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サイゼリヤの「粉チーズ」で話題 飲食店が調味料を“有料化”するメリット&デメリットは? 飲食店コンサルタントが解説

飲食店が調味料を有料で提供した場合、どのようなメリット、デメリットが生じる可能性があるのでしょうか。飲食店専門経営コンサルタントに聞きました。

飲食店が調味料を有料で提供するメリット、デメリットは?
飲食店が調味料を有料で提供するメリット、デメリットは?

 外食チェーン大手のサイゼリヤが、7月10日に粉チーズの無料提供を終了すると発表し、SNS上で大きな話題となりました。同月12日から粉チーズを税込み100円で提供しており、今回の粉チーズの有料化についてSNS上では、「仕方がない」「むしろ今まで無料でありがとう」「残念」「不景気を感じる」など、さまざまな意見が寄せられています。

 飲食店が調味料を有料で提供した場合、どのようなメリット、デメリットが生じる可能性があるのでしょうか。客数に影響はあるのかなど、飲食店専門経営コンサルタントの成田良爾さんに聞きました。

億単位のコスト削減が可能に

Q.そもそも、飲食店における調味料の調達コストは、食材よりも高いのでしょうか。

成田さん「調味料や食材の種類にもよりますが、食材よりも調味料の調達コストが低いケースが多いです。また、保存期間が長い調味料は、業務用の大容量サイズを調達すれば、一般的なスーパーで販売される家庭用サイズで調達するよりも安価で入手できます」

Q.これまで調味料を無料で提供していた飲食店が有料で提供するメリット、デメリットについて、教えてください。

成田さん「メリットは、何といってもコスト削減につながることです。例えば、1本当たり300円程度の粉チーズを無料で提供する場合、1日に10本使うとして3000円、1カ月9万円です。全国に100店舗あるチェーン店の場合は1カ月900万円、年間で1億800万円かかる計算ですが、有料化にした場合、こうしたコストが削減できます。

味の好みは人それぞれです。サイゼリヤの場合、より幅広い客層に満足してもらうために、『さまざまな料理を自由にカスタマイズできるサービス』の継続を優先し、粉チーズの有料化を決めたのではないでしょうか。原材料費や人件費がかつてないほどに高騰している状況で、料理のクオリティーや価格、顧客満足度を維持しながら採算を合わせるには、何らかのコストを削る必要があるのは明らかです。

デメリットは、これまでは調味料を無料で提供していたため、有料となれば一部理解しない客もいるでしょう」

Q.調味料の有料化が原因で客足に影響が出る可能性はありますか。

成田さん「一般的な飲食店の場合、影響が出る可能性が考えられますが、サイゼリヤの場合はそれほど影響はないと私は考えます。飲食店の値上げラッシュが広まる中、サイゼリヤは企業理念の下、いち早く値上げをしない方針を明確に打ち出しているからです。調味料を有料化しても料理を値上げしないのであれば、多くの顧客の理解を得られることでしょう」

Q.飲食店によっては、調味料付きの料理を提供する際に、調味料を不要とした客に対して値引きを行っていることがあります。この取り組みは有効なのでしょうか。

成田さん「有効だと思います。顧客の年齢層の変化や外国人観光客の流入により、今後は今よりもさらに『食の多様化』が進むと私は考えています。料理やサービスのカスタマイズ、それに対する明確な対価の提示へのニーズはますます高まるでしょう。

必要な調味料を選んでもらい追加料金をもらうか、不要な調味料分を値引きするかは、各社の見せ方や経営戦略によっても異なりますが、どちらも『顧客満足度を高めるサービス』のための企業努力であると言えるでしょう」

(オトナンサー編集部)

【画像で丸わかり!】飲食店で提供される主な調味料

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成田良爾(なりた・りょうじ)

飲食店専門経営コンサルタント

ヴィガーコーポレーション代表取締役。厚生労働省公認レストランサービス技能士(国家資格)、文部科学省後援サービス接遇検定準1級、食生活アドバイザー2級、他。飲食業界25年以上。ミシュランガイド掲載の高級レストランから個人経営の小さな大衆店まで幅広いジャンルの飲食店に携わり、その経験に基づく統計解析および枠にとらわれないアイデアで多くの赤字店を黒字化させてきた実績を持つ。「100年続く店づくり」をモットーに、次世代育成や飲食業の働き方改革などにも力を入れており、食文化普及の他、職業訓練校講師(フードビジネス科)や子育て女性就職支援事業講師なども歴任。現在も多くの飲食店経営者のサポートを手掛ける。飲食店専門のコンサルティング「オフィスヴィガー」HP(http://with-vigor.com/)。

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