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バイクを勝手に売られた…妻の“暴挙”嘆く夫に「離婚すべきだ」と同情の声、妻の責任は?

プラモデル、フィギュア、バイク……。夫が趣味で集めたコレクションを妻が無断で売却した場合、その収入は誰のものになるのでしょうか。無断売却の法的問題を探ります。

夫のコレクションを妻が売却、お金は誰のもの?
夫のコレクションを妻が売却、お金は誰のもの?

「鉄道コレクションを勝手に売却され、そのお金を嫁の小遣いにされた。もう何もやる気が起きない」

「子どもの頃から集めてきたプラモを、『邪魔だから』という理由で全部売られた。妻は悪いことをしたとは思っておらず、お金になったことを喜んでいる」

「妻から『旅行を予約した』と言われて喜んだのもつかの間。その資金は、自分のバイクを売って得たものだった。出張中に勝手に売却されていたらしい」

 鉄道模型やプラモデル、フィギュアなど、お金と時間をかけて大切に収集・保管していた大切なコレクションを、妻に無断で売却されてしまった男性たちの怒りと悲しみの体験談が、SNS上などで話題になっています。

 これについて「犯罪行為だと思う」「売ったお金は誰のものになるんだろう」「離婚すべきだ」など、さまざまな声が上がっていますが、実際のところはどうなのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

金銭の返還請求ができる

Q.夫婦間において、持ち主に無断で所有物を「売却」する行為について、法的な問題はありますか。

牧野さん「一般的には、持ち主の占有を奪って売却する行為は、窃盗罪(刑法235条、10年以下の懲役または50万円以下の罰金)にあたりますし、預かって管理を任されている物を勝手に売却すれば、横領罪(刑法252条、5年以下の懲役)にあたります。

しかし、夫婦や親子間などにおける窃盗、横領、詐欺罪については、刑罰を免除する刑法の規定があります(『親族相盗例』刑法244条等)。従って、夫婦間の場合には、原則として罪に問われることはないでしょう。

ただし、刑事責任が免除されても民事上の不法行為に基づく損害賠償責任は発生すると思います」

Q.売る側は「悪意なく」「よかれと思って」売却するケースもあるようですが、悪意の有無は法的責任に影響しますか。

牧野さん「売る側が『よかれ(代理権が付与されている)と思って』売却する場合でも、所有者側が『勝手に売却された』と思えば、過失が認定されて損害賠償責任を負うことになるでしょう。民事責任の場合には、夫婦間でも、刑事責任のような免除規定がありません」

Q.所有者以外の人物が売却した場合、その代金は誰のものになるのでしょうか。

牧野さん「無断で売却し、金銭を受け取った者は、法律上の原因なくして金銭を受領しているので、民法703条の『不当利得』にあたります。所有者は、たとえ相手が妻であっても、金銭を受け取った者に対して不当利得に基づく返還請求をすることができます」

Q.売却された物を取り戻す方法はありますか。

牧野さん「民法上、購入した人は『善意取得(192条)』(本来は権限のない人が売却した事情を知らないで購入した)にあたります。そのため、原則として、売却した物を取り戻すことはできません。

ただし、無断売却されたものが『盗品』と判断されれば、例外的に、民法193条(盗品又は遺失物の回復)により、盗難された時から2年間は占有者に対してその物の返却を求めることができます。民事の判断となりますが、売却した物が夫婦の共有財産ではなく、個人財産(特有財産)であれば盗品と解されるでしょう。

なお、特有財産とは、結婚前から個人で所持していた財産などを指し、共有財産とは、夫婦の合意のもと共有名義で取得した財産などを指します」

Q.配偶者の所有物を無断で売却する行為は、離婚理由になりえますか。

牧野さん「加害配偶者に離婚する意思がなく、合意の上で離婚する(=協議離婚)ことができない場合、加害配偶者に離婚原因(民法770条)が存在することを証明しなければ、離婚することができません。

夫婦間の話し合いで成立する協議離婚がまとまらなかった場合、家庭裁判所で離婚調停を行うことになりますが、その際、配偶者の窃盗が『その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき』という離婚事由にあたるかどうかが問題となります。

一度きりの『無断売却』では、離婚理由として認められない可能性があります。しかし、度重なる窃盗で手を焼いている場合は、一般的に離婚事由にあたる可能性が高いと言えるでしょう」

(ライフスタイルチーム)

牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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