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「路上で吐く」「ゴルフクラブを持ち歩く」も“犯罪”? 実は「法律違反」になり得る身近な行為5選【前編】

「法律違反」に該当する恐れのある行為、実は日常の身近なところに多数あるようです。あなたも行ってしまっているかもしれない“身近な犯罪行為”について、弁護士が解説します。

実はあなたも行っているかも…?
実はあなたも行っているかも…?

 法律違反に該当する行為の中には、日常生活上で“無意識で”、“知らず知らずのうちに”行ってしまいかねないものが複数あるようです。実は法律違反になる可能性をはらんでいる「身近な行為」には、どのようなものがあるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。今回は【前編】です。

「路上で嘔吐」は軽犯罪法違反

Q.日常生活で、知らない間に行ってしまいかねない「法律違反になり得る行為」があるのは本当ですか。

牧野さん「はい、日常生活で何気なく行ってしまうことのある行動の中には、法律違反に該当する可能性があるものが存在します。代表的なものを次に挙げます」

【路上に唾を吐く/路上で嘔吐(おうと)する】

道路で唾を吐いたり、路上で嘔吐したりすると、軽犯罪法違反に問われる可能性があります。同法1条26号は「街路または公園その他公衆の集合する場所で、たんつばを吐き、または大小便をし、もしくはこれをさせた者」について、拘留または科料に処される可能性があります。

例えば、駅のような公共性の強い場所の場合、それが鉄道各社の私有地であったとしても「公衆の集合する場所」に該当すると考えられます。他方、公共の場所であっても、人がほとんど通らないような場所であれば、「公衆の集合する場所」には該当せず、軽犯罪法違反にはあたらないと考えられます。

ただし、路上で嘔吐する場合でも、「急に気分が悪くなり、どうしても路上での嘔吐を避けられなかった」といった場合には、刑法37条の「緊急避難」が適用され、罪に問われない場合もあります。

【自家用車にバットやナイフを積んでいる】

銃刀法(銃砲刀剣類所持等取締法)では、銃や刃物を正当な理由なく所持することを禁じています。対象は銃や刃物なので、バットやナイフは銃刀法の禁止対象外ですが、軽犯罪法違反となる可能性があります。

同法1条2号では、「正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、または人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者」を、「拘留または科料に処する」とあります。つまり、バットやナイフでも「正当な理由」がなく、「刃物、鉄棒その他人の生命を害し、または人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具」と評価されて、それを「隠して携帯」していた場合には、軽犯罪法違反となる可能性があるのです。

【竹刀、木刀を持ち歩く】

先述したように、銃刀法の対象は銃や一定のサイズの刃物です。そのため、バットやナイフの例と同様に、竹刀や木刀も銃刀法の禁止対象外ですが、軽犯罪法違反となる可能性があります。

先述の同法1条2号が定める通り、竹刀や木刀でも「正当な理由」がなく、「刃物、鉄棒その他人の生命を害し、または人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具」と評価され、それを「隠して携帯」していた場合には、軽犯罪法違反となる可能性があります。

【ゴルフクラブを持ち歩く】

ゴルフクラブも銃刀法の禁止対象外です。しかし、先述の例と同様に、これも軽犯罪法違反となる可能性があります。

同法1条2号が定める通り、ゴルフクラブでも「正当な理由」がなく、「刃物、鉄棒その他人の生命を害し、または人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具」と評価され、それを「隠して携帯」していた場合には、軽犯罪法違反となり得ます。

【はさみや包丁を持ち歩く】

はさみや包丁は、軽犯罪法で隠して携帯することが禁止されている、「他人の身体や生命に危険を与える器具」にあたる可能性があります。「他人の身体や生命に危険を与える器具」には、刃物や鉄パイプ、スタンガンなどの他、先述した木製バットやゴルフクラブなどのスポーツ用品も含まれます。

さらに、はさみや包丁であっても、銃刀法違反の可能性があります。銃刀法では、刀剣類 (刃が15センチ以上の刀、やり、なぎなた、刃が5.5センチ以上の剣、飛び出しナイフ)の所持を原則禁止している他に、刀剣類に該当しない刃物(はさみやカッターなど)であっても、一定以上の長さを有する刃物(刃の長さが6センチを超える刃物)は、仕事での使用や正当な理由がある場合を除いて、携帯することが禁止されています。

これについては6月25日、JR山手線の車内で、包丁を所持していた料理人が通報され、JR新宿駅のホームがパニック状態に陥ったことがニュースになりましたが、料理人が持っていたのは“仕事で使用する包丁”だったので、銃刀法違反には問われないでしょう。

(オトナンサー編集部)

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牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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