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「死刑」になる可能性のある犯罪、日本にいくつある? 弁護士に聞いた

刑罰の一つとして、現在の日本で認められている「死刑」ですが、実際に死刑となる可能性のある犯罪にはどのようなものがあるのでしょうか。弁護士が解説します。

「死刑」になる可能性のある犯罪はいくつある?
「死刑」になる可能性のある犯罪はいくつある?

 日本において、刑罰の一つとして認められている「死刑」。あなたは、死刑判決が下される犯罪がいくつあるか、正しく知っていますか。

 日本の法律の中で、罪を犯した際の刑罰として「死刑」が規定されているものはいくつあるのか、また、どのような罪が該当するのか……「死刑」になる可能性のある犯罪について、佐藤みのり法律事務所の佐藤みのり弁護士に聞きました。

法定刑が「死刑のみ」の犯罪も

Q.そもそも、日本における「死刑」とはどんな刑罰ですか。

佐藤さん「『死刑』は刑罰の一つであり(刑法9条)、刑事施設内において、絞首して執行されます(同法11条1項)。具体的には、死刑を執行する人がボタンを押すと、死刑囚が立っている床が開き、首をつって亡くなることになります。

死刑の言渡しを受けた者は、執行までの間、刑事施設に拘置されます(刑法11条2項)。死刑の執行は、法務大臣の命令によって行われます(刑事訴訟法475条1項)。法務大臣の命令は、原則、判決確定の日から6カ月以内にしなければならないと定められています(刑事訴訟法475条2項)が、6カ月以内に命令がなされることはほとんどなく、長期間経過してからなされるケースが多いです。なお、法務大臣が死刑の執行を命じたときは、5日以内に執行をしなければなりません(刑事訴訟法476条)。

死刑制度については、制度の存在自体について賛否が分かれている他、執行方法についてもさまざまな問題が指摘され、訴訟にもなっています。法務大臣による死刑執行命令が、判決確定後、6カ月以内に出ないのは違法だとして争われた裁判では、『6カ月以内』と定めた刑事訴訟法の規定は、法的拘束力のない訓示規定であるとして、『違法ではない』と判断されました。

また、2021年には、死刑囚に対し執行を当日に告知する国の運用は、非人道的で憲法違反ではないかとして、死刑囚2人が国を相手に損害賠償訴訟を提起しています」

Q.日本において、罪を犯した際に死刑となり得る犯罪はどのようなものがあるのでしょうか。

佐藤さん「現在の日本の刑法の中で、死刑が定められている犯罪は次の通りです。なお、他の法律でも死刑を定めているものがありますが、今回は刑法のみ列挙します」

【内乱罪】

国の統治機構(国会、内閣、裁判所など)を破壊し、またはその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動を起こす罪です。首謀者は、死刑または無期禁錮に処されます(刑法77条1項1号)。

【外患誘致罪(がいかんゆうちざい)】

外国と通謀して、日本国に対し武力を行使させる罪です。法定刑は、死刑のみです(刑法81条)。

【外患援助罪(がいかんえんじょざい)】

日本国に対して外国から武力の行使があったときに、これに加担して、その軍務に服し、その他これに軍事上の利益を与える罪です。法定刑は、死刑または無期もしくは2年以上の懲役です(刑法82条)。

【現住建造物等放火罪】

放火して、現に人が住居に使用し、または現に人がいる建造物、汽車、電車、艦船または鉱坑を焼損する罪です。法定刑は、死刑または無期もしくは5年以上の懲役です(刑法108条)。

【激発物破裂罪】

火薬、ボイラーその他の激発すべき物を破裂させて、現住建造物を損壊した場合、「現住建造物等放火罪」と同様、死刑または無期もしくは5年以上の懲役となります(刑法117条1項)。

【現住建造物等浸害罪】

出水させて、現に人が住居に使用し、または現に人がいる建造物、汽車、電車または鉱坑を浸害する罪です。法定刑は、死刑または無期もしくは3年以上の懲役です(刑法119条)。

【汽車(船舶)転覆等致死罪】

現に人がいる汽車または電車を転覆させ、または破壊したり、現に人がいる艦船を転覆させ、沈没させ、または破壊したりすることによって、人を死亡させる罪です。法定刑は、死刑または無期懲役です(刑法126条3項)。

【往来危険による汽車(船舶)転覆等致死罪】

鉄道もしくはその標識を損壊し、またはその他の方法により、汽車・電車の往来の危険を生じさせたり、灯台もしくは浮標を損壊し、またはその他の方法により、艦船の往来の危険を生じさせたりして、汽車・電車を転覆させ、もしくは破壊し、または艦船を転覆・沈没させ、もしくは破壊し、人を死亡させた場合、「汽車(船舶)転覆等致死罪」と同様、死刑または無期懲役になります(刑法127条)。

【水道毒物等混入致死罪】

水道により公衆に供給する飲料の浄水、またはその水源に毒物その他、人の健康を害すべき物を混入し、人を死亡させる罪です。法定刑は、死刑または無期もしくは5年以上の懲役です(刑法146条)。

【殺人罪】

人を殺す罪です。法定刑は、死刑または無期もしくは5年以上の懲役です(刑法199条)。

【強盗致死罪】

強盗が、人を死亡させる罪です。法定刑は、死刑または無期懲役です(刑法240条)。

【強盗不同意性交等致死罪】

強盗罪やその未遂罪を犯した者が「不同意性交等罪」もしくはその未遂罪をも犯し、または不同意性交等罪やその未遂罪を犯した者が「強盗罪」やその未遂罪をも犯し、それにより人を死亡させる罪です。法定刑は、死刑または無期懲役です(刑法241条3項)。

Q.これらの中で、最も重い罪となるのはどれですか。

佐藤さん「最も重い罪とされているのは、法定刑が死刑のみの『外患誘致罪』です。先述したように、外患誘致罪は、外国と共謀して、日本国に対し、武力行使させる犯罪です。この行為は、日本に住む全ての人の生命・自由・財産…などを危険にさらすばかりか、日本国の存立を脅かす危険性が非常に高いため、法定刑が死刑のみになったといわれています」

(オトナンサー編集部)

【画像】全部知ってたらすごい! 日本で「死刑」が定められている犯罪12種類

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佐藤みのり(さとう・みのり)

弁護士

神奈川県出身。中学時代、友人の非行がきっかけで、少年事件に携わりたいとの思いから弁護士を志す。2012年3月、慶応義塾大学大学院法務研究科修了後、同年9月に司法試験に合格。2015年5月、佐藤みのり法律事務所開設。少年非行、いじめ、児童虐待に関する活動に参加し、いじめに関する第三者委員やいじめ防止授業の講師、日本弁護士連合会(日弁連)主催の小中高校生向け社会科見学講師を務めるなど、現代の子どもと触れ合いながら、子どもの問題に積極的に取り組む。弁護士活動の傍ら、ニュース番組の取材協力、執筆活動など幅広く活動。女子中高生の性の問題、学校現場で起こるさまざまな問題などにコメントしている。

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