「ポキッ」「パキッ」 膝を曲げたときに“音”が鳴る理由は? 病気の可能性は? 医師に聞く
屈伸運動などで膝を曲げたときに、音が鳴るのはなぜでしょうか。専門家に聞きました。

屈伸運動などで膝を曲げたときに、「ポキッ」「パキッ」と音が鳴ることがあります。膝を曲げたときに音が鳴るのはなぜでしょうか。病気の可能性はあるのでしょうか。湯川リウマチ内科クリニック(東京都武蔵野市)の院長で、医師の湯川宗之助さんに聞きました。
変形性膝関節症の可能性
Q.膝を曲げたり、伸ばしたりしたときに「ポキッ」「パキッ」と鳴る場合、どのような原因が考えられますか。病気の可能性はあるのでしょうか。
湯川さん「膝の曲げ伸ばしの際に『ポキポキ』『パキパキ』と鳴るのは、膝の関節が急に引っ張られることで関節液の中にできた気泡が弾けることが原因といわれており、痛みがなければしばらく様子を見てもよいでしょう。
ただし、音が鳴る頻度が高かったり、音とともに膝に痛みが生じたりする場合は、注意が必要です。関節音には生理的な音と病的な音があり、後者の場合は、痛みや水腫(水たまり)、腫れを伴うことが多いです。また、音が頻繁に鳴る場合も病的なケースである可能性があります。このほか、外傷を負った後に音が鳴るようになった場合も要注意です」
Q.では、どのような音が病的なケースに該当するのでしょうか。
湯川さん「例えば、膝の曲げ伸ばしの際に『ミシミシ』『ギシギシ』という音が鳴った場合は、変形性膝関節症の疑いがあります。
膝関節は、太ももの骨である『大腿骨』とすねの骨である『脛骨(けいこつ)』から構成されています。それらを覆い、外部からの衝撃から守ったり、関節内の動きをスムーズにしたりする役割を担うのが軟骨です。
変形性膝関節症は、その軟骨のすり減りから始まる疾患です。徐々に軟骨がすり減り、大腿骨と脛骨が直接ぶつかり合うようになると、膝を曲げたり伸ばしたりする際に『ミシミシ』『ギシギシ』と音を立てることがあります。
このような症状を放置しておくと、膝関節の変形が進み、変形性膝関節症が進行してしまうことがあります。『ゴリゴリ』『ガリガリ』という音が鳴る場合は、軟骨がすでに消失している可能性があります。すぐに病院を受診するのをお勧めします。すり減った軟骨を元通りに治すことはできないため、痛みを覚えたときにできる限り早く対応することが重要なのです。
まだ診断を受けていないという人も、膝の曲げ伸ばしの際に鳴る音の頻度が変形性膝関節症の発症リスクのヒントになるかもしれません。膝のポキポキ音がまったくないという人に対し、まれに膝が鳴る人は1.5倍、常に膝が鳴る人は3倍もこの病気の発症リスクが高いことが知られています。
このことから、膝でポキポキと音がする症状は、変形性膝関節症のリスクを持つ人の識別や、発症の予測に有用である可能性が示唆されております。変形性膝関節症かもしれないと疑っている時点で膝の音が頻発している場合、早めに受診してみるとよいでしょう」
Q.膝が「ジャリジャリ」「ミシミシ」と音が鳴りますが、痛くありません。この場合、放置しても問題ないのでしょうか。
湯川さん「膝関節の軟骨がすり減ったことにより、骨同士がぶつかってすれて音が発生している可能性があるため、早めに医療機関を受診するのをお勧めします。
膝の痛みがない場合でも、膝から音が鳴る症状は変形性膝関節症の兆候として挙げられます。先述のように『パキパキ』『ポキポキ』という音は、関節が急に引っ張られることで関節液の中にできた気泡が弾けた際に生じるため、膝に痛みがない場合は、様子を見てもよいとされています。
一方で、膝から『ミシミシ』や『ジャリジャリ』などの音が1回でも鳴るようであれば、膝関節内部の軟骨や半月板がすり減っていたり、変形性膝関節症の状態となっていたりする可能性が高いです。
音が鳴っている状態の膝を放置しておくと、今後、痛みが生じてきたり、動かしたときに『しゃがみづらい』『正座しにくい』といった形で曲げ伸ばしがしにくくなったりするなど、生活に悪影響が出ます。症状がひどくなると歩行困難や寝たきりの状態になる危険性もあります。
現時点での膝の状態(症状の進行度)をきちんと把握するためには、医療機関で画像検査や触診などによる正確な診断が必要となります」
Q.変形性膝関節症の進行を抑える方法はあるのでしょうか。
湯川さん「変形性膝関節症を進行させないためには、膝関節への負担を軽減する必要があります。そのためには体重を落とし、太ももやふくらはぎなど、膝回りの筋力トレーニングやストレッチを行うのが有効でしょう。つまり、膝関節を筋力でサポートすることが有効です。
ただし、実際に医師の診察や検査を受けてみないと、膝から鳴る音が、本当に軟骨のすり減りによるものかどうかは分かりません。また、筋力トレーニングなどの運動も、患者一人一人の膝の状態に適した方法で行わなければなりません。悪化させないためには、音だけで自己診断してしまうのではなく、医療機関を受診して医師から指示を受ける必要があります」
(オトナンサー編集部)
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