名札をつけてカスハラ被害「経験あり」2割超…「大声でフルネーム連呼」「近所で後をつけられた」ストーカー被害も
「カスタマーハラスメント」(カスハラ)に関する調査結果が発表されました。名札をつけた接客による「カスハラ経験」の実態が浮き彫りとなっています。
近年、社会問題化している「カスタマーハラスメント」(カスハラ)。従業員に対して、顧客が悪質なクレームや理不尽な要求を突きつける行為です。顧客対応時に「名札」を掲示している職種もありますが、実名を出すことにより、SNSやインターネット上に実名をさらされるといったプライバシー権の侵害やストーカー被害などが懸念されています。こうした実情を受け、弁護士ドットコム(東京都港区)が「カスハラ」に関する調査を実施。その結果を発表しました。
「名前が分からないとクレームが入れられない」
調査は2023年8月10日から同月29日、同社の一般会員を対象に実施。717人から有効回答を得ています。
まず、「カスハラ対策の一環として、名札に実名を出さない取り組みをどう考えるか」と聞いたところ、「賛成」が49.8%、「どちらかといえば賛成」が23.6%となり、賛成意見が7割を超える結果となりました。
賛成派の意見を聞いてみると、「本名を覚えられると、仕事以外の場面でも厄介なことになりそう(40代女性)」「自分も名前をさらして仕事をしているが、やはりカスハラは怖い(40代男性)」「看護師をしているが、実名フルネーム+顔写真の名札をつけている。経験はしてないが、よくインスタやTikTok、Twitterで、入院中の点滴中や病室、看護師の手元を写真や動画にアップしてあるものを見かける。患者さんにその気がなくても、こちらの個人情報が出る危険もあるので不快。逆に実名で働くメリットを知りたい(30代女性)」など、実名をさらすことへの危険性を言及する声が。
一方、反対派からは「名前が分からないとクレームを入れることができない(40代女性)」「自分自身の身を守ることは大事だが、名前を示すことで責任を持って職に当たってもらいたい。カスハラではなく、純粋な苦情や褒めたい投書などもある。フルネームでなくてもいいので、名字だけは示しておく必要があると思う。ニックネームにする意味はないと思う(60代女性)」「実名を出すことはその企業の信用を表している証なので続けてほしい(60代男性)」「サービス業側にいるが、本当にサービス側に問題があった際の原因究明が困難になる。長期的目線でのメリットを感じない(40代女性)」など、カスハラではない正当なクレームが黙殺される懸念を指摘するコメントが寄せられました。
また、名札をつけての接客経験者(541人)に対して、「名札をつけてカスハラ被害にあったことがあるか」を聞くと、「ある」が22.4%と2割を超える結果に。「ない」は65.4%、「分からない」は12.2%となりました。
理不尽なクレームや、どう喝をされている人が多いようで、「クレーマーに名前を覚えたからな、と言われて、しばらくの間家族もいる身なので恐怖に震えていた(40代男性)」「探されていた商品が欠品中だったのでそれを伝えたところ『こんな遠い店まで来たのになんでないの! なぁ! 聞いてんの!?』と店内で大声でフルネームを連呼されて、最終的には土下座での謝罪を要求されました。途中から写真を勝手に撮られたので警備員から警察に連絡してもらいましたが、警察が来ても『民事不介入』を理由に結局どうすることもできず。写真は悪用された可能性もありますが、どうなったのか知りません。店長もわれ関せずだったので完全に泣き寝入りしました(30代女性)」など、生々しい体験談が。
さらに、「休暇の日に探されて、近所で後をつけられた(30代女性)」「名指しで接客の指名をされ、執拗に責められた。また、何度もデートに誘われて連絡先を渡された(30代女性)」など、ストーカー被害にまで発展したケースの事例も寄せられています。
(オトナンサー編集部)
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