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コムアイ「胎盤食べた」報告に賛否の声…実際「胎盤食」って安全なの? どんな味? 産婦人科医に聞いた

アーティストのコムアイさんによる「胎盤を食べた」報告に賛否の声が上がっています。実際、胎盤は安全に食べることができるものなのでしょうか。産婦人科医に聞きました。

「胎盤食」の安全性とは…
「胎盤食」の安全性とは…

 8月2日、音楽ユニット「水曜日のカンパネラ」の元ボーカルでアーティストのコムアイさんが、自身のインスタグラムで、ペルー・アマゾンでの出産を報告。その際、実際の写真とともに「胎盤を食べた」と投稿したことがネット上で話題となりました。コムアイさんは、肉の串焼きのようなものを食べている写真について、「胎盤を薪火で焼いてもらったのを食べているところ」とコメント。「生も焼きもめちゃくちゃおいしかった!」と感想をつづっています。

 これについて、ネット上では「すごい」「どんな味なんだろう」「胎盤食ちょっと興味ある」「わざわざ食べなくても…」「本当に安全なの?」「生食はリスクがありそうで怖い…」など、賛否含めさまざまな意見が上がっているようです。胎盤食の安全性や“味”などについて、神谷町WGレディースクリニック院長で産婦人科医の尾西芳子さんに聞きました。

胎盤は有害物質を取り除く“関門”

Q.そもそも、人体における「胎盤」とは何ですか。

尾西さん「胎盤は、子宮の壁に張り付いて、そこにつながるへその緒を通してお母さんと赤ちゃんの間で酸素や栄養、老廃物のやりとりをする臓器です。大人の手のひらをいっぱいに広げたくらいの大きさで、厚みのあるレバーのような見た目をしています。妊娠することで作られ、出産が終わると不要になり体外に出てくるという点が何とも神秘的です。

胎盤は妊娠の初期から作られ始めますが、完成するのは妊娠16週(妊娠5カ月の始め)ごろといわれています」

Q.出産した後、胎盤はどうなるのですか。

尾西さん「出産後、胎盤は自然に出てきます。医学的には『分娩第3期』といわれ、赤ちゃんが出てくるのと同じくらい重要です。というのも、胎盤が子宮に食い込み、出てこない場合などはお母さんの命にかかわることもある『癒着胎盤』が起こる可能性があるためです。胎盤が出て、初めて私たち産婦人科医は安心できます。

初産では、赤ちゃんが出てから15~30分以内、経産婦では10分~20分の間に出てきます。大きさは500グラム程度で、大きなレバーの塊のような感触と生臭さです」

Q.「胎盤食」という言葉も聞かれますが、実際のところ、胎盤は食べることができるものなのですか。

尾西さん「草食動物などは、出産したことを肉食動物に悟られないように胎盤を食べることがあるようですが、ヒトも、昔は『産後の肥立ちがいい』と食べていた時代があるようです。

ただ、胎盤は、お母さんから赤ちゃんに送られない方がいい有害物質を取り除く“関門”であり、細菌やウイルスも付着しているため、食べることはお勧めできません。栄養のあるものが食べられなかった時代とは違い、現代は産後にきちんと栄養のあるものを安全に食べることができるため、その方が重要だと思われます。

なお、私は食べたことがないので味は分かりませんが、非常に血液に富んだ臓器なので、おそらくレバーに近い味なのではないかと思います」

Q.実際の産婦人科の現場において、「胎盤食」を希望する妊産婦はどのくらいいるのでしょうか。

尾西さん「ごくまれにですが、ご相談されることはあります。ただ、病院では、基本的に胎盤は『感染性廃棄物』として処理されるため、食べることでリスクを負うようなことはお勧めしません。そのため、実際は助産院での出産や自宅出産の際に、助産師さんにこっそり食べさせてもらうケースが多いように思います」

Q.胎盤を食べることについて、産婦人科医としてどう思われますか。

尾西さん「胎盤を食べる/食べないは個人の自由なのですが、産婦人科医としては『感染症のリスクを上げたり、有害な物質を体に入れたりする可能性のあることをあえてしなくても……』という意見です。また、出産で出てきた胎盤は、10カ月間赤ちゃんとお母さんのために頑張って、やっと任務が終了して出てきたものです。切ったり焼いたりせず、そのままの形で見送ってほしいな、という気持ちもあります。

病院では胎盤食に対応していないことも多いので、どうしてもという場合は、病院や助産院に確認してから分娩先を決定しましょう」

(オトナンサー編集部)

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尾西芳子(おにし・よしこ)

産婦人科医(神谷町WGレディースクリニック院長)

2005年神戸大学国際文化学部卒業、山口大学医学部学士編入学。2009年山口大学医学部卒業。東京慈恵会医科大学附属病院研修医、日本赤十字社医療センター産婦人科、済生会中津病院産婦人科などを経て、現在は「どんな小さな不調でも相談に来てほしい」と、女性の全ての悩みに応えられるかかりつけ医として、都内の産婦人科クリニックに勤務。産科・婦人科医の立場から、働く女性や管理職の男性に向けた企業研修を行っているほか、モデル経験があり、美と健康に関する知識も豊富。日本産科婦人科学会会員、日本女性医学学会会員、日本産婦人科乳腺学会会員。オフィシャルブログ(http://ameblo.jp/yoshiko-onishi/)。

コメント

1件のコメント

  1. 好きにすればいいんじゃない。本当どうでもいい話。