メリット大? 「ワカメ」実は食べ過ぎNG “思わぬ病気”を招く…医師が解説
ワカメを食べ過ぎると、どのようなリスクが生じる可能性があるのでしょうか。医師に聞きました。
ワカメには、ミネラルやカルシウムなどの栄養素が豊富に含まれているといわれています。また、カロリーが低いため、ダイエット中に食べる人が多いようで、ネット上では、「ワカメダイエット」に関する情報があふれています。
ところで、健康食であるワカメを食べ過ぎた場合、体にどのような影響が生じる可能性があるのでしょうか。広島ステーションクリニック(広島市東区)理事長で医師の石田清隆さんに聞きました。
甲状腺や胃腸の働きに影響
Q.そもそも、ワカメにはどのような栄養素が含まれているのでしょうか。
石田さん「ワカメは『海の野菜』と呼ばれており、主に水溶性食物繊維のフコイダンとアルギン酸カリウムのほか、ヨウ素やマグネシウム、カルシウム、リン、カリウム、ナトリウムといったミネラル成分が多く含まれています。このほか、βカロテンやフコキサンチン、ビタミンKなどの体に重要な栄養素も含んでいます」
Q.では、ワカメを食べると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
石田さん「主に次の7つのメリットがあります」
(1)腸内環境を良くする
水溶性食物繊維のフコイダンとアルギン酸カリウムは、ともに善玉菌を増やし、腸内環境を整えることで便通を良くします。また、ワカメに含まれるマグネシウムも、水を引き込む作用があり、便を柔らかくするため、便秘を改善する効果があります。
(2)新陳代謝を良くする
ワカメは、海水中に多く存在するヨウ素を吸収して育つため、ヨウ素がたくさん含まれています。ヨウ素は甲状腺ホルモンをつくるために必要な成分です。甲状腺ホルモンはたんぱく質や脂質、糖質の代謝を高めるほか、細胞を活発化させて新陳代謝の向上を促す効果があります。
(3)生活習慣病の予防
水溶性食物繊維のフコイダンやアルギン酸カリウムは、食物に絡み、血糖の上昇を緩やかにするほか、コレステロールや中性脂肪を低下させる効果もあります。アルギン酸カリウムは、腸内でカリウムを放出し、体内のナトリウムを減少させ、血圧の上昇を抑えます。また、マグネシウムも血管を拡張させる働きがあるため、血圧の上昇抑制に効果的です。
(4)ダイエット効果
ワカメは食物繊維が豊富で、満腹感を与えてくれます。特に乾燥ワカメは、体内で10倍以上に膨らみます。また、糖質をほとんど含まず、水に戻した乾燥ワカメの場合、100グラム当たり17キロカロリーなので、ダイエットに適している食材です。さらに、先述の便通改善効果や新陳代謝向上、血糖上昇抑制効果、脂質上昇抑制効果もダイエットに寄与します。
(5)美肌、美髪をつくる
ヨウ素による甲状腺ホルモンの作用で、肌や髪に潤いやツヤを与えてくれます。
(6)むくみ改善
体内の水分バランスを保つ効果があるカリウムは、体内の余分な塩分を排出する働きをするため、むくみ解消効果があります。
(7)骨、歯を強くする
ワカメに含まれるマグネシウムやカルシウム、リン、ビタミンKは骨、歯を丈夫にします。
このほか、ワカメに含まれるフコキサンチンは、一部の海藻や野菜にのみ含まれる色素の一種で、抗酸化作用があり、脂肪燃焼を促進させるだけでなく、抗ガン作用があるという研究結果も報告されています。また、βカロテンはさまざまな病気の原因となる活性酸素の発生を防ぐ効果があるほか、ビタミンKは血液の凝固に重要な栄養素です。
Q.ワカメの1日の適切な摂取量について、教えてください。
石田さん「厚生労働省が定める2020年版の『日本人の食事摂取基準』では、18歳以上の人のヨウ素の1日の摂取推奨量は、130マイクログラムです。体にとって必要な栄養素ですが、ヨウ素の上限量は、18歳以上で3000マイクログラムと定められています。
健康な人であれば、生ワカメの場合は1日約190グラム以内、水で戻した乾燥ワカメの場合は、1日約160グラム以内を目安に摂取するとよいでしょう」
Q.ダイエット中にワカメを大量に食べる人がいますが、どのようなリスクが生じる可能性がありますか。
石田さん「ワカメを食べ過ぎた場合、ヨウ素の過剰摂取で、甲状腺の機能が高進したり、低下したりすることがあります。また、甲状腺が腫れたり、甲状腺がんになったりするリスクが上がるほか、発熱や胃痛、嘔吐(おうと)、下痢、脈拍微弱などの症状を引き起こす恐れもあります。
ワカメを大量に食べて食物繊維を多く摂取すると、消化不良のほか、吐き気やおなかの膨満感、腹痛、下痢などの体調不良につながる恐れがあるので、注意してください。
特に、乾燥ワカメは胃腸の中で膨張するため、食べ過ぎると消化が追い付かず、腸に詰まります。その場合、腸閉塞(へいそく)に至ることがあるため、注意が必要です。実際に乾燥ワカメの食べ過ぎで救急搬送された事例があり、開腹手術でワカメを取り除いた人もいます」
Q.持病の関係で、できるだけワカメの摂取を控えた方がよいケースはありますか。
石田さん「甲状腺疾患を持っている人は、甲状腺機能に影響が出るため、ワカメの取り過ぎは危険です。かかりつけの医師と摂取量を相談するとよいでしょう。また、腸閉塞にかかったことがある人は、乾燥ワカメを食べ過ぎると腸の通過障害を起こし、開腹手術につながるリスクがあるため、注意しましょう」
このほか、石田さんはワカメに限らず、特定の食品を大量に食べ続ける行為は、危険だと話します。ダイエット中であっても、栄養バランスの取れた食生活を心掛けましょう。
(オトナンサー編集部)
コメント