上場企業株主還元率が過去10年間で最高に、その背景には何がある?
「企業統治指針」や低金利が影響
Q.株主への還元率が過去10年間で最高になった背景は何でしょうか?
西田さん「2015年に東京証券取引所と金融庁によって『企業統治指針』が導入され、企業が一段と株主重視の姿勢を打ち出していることが背景にあります。また、経済成長が鈍く、低金利環境が続いていることから、企業が株主還元以外に、資金を投資・運用する有効な対象が見当たらない事情もあるでしょう」
Q.上場株式のうち個人株主が保有する株式は約2割。つまり、配当総額10兆9000億円の2割に当たる2兆円が家計に入ることになります。それによる消費や経済へのインパクトは大きいのでしょうか?
西田さん「配当所得が家計所得を押し上げる点だけを見れば、消費にプラスとなります。ただし、企業が従業員給与を引き上げる方が、家計や消費への効果は大きいのではないでしょうか」
Q.今後も企業が株主への還元を大きくする傾向は続きますか?
西田さん「経済の低成長が続く間、そうした傾向は一定程度、続くかもしれませんね」
Q.こうした現状を受けて“株人気”は高まるでしょうか?
西田さん「株主還元が大きいから株を買おう、という判断は短絡的です。企業が利益を配当ではなく、設備投資や商品開発などに回した方が成長や収益力につながり、その結果、株価が上昇する可能性もあるからです。つまり、株は配当だけでなく、企業の成長(=株価上昇)を期待して買うものでもあり、高配当が必ずしも、『株は買い』につながるわけではありません。配当性向(=利益が配当に回される割合)と株価の間に大きな関係はない、という研究も数多くあるのです」
(オトナンサー編集部)
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