実は負担がかかる「正座」、どんなリスク? 「足が短くなる」の真偽は? 負担減のコツを整形外科医が解説
正座をすると、体にどのような影響を与えるのでしょうか。疑問を整形外科医に聞きました。

法事などの際に正座をすることがあります。足がしびれることが多いため、正座が苦手な人は多いのではないでしょうか。正座をすると、体にどのような影響を与えるのでしょうか。「正座をすると、足が短くなる」とよく言われますが、本当なのでしょうか。整形外科医の歌島大輔さんに聞きました。
脚の血流が悪化
Q.そもそも、正座をすると体にどのような影響を与えるのでしょうか。
歌島さん「科学的なデータで明らかにされているのが、脚の血流が悪くなることです。2005年に、正座が脚に与える影響を調べた研究(※1)の結果が発表され、正座によりふくらはぎの組織酸素濃度が、4~5分で著しく低下したと報告されています。つまり、酸素を運ぶ血流が阻害されていることを示しています。
また、この研究では、足の裏の固有知覚閾(いき)値が約17分で上昇したと報告されています。これは正座を17分すると、足裏の感覚が鈍くなり始めることを示しており、神経にも影響が出ます。
ただ、これは正座をしたことがある人なら誰でも体感したことがあると思います。個人差はありますが、正座を長く続ければ足がしびれてきますよね」
Q.「正座をすると、足が短くなる」とよくいわれますが、本当なのでしょうか。理由も含めて、教えてください。
歌島さん「『正座をすると、足が短くなる』という説を支持する医学的根拠は、私が調べた限りではありません。先述のように、正座は脚の血流に悪影響を与えることが明らかとなっているため、長時間正座をする習慣がある場合、脚の成長にも関係してくる可能性はあると思います。
しかし、個人的な意見を申し上げると、成長に関係するほど脚の血流に異常を起こすような長時間の正座をしようとしても、しびれがつらくて不可能なのではないでしょうか。つまり、成長という視点を1つ取っても、正座をしたときの足のしびれは、体の防御反応として機能していると考えてもよいかもしれません」
Q.正座をするときに体に負担をかけないためには、どうすればよいのでしょうか。
歌島さん「正座の際に気を配るべきなのは、脚の血流です。なぜ脚の血流が阻害されるかといえば、膝が深く曲がることと体重がふくらはぎにダイレクトにかかってしまうことにあります。そのため、厚く柔らかい座布団を太ももとふくらはぎの間に挟んだり、正座用の小さな椅子に尻をのせたりすることで、血流への悪影響を小さくすることができます」
Q.もし正座をした後にしびれがひどい場合、何らかの病気の可能性はあるのでしょうか。
歌島さん「しびれが一時的であれば、病気というよりも、正座が原因の生理的反応と考えられます。ただし、正座後も長時間しびれが続いてしまう場合、神経の病気である『末梢(まっしょう)神経障害』の可能性を考えなければなりません。
この病気は重症化する可能性があり、注意すべきは運動機能です。足首や足の指に十分に力を入れて動かせるかをチェックし、力が入らないようであれば、整形外科の受診が必要です」
Q.床に座るときは、どのような姿勢が望ましいのでしょうか。
歌島さん「まず大事なポイントですが、長時間同じ姿勢でいるための理想的な姿勢というものは存在しません。例えば、正座自体は、骨盤の前傾を維持して、腰が丸まりにくいという意味では良い姿勢を維持しやすいと言えますが、先述の通り、脚の血流に悪影響を与えます。
一方、あぐらをかくような姿勢は、ふくらはぎや脚に体重がかからないため、脚の血流に悪影響を与えることはありませんが、腰が丸まりやすい傾向にあります。
大事なのは、床に座る場合は一定時間ごとに座る姿勢を変えたり、座椅子や正座用の小さな椅子などを活用したりして、無理なく良い姿勢が取れる環境をつくることです。ここで言う良い姿勢とは、脚の血流を阻害させず、腰が丸まったり、反ってしまったりすることがない状態です」
【参考文献】
※1:Shinichi Demura,et al.J Physiol Anthropol Appl Human Sci.2005
Effect of Japanese Sitting Style(seiza)on the Center of Foot Pressure after Standing
(オトナンサー編集部)
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