「VIVANT」“野崎”阿部寛の警視庁公安部・外事第4課って本当にあるの? 元警視庁公安捜査官に聞いた
話題の人気ドラマ「VIVANT」に登場する「警視庁公安部・外事第4課」。実在する組織なのか、どんな仕事をしているのかなど、元警視庁公安捜査官を直撃しました。

毎週、放送されるごとに話題になる俳優の堺雅人さん主演の連続ドラマ「VIVANT」(TBS系、毎週日曜午後9時)。主人公で丸菱商事・エネルギー事業部2課課長の乃木憂助(堺さん)がテロ組織「テント」のリーダーのノゴーン・ベキ(役所広司さん)の息子だと判明したり、多数のキャラクターが絡み合いながらのストーリーが展開されています。そんな本作のメインキャラクターの中に、俳優の阿部寛さん扮(ふん)する「警視庁公安部・外事第4課」の野崎守も登場しています。
ドラマといえば架空の組織などが登場したりするもの。そこで、スパイ捜査官として外国からの諜報活動の取り締まりを行っていたという元警視庁公安部外事課捜査官で日本カウンターインテリジェンス協会代表理事の稲村悠さんに「外事第4課」は実在するのか、どんな仕事をしているのかなど、さまざまな質問をぶつけてみました。
「外事第4課」は実在 優秀な人が集まる“人気部署”
Q.まず、「警視庁公安部・外事第4課」は実在するのでしょうか。どんな部署なのでしょうか?
稲村さん「はい、実在します。『外事4課』は国際テロ対策(通称:国テロ)を行います。『9・11米国同時多発テロ事件』を機にその存在が注目され、警視庁内でも人気の所属でした。私もスパイ捜査と国テロ対策のどちらを希望するか相当迷った経験があります。結果、スパイ捜査を選択しました」
Q.第4課の職務や業務内容を詳しく教えてください。
稲村さん「国際テロ対策として、国際テロに関する情報収集・分析がメインとなります。ドラマのように海外に展開して銃器を使用したテロ組織との対峙(たいじ)といった光景はないのが現実です。そのような事態になった時点でテロ組織に身分が露呈され、社会に事象が認知されてしまい、リスクが顕在化してしまいます。
また、薬局を訪問し、爆発物の製造に必要な薬品を大量に購入している人物がいないか、身分証を提示しなかったなど不審な購入者はいなかったかを調べたり、地道に企業や地域商店などに情報提供の依頼を行っています。実際に地域から情報が提供され、テロ防止活動に役立っている実情もあります。それと、テロ防止に必要な観点のレクチャーもしています」
Q.「第4課」ということは第1~3課もあるのでしょうか。あるとしたら、第4課と何が違うのでしょうか。
稲村さん「外事課は、2021年に3課体制から4課体制に再編し、ロシア・東欧担当の外事1課、中国・東南アジア担当をカバーする外事2課、北朝鮮を担当する外事3課(旧外事2課から派生)、そして中東の過激派、国際テロに対応する外事4課(旧外事3課)といった編成となっており、明確に任務が分掌されています」
Q.キャリア、人柄など第4課には、どのような人たちが所属しているのでしょうか。
稲村さん「外事4課は人気部署のため、相対的に優秀な方が集まる認識です。これは私見になりますが、非常にスマートで“カッコイイ”人物が多いように思います。いわゆる皆さんがイメージされる刑事のような“人情派”で“泥臭い”というよりは、スマートな会社員のようなイメージに近いです。
中にはアラビア語や英語に長けた人物もいますが、そういった言語に関するスキルがなくとも、情報収集力と分析力が最も重要な素質かと思います」
Q.「VIVANT」野崎守のような人物はいそうですか?
稲村さん「あれだけカッコよくて人柄もよく、知的で…と全てがそろった人物はなかなかいないと思います(笑)。演じられている阿部さんだとすると、背が高いので潜入時にも目立ってしまうかと思います。私も身長180センチ以上あるのですが、目立ってしまうため、不得意とする任務がありました。外事課には、どちらかというと(会社員としての)乃木のように、企業に溶け込むような人物はたくさんいます」
Q.ドラマと実際の外事第4課はまったく異なりますか? もしくは綿密な取材が行われ、実像に近いイメージを持たれていますか?
稲村さん「ドラマであり脚色されていると理解した上で、現場の実像とは乖離(かいり)があると思います。
私もドラマを見ながら『この用語は“今”は使われていない』とか、『この手法は絶対にやらない』『この手法があるのに』などとツッコミを入れながら毎回とても楽しく見ています。
実際の業務もスリルがある点では一致していますが、別の類のスリルになるかと思います。例えば、テロ組織にバレないようにする、社会で波風立てずに目立たないように活動するなどです。好き勝手申し上げましたが、毎週とても楽しく見させていただいています(笑)」
稲村さんの話で、実在する「外事第4課」は人気部署だということが分かりました。ドラマでは脚本・演出上、脚色されているようですが、実際でも国際テロを防ぐため日々、真摯(しんし)に業務にまい進しているということです。
「VIVANT」を通して、認知度を深めた警視庁公安部・外事課の存在。私たちが安心、安全に暮らせることができるのは、影で彼らが支えてくれていることを忘れてはいけませんね。
(オトナンサー編集部)
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