腸が刺激されるため、収縮と弛緩(しかん)を繰り返す「ぜん動運動」が活発になります。水分不足の場合、腸のぜん動運動が活発にならないため、便意自体が起きにくくなってしまいます。

(3)運動不足
運動は腸の動きを刺激するため、便通を促します。運動不足になると、腸の動きが鈍くなり、便秘しやすい体になってしまいます。

(4)ストレス
人の体はストレスを受けると緊張し、交感神経が優位になります。消化管は、副交感神経が優位になることで活発になるため、交感神経が優位な状態が続くと便秘になっていきます。

(5)薬の副作用や病気
特定の薬物やサプリメントは便秘を引き起こすことがあります。例えば、せき止めやアレルギーの薬、安定剤、痛み止めなどが該当します。便秘が続く場合は、自分が服用している薬を疑ってみることが大切です。また、糖尿病や甲状腺の病気など、一見、腸に関係ないような特定の疾患でも便秘になることがあります。便秘が続くときは、かかりつけの医師に相談するのをお勧めします。

(6)生活習慣の変化
旅行や生活環境の変化などで腸のリズムが乱れ、便秘が発生することがあります。ストレスと同じように交感神経が影響していると考えられます。

Q.水分不足が便秘の原因になるということですが、気温が高い時期は便秘になりやすいのでしょうか。

井藤さん「気温が高い時期は、発汗で水分が不足しがちになり、便秘になりやすいと言えます。また、アイスクリームやジュースなどの冷たい飲食物を摂取すると、消化管が冷やされて活動が低下するため、便秘の原因となります。

このほか、コーヒーやお茶などに含まれるカフェインを過剰に摂取した場合も、交感神経が優位な状態が維持されるため、便秘につながりやすいです」

Q.便秘を放置した場合、どのようなリスクが生じる可能性があるのでしょうか。

井藤さん「慢性的な便秘は、痔(じ)の大きな要因になります。また、慢性的な便秘が原因で『腸閉塞』を起こすことがあります。その場合、嘔吐(おうと)や激しい腹痛を伴い、開腹手術が必要になることもあります。

持続的な便秘は、食欲低下や腸内細菌のバランスの乱れにより、低栄養状態を引き起こすことがあります。日本内科学会では『3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態』を便秘と定義しています。便秘が一定期間以上続く場合は、内科や消化器科、肛門科などを受診するのをお勧めします」

Q.便秘を解消するには、どうしたらよいのでしょうか。便秘の解消に効果的な食べ物はありますか。

井藤さん「便秘を解消するには、ご自身の便秘の原因を知り、その原因に対する適切な対策が必要です。まずは食生活を見直し、それでも改善しない場合は、医師に相談しながら適切な解消法を探していきましょう。便秘解消に有効な食べ物は、次の通りです」

■便を軟らかくする「水溶性食物繊維」を多く含む食べ物
ワカメ、玄米、こんにゃくなど。

■水分を吸収して膨らむ性質があり、便のかさが増す「不溶性食物繊維」を多く含む食べ物
サツマイモ、ジャガイモ、ホウレンソウなど。ただし、食べ過ぎると便秘を悪化させる可能性があるため、注意。

■腸の動きを活発にする「善玉菌」を含む食べ物
ヨーグルト、納豆、漬物など。

■善玉菌を増やす「オリゴ糖」を含む食品
大豆、ゴボウ、タマネギ、バナナなど。

 3日以上便が出ないときは、便秘の可能性が高いかもしれません。まずは食物繊維を多く含む食べ物を摂取し、それでも症状が改善されない場合は医療機関を受診しましょう。

(オトナンサー編集部)

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井藤尚武(いとう・なおたけ)

医師(消化器科)

医療法人社団斗南堂八王子クリニック新町院長。日本外科学会専門医。2013年、愛知医科大学医学部卒業。東京女子医科大学東医療センター、中通総合病院、流山中央病院、Weill Cornell Medicine(米国留学)を経て、2021年から八王子クリニック新町の院長となる。消化器の外来診療、肛門病の日帰り手術、消化器内視鏡をはじめ、健診や人間ドックなどの予防医学、在宅医療に従事している。また、AIを得意とし、Computer visonによる転倒検知システム、院内の予約システム、人間ドックのコメント作成システムなどを現場の視点で自らが作成している。専門分野は一般外科、消化器全般、肛門病、AI関連業務。八王子クリニック新町(https://hachicli.or.jp/outpatient/hachicli-shincho.html)。

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