スマホのバッテリー、「急速充電で劣化が早まる」は本当？　ドコモ＆KDDI＆ソフトバンクに聞く

　スマホの充電器の中には、「急速充電」をうたった製品があります。通常の製品に比べて消費電力（ワット数）が高い分、短時間で充電できるのが特徴ですが、ネット上では「急速充電器で充電すると、バッテリーの劣化が早まる」という内容の声もあります。急速充電器でスマホを充電し続けた場合、バッテリーが劣化しやすいのは本当なのでしょうか。NTTドコモ（東京都千代田区）、KDDI（東京都千代田区）、ソフトバンク（東京都港区）の担当者に聞きました。

通常の使い方であれば問題なし

　そもそも、急速充電器とはどのような製品を指すのでしょうか。NTTドコモの担当者は「当社の場合、自社ブランド『docomo select（ドコモセレクト）』の充電器では、出力電力が15ワット以上の充電器を急速充電器と定義しております」と回答してくれました。

　一方、KDDIの担当者は、「『急速充電』という言葉に明確な定義はありません。この言葉は、高い電圧や電流の供給により、充電時間を短縮することを表現していると思います」と説明しています。

　ソフトバンクの担当者も「急速充電に明確な定義はありません。急速充電器は、一般的に大きな電力を供給し、従来品よりも充電時間が短縮できる製品を指していると思います」とコメントしつつ、「『USB PD』『Quick Charge』といった規格に対応している製品を急速充電器と呼ぶことが多いようです」と教えてくれました。

　では、急速充電器でスマホを充電し続けると、バッテリーの劣化が早まるのでしょうか。NTTドコモの担当者は「急速充電器は、充電時に低速充電器（5ワット充電）よりも多少熱を発しますが、通常利用の範囲内であれば、バッテリーの劣化が進む可能性は低いです」と回答してくれました。

　その上で「使用する機器の仕様によって異なりますが、docomo selectの充電器の場合、基本的にバッテリーの残量が0～50％の間は急速充電し、残量が80％以上になった時点で低速充電と同じ充電速度まで下がります。それにより、バッテリーへの負荷を下げ、劣化しにくい仕組みとなっています」と説明しています。

　KDDIの担当者も「スマホに付属されている充電器や当該のスマホに対応する充電器の場合、バッテリーを劣化させないよう適切な電圧、電流で充電するよう設計されております。それ以外のワット数が高い充電器を使用する場合も、スマホ側の対応電圧、対応電流で充電を行うため、基本的に問題はありません」と答えてくれました。

　ただ、「動作保証の対象外となるため、バッテリーの劣化のほか、スマホや充電器が高温になるなど、使用中に不安を感じた場合は、スマホに付属されている充電器や、当該のスマホに対応する充電器をご利用ください」と注意を呼び掛けています。

　ソフトバンクは「急速充電時はスマホの温度が高くなることがありますが、バッテリーにそれほど影響はないと思われます。ただ、高温の環境下での機器の使用は、バッテリーの劣化を早める要因となります」と回答しています。

バッテリーの劣化を防ぐには？

　スマホのバッテリーを劣化させないためには、充電時にどのようなことに注意すべきなのでしょうか。

　NTTドコモの担当者は「スマホに使われるリチウムイオンバッテリーは『バッテリーを0％になるまで使い切ると劣化が進みやすい』『バッテリー残量が80～100％の状態のときに充電をすると、電圧が高くなりバッテリーへの負荷が大きくなる』『高温の環境下で使うと劣化しやすくなる』といった特性があります」と解説してくれました。

　その上で、「バッテリー残量が0％になるまで使い切ってから満充電するのではなく、バッテリーの残量が20～80％のときに充電をすると、劣化を抑えることができます」とアドバイスしてくれた上、「スマホでゲームや動画視聴などをすると、機器に負荷がかかり、発熱することもあるため、スマホを使用しながら充電しないことをお勧めします」と対処法を教えてくれました。

　KDDIは「充電は満充電ではなく、8割程度に抑えるのが望ましいです。また、バッテリーを使い切ってからの充電も、バッテリーを劣化させる要因となります。そこで、残量が20％程度になった時点で充電を開始し、80％程度になった時点でやめるのが理想的です。スマホの中には、バッテリーの寿命を延ばすための機能を備えている機種もあるので、そちらを使用するのをお勧めします」と回答してくれました。

　ソフトバンクの担当者は「高温の環境下での使用だけでなく、バッテリーの残量が0％となった後、長時間放置した場合も、バッテリーの劣化を早める要因となります。バッテリーを使い切った状態で長時間放置しないようにしましょう」と注意しています。

　また、「『充電しながらスマホを使用するのを避ける』『バッテリー残量が100％になった後もそのまま充電を続けない』という点に注意して充電するのがよいと思います」と、充電時のポイントを教えてくれました。