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「疲労骨折」はアスリートだけじゃない! 実は子どもや高齢者に多いって本当? 整形外科医が5つの要因を解説

アスリートやスポーツ選手に多いイメージがある「疲労骨折」。しかし実は、子どもや高齢者にも起こりやすいといわれているようです。実際はどうなのか、整形外科医に聞きました。

アスリートに多いイメージがあるけど…
アスリートに多いイメージがあるけど…

「疲労骨折」と聞くと、プロアスリートやスポーツ選手などに多いイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。しかし実は、成長期の子どもや高齢者にも起こるといわれているようです。疲労骨折はなぜ、どのようにして起こるのでしょうか。お茶の水セルクリニック(東京都千代田区)の整形外科医・前之原悠司さんに聞きました。

太り過ぎ、痩せ過ぎの人は要注意

Q.そもそも「疲労骨折」とは何ですか。通常の骨折とはどう違うのでしょうか。

前之原さん「疲労骨折とは、通常の骨折とは異なり、正常な骨の同じ部位に繰り返し負担がかかることにより生じる骨折のことです。主な発生部位は下腿や足で、腰の骨(腰椎)にも起こることがあります。けがをした覚えがないのに運動や歩行などで痛みがあり、安静にすると痛みがよくなるのが特徴です。

発症早期は痛みが軽い場合もあるため、日常生活やスポーツをそのまま続け、時間がたってから痛みが強くなり、病院を受診する人もいます。疲労骨折の発症早期にはエックス線撮影で骨折線が分からないことも多く、必要に応じてCTやMRIなどを用いて診断を行います。

なお、通常の骨折でも、痛みが軽いケースや、発症初期のエックス線撮影で骨折線が見えづらいケースはあり得ます。そのため、通常の骨折と、疲労骨折で明確な区別ができる点としては、『明らかな外傷(転倒した、ぶつけたなど)があるか、ないか』になると思います」

Q.疲労骨折は激しい運動をする人に多いイメージがありますが、「成長期の子どもや高齢者にも多い」というのは事実でしょうか。

前之原さん「事実です。疲労骨折はアスリートに多い他、特にスポーツを活発に行う10代後半をピークに発生しますが、一方であらゆる年齢の人に発症する可能性があります。

成長期の子どもは骨が成熟していないため、また高齢者は骨粗しょう症により骨がもろくなっているため、疲労骨折を起こすことがあります。なお、高齢者の骨粗しょう症に伴う骨折は、狭義には『脆弱(ぜいじゃく)性骨折』といい、疲労骨折とは区別される場合があります」

Q.疲労骨折を起こしやすい人の特徴はあるのでしょうか。

前之原さん「疲労骨折には身長、体重、性別、食事、栄養、筋力、柔軟性、さらにアスリートであれば競技やトレーニングの負荷、さらにはシューズといったさまざまな要素が関わってきます。そのため、起こしやすい人の特徴は一概にはいえませんが、太り過ぎや痩せ過ぎ、偏食、不適切なトレーニング、過度な運動は避けた方がよいでしょう。該当する人は要注意です」

Q.疲労骨折はどのような治療を行うのですか。

前之原さん「疲労骨折の治療は多くの場合、通常の骨折のようにギプス固定などを行うことは不要であり、安静にして骨折部位への負担を軽減することで治癒します。

一般の人の場合、リハビリテーションは不要なこともありますが、アスリートにおいて長時間の安静はパフォーマンスの低下につながるため、多くの場合リハビリテーションが必要です。リハビリテーションの内容は骨折部位や症状、スポーツ競技などに応じて決定します。なお、安静やリハビリテーションでも骨折が治癒しない場合、手術が必要となることもあります」

(オトナンサー編集部)

前之原悠司(まえのはら・ゆうじ)

医師(整形外科)

お茶の水セルクリニック医師。鹿児島大学医学部卒業。横浜労災病院整形外科、東京大学医学部附属病院救急部、東京都立駒込病院整形外科、奈良県立医科大学附属病院整形外科、東京大学大学院医学系研究科 整形外科学 博士課程、JCHO湯河原病院リウマチ科にて研さんを積み、現在に至る。日本整形外科学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。専門疾患は変形性関節症、足部・足関節疾患。お茶の水セルクリニック(https://ochacell.com)。

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