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カフェインの過剰摂取って、ずばりコーヒー何杯分? 実は、子どもには“身近なリスク” 管理栄養士が解説

コーヒーなどに含まれているカフェイン。過剰摂取すると良くないと言われていますが、果たして、それは何杯分なのか…。管理栄養士が解説!

カフェインの過剰摂取って、ずばりコーヒー何杯分?
カフェインの過剰摂取って、ずばりコーヒー何杯分?

 梅雨入りし、ジメジメとした天候の中、仕事を頑張っている人がほとんどではないでしょうか。仕事の合間に、ついついコーヒーブレークをして一息入れたり、もうひと踏ん張りするためにコーヒーを飲んで眠気を覚ますということもあるでしょう。

 そんなコーヒーですが、カフェインが入っているのは、多くの人が知っていると思います。紅茶や緑茶などにも含まれるカフェインを過剰に摂取すると健康被害をもたらすという話があります。しかし、過剰摂取の目安はどれぐらいなのか、知っている人は多くいません。インターネットでは、約400グラムと明記されてしたりいますが、コーヒーで言うと何杯ぐらいなのかなど、気になる疑問を管理栄養士の岸百合恵(きし・ゆりえ)さんに聞きました。

カフェインは覚醒作用、解熱鎮痛作用がある

Q.カフェインとはどんな栄養素なのでしょうか。
岸さん「カフェインとは、コーヒー豆や紅茶・緑茶などの茶葉に多く含まれる天然成分で、アルカロイドという窒素を含む塩基性化合物の一種です。

神経を鎮静させるアデノシンという物質の働きを阻害することで、神経を興奮させる働き
を持ち、作用例としては覚醒作用、解熱鎮痛作用、強心作用、利尿作用があり、依存度が高いという特徴も持ちます。

食品には、コーヒーやエナジードリンクなどの清涼飲料水のほか、チョコレートやカフェインが食品添加物として添加されたものもあります。

一方で医薬品には、中枢神経を刺激する精神神経薬や鎮静効果のある解熱鎮静薬などと、医薬部外品には栄養ドリンクなどのドリンク剤にも含まれています。

Q.過剰摂取となる目安を教えてください。
岸さん「日本ではカフェインの摂取量についての値は設定されていませんが、欧州食品安全機関やカナダ保健省では、健康な成人の場合、悪影響のない1日のカフェイン摂取量は400ミリグラムと推奨されています。これは、コーヒーで言うと3杯程度の量です。

妊婦・授乳中の女性がカフェイン過剰摂取すると、血管を収縮させるため赤ちゃんに運ばれる栄養や酸素が少なくなり、流産や新生児の低体重リスクを招くと言われています。

また、胎児が母乳を通じて摂取したカフェインでも有害作用を受ける可能性があるとされています。そのため世界保健機関(WHO)は、カフェインの胎児への影響はまだ確定はしていないとしつつも、妊婦のカフェインの摂取を1日300ミリグラム(コーヒー1日3~4杯まで)、英国食品基準庁(FSA)では、WHOよりも厳しい200ミリグラム(コーヒーをマグカップで2杯程度)に制限するよう求めています。

各機関基準に若干の差はありますが、あくまでも目安であり、カフェインの感受性には個人差があるため、その範囲内で気にせず飲んで良いわけではなく、体調を考慮しながら、医師に相談の上、判断するのが良いと思います。

子どもの場合には、コーヒーによるカフェインの心配はないと考えてしまいがちですが、カフェインを含むコーラやチョコレートを食べる機会の方が多いので、子どもにとっても意外と身近です。

また、子どもは大人と比べて、カフェインに対する感受性が高いといわれていますが、欧州の食品安全機関によると長期的・習慣的なカフェイン摂取に関する研究が少なく、不確実性が残るものの、大人と同様体重1キログラムあたり3ミリグラムであれば悪影響が見られないとしており、カナダの保健省は4~6歳の子どもでは1日に45ミリグラム、7~9歳の子どもでは1日に62.5ミリグラム、10~12歳の子どもでは1日85ミリグラムくらいが摂取の目安に推奨されています。

なお、カフェインを一生涯、摂取し続けたとしても、健康に悪影響が生じないと推定される一日当たりの摂取許容量(ADI:Acceptable Daily Intake)については、個人差が大きいことなどから、日本においても、国際的にも設定されていません。

過剰摂取で意識障害&心肺停止の可能性も

Q.カフェインを摂取しすぎると、どんな症状や影響がでてくるのでしょうか。

カフェインには血管を収縮させる作用があるため、初めはその作用によって疲労や眠気を感じにくくなります。

仕事・運動のパフォーマンスが向上するといった効果が感じられますが、毎日のように多量のカフェインを摂取していると体内から減りにくくなるため、自律神経や胃液分泌のバランスを崩し、めまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、胃液の過剰分泌、下痢、吐き気等の健康被害をもたらすことがあります。

人によっては、低カリウム血症、骨粗しょう症、高血圧などの疾病リスクが高まることがあり、重度のカフェイン中毒では意識障害や心肺停止を引き起こし、そのまま死に至るケースもあります。

また、副交感神経が働きにくくなり、不眠症などの睡眠障害になることもあり、生活に支障をきたすこともあるため注意が必要です。また、じっと落ち着いていられなくなるため、ADHD(注意欠如・多動症)と誤診されるケースもあります。

Q.「カフェインを取り過ぎた!」と思った場合、どんな対処をすべきでしょうか。

岸さん「カフェインは摂取してから30分程度で最も血中濃度が高い状態になり、体内のカフェイン量が半減するまでに約5時間かかります。カフェインに対する拮抗(きっこう)薬や解毒剤がないため、基本的に代謝で体内のカフェイン濃度が十分に下がるのを待ちます。

軽度の場合は、水を多めに飲んで一定期間カフェイン摂取を中止し、血中のカフェイン濃度を下げるようにすると中毒症状が早く収まる可能性があります。

急性中毒や重症の場合は、命の危険もあるため病院で胃洗浄や、血液透析を行ったりします。いずれにしろ耐えがたいような不快感や身体異常があるときは、放置せず医療機関を受診してください。

(オトナンサー編集部)

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岸百合恵(きし・ゆりえ)

プロボクサー、管理栄養士、日本糖尿病療養指導士

病院食の管理・調理業務や企業での特定保健指導を経て、生活習慣病診療を専門とするクリニックにおいて5年間、栄養指導を実施。アスリートとしても夢を追い掛け、2017年に日本ボクシングコミッション(JBC)のプロテストに挑戦し、一発合格。「闘う管理栄養士」として、チャンピオンを目指して日々トレーニングに励みながら、ボディーメークや健康管理の指導を行う。現在は、スポーツ・睡眠歯科分野の診療を行う歯科医院で、アスリートへの食事指導や、一般患者へのダイエット、フレイル・サルコペニア予防の指導を行う他、内科クリニックで生活習慣病患者に対する食事指導を行っている。

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