意外な野菜も? 冷凍すると「栄養価」がアップする食材3選
食材の中には、冷凍するだけで「栄養価」がアップするものがあります。どんな食材が該当するのか、管理栄養士に聞いてみました。
食材を日持ちさせるために、日頃から「冷凍保存」を活用している人は多いと思いますが、食材の中には、冷凍することで「栄養価」がアップするものが存在します。冷凍するだけで栄養価が上がる食材には、どのようなものがあるのでしょうか。管理栄養士の岸百合恵さんに聞きました。
エノキの「キノコキトサン」は約12倍に
Q.冷凍することで栄養価がアップする食材には、どのようなものがありますか。
岸さん「冷凍により、栄養価のアップが期待できるとされている食材は次の通りです」
【ニンジン】
冷凍することにより、ルテインやβカロテン、ビタミンC、ポリフェノールが増加します。中でもルテインは3倍、βカロテンは2倍になるといわれています。
生の場合、丸ごと、あるいは乱切りなど厚みのある切り方で冷凍すると、食感がスカスカになってしまうことが多いので、小さく薄くカットし、重ならないようにして冷凍しましょう。解凍後の調理時間を短縮したいときは、固めに下ゆでしてから冷凍することもできます。
【エノキ】
エノキやシメジなどのキノコ類は、冷凍したものを加熱調理することで、アスパラギン酸やグアニル酸といったうまみ成分が増えるため、香りや味がよくなります。また、冷凍することで細胞が壊れ、うまみ成分や栄養素が流出しやすくなり、総合的においしく感じるようになります。
中でも、エノキに含まれている「キノコキトサン」は、冷凍することで約12倍にまで増加するとともに、細胞壁が破壊されることにより吸収しやすくなります。キノコキトサンは近年、注目を集めている食物繊維で、脂肪の燃焼を促進し、体重の減少や生活習慣病の改善をサポートします。
なお、キノコ類は洗わないのが鉄則です。洗ってしまうと、うまみや栄養素が流れ出てしまうためです。冷凍時は丸ごとではなく、根元を切って小分けにしましょう。
【シジミ】
冷凍保存することで、シジミの代表的な栄養素である「オルニチン」が増えます。青森県産業技術センターの実験によると、急速に冷やすのではなく、マイナス4度の穏やかな冷凍処理を行うことで、オルニチンの含有量は8倍にもなるとされています。
また、キノコ類と同じように、冷凍によって細胞が壊れることで、うまみ成分であるグルタミン酸とアラニンが吸収されやすくなり、栄養価が上がるだけでなく味もおいしくなります。
冷凍時は、砂抜きをした後に口が開いているもの、割れているものを除いて平らにします。穏やかな冷凍環境の方が、オルニチンが増えやすいので、ジッパー付きの食料保存袋などに重ならないように入れた後、新聞紙にくるんで、開閉により外気に触れやすい冷凍庫内の場所でゆっくり冷凍しましょう。
岸さん「食材の栄養素が増えることについては、検証事例が少なく、メカニズムなど現時点で科学的な根拠を示すのは難しいようです。しかし、冷凍することで腐敗の原因となる酵素の働きを止めるため、食材の栄養の減少を防げます。
なお、そもそも、冷凍そのものでは栄養価が損なわれることは少ないです。栄養価が落ちてしまうケースとしては、『もともと冷凍に向かない食材の場合』『下処理に原因がある場合(水溶性のビタミンなどは下処理で流れ出やすい)』などだと思われます。
常温や冷蔵で保存している食材や、旬を過ぎていたり、少し傷んでしまったりしている食材よりも、適切に冷凍した食材の方が、栄養価の高い状態をキープできる場合もあります。これは、今回挙げた3つ以外の多くの食材にも当てはまります」
Q.その他、食材を上手に冷凍保存するためのポイントとは。
岸さん「基本的には水分をよく拭き取り、しっかり空気を抜いて急速冷凍することがポイントとなります。冷凍庫内の温度がマイナス18度以下になるようにし、熱伝導率の高いアルミホイルに包んだり、金属製のトレイなどに乗せたりするとよいでしょう。ジッパー付きの食料保存袋を利用するときは、食材を平らに入れるようにしましょう。適切な冷凍方法で食材を保存し、効率的な調理や栄養素の摂取に役立ててください」
(オトナンサー編集部)
コメント