「胃腸」の不調で口臭、なぜ? 臭いにどんな特徴? メカニズム&対処法を消化器科専門医に聞く
胃腸の調子が悪いと、口臭が発生するのはなぜでしょうか。消化器科専門医に聞きました。

胃腸の調子が悪い時は、口臭が出やすいといわれています。しっかり歯を磨いているのに口臭が出てしまう時は、胃腸の不調を疑った方がよいかもしれません。なぜ胃腸の調子が悪いと、口臭が発生するのでしょうか。口臭の原因や対処法などについて、八王子クリニック新町(東京都八王子市)院長で消化器科専門医の井藤尚武さんに聞きました。
腸にたまった食べ物が腐敗
Q.胃腸の調子が悪い時は、口臭が出やすいといわれていますが、なぜでしょうか。メカニズムについて、教えてください。
井藤さん「胃腸の調子が悪い時に口臭が出るのは、2つの理由があります。胃炎や十二指腸潰瘍、持続的な便秘症などで胃腸の調子が悪くなると、消化不良を起こすようになります。すると、腸に食べ物が長くたまり、腐敗してガスが発生します。
その後、このガスに含まれる『揮発性硫黄化合物(VSC)』という化学物質が腸から血液中に溶け込み、肺に運ばれた後、呼気として排出されます。この時、卵が腐ったような臭いが出るのが特徴です。揮発性硫黄化合物は、虫歯や歯周病、舌苔(ぜったい)などの際にも発生します。
また、胃酸過多や逆流性食道炎により、食道に逆流した胃酸や十二指腸液が、食道の粘膜を刺激し、炎症を起こすことで口から酸っぱい臭いが出ることがあります。この時、口臭だけでなく、げっぷや胸焼け、嘔吐(おうと)、声のかすれなどの症状が生じることもあります。
卵が腐ったような口臭が出る場合は、歯や舌などの口腔(こうくう)内に原因があるのか、それとも、胃腸の不調に原因があるのか、判断が難しいことがあります。一方、酸味のある口臭の場合は、原因が胃や食道にあると判断しやすいです」
Q.胃腸の不調が原因と見られる口臭が続く場合、どのように対処すればよいのでしょうか。受診の目安も含めて、教えてください。
井藤さん「口臭の原因の80%は、口腔内にあるといわれています。まずは、歯科を受診するとよいでしょう。それでも改善が見られない場合は、消化器内科や胃腸科を受診しましょう。
また、口臭の症状とともに、胃もたれや胸焼け、頻繁なげっぷ、胃痛、腹痛、持続した便秘など他の症状が見られた場合、まずは消化器内科を受診するとよいでしょう」
Q.胃腸の不調が原因と見られる口臭を放置した場合のリスクについて、教えてください。
井藤さん「一般的に、口臭を放置しても大きな病気を見逃すことはまれです。しかし、胃がんなどが原因で独特の口臭が発生するケースがあるため、消化器内視鏡検査で定期的に確認するのが大切です。
また日本口臭学会では、口臭を『本人あるいは第三者が不快と感じる息』と定義しています。本人が気付かないことも多くあり、周囲への不快感につながることで良好なコミュニケーションの妨げになり、精神不安を引き起こすこともあります。口臭が気になった場合は、早期に受診することをお勧めします」
Q.歯科医院の定期検診の際に、歯科医師が胃腸の不調による口臭を指摘することはありますか。
井藤さん「歯科医師が1回の診察で、胃腸の不調が原因の口臭を指摘するのは難しいと思います。しかし、虫歯や歯周病、舌苔など、口腔内で口臭の原因となる症状が見られない場合は、胃腸の疾患の可能性を指摘し、消化器科や内科の受診を勧めることが多いです」
(オトナンサー編集部)
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