糖尿病になったら「一生、インスリン注射が必要」…実は誤解? 糖尿病専門医に“真偽”を聞いた
糖尿病と聞いて、多くの人がイメージするであろう「インスリン注射」。「一生、打ち続けないといけない」と考える人もいるようですが、本当なのでしょうか。糖尿病専門医に聞きました。

「糖尿病=インスリン注射」のイメージを持っている人はきっと多いと思います。そのため、糖尿病になると「一生、インスリン注射を打ち続けなければならない」と考えている人もいるようです。しかし、本当にそうなのでしょうか。実際のところについて、自身も1型糖尿病歴30年で、著書に「血糖値を自力で下げるやり方大全」(フォレスト出版)がある、内科医・糖尿病専門医の市原由美江さんに聞きました。
早めに血糖値を下げれば「一生」ではない
Q.そもそも、糖尿病における「インスリン注射」とは何ですか。
市原さん「インスリンとは、膵臓(すいぞう)から分泌される血糖値を下げるホルモンです。インスリンは病院で点滴に混ぜて投与する方法もありますが、患者さんが自身で行うときは皮下に注射します。注射の頻度は1日1~4回と、患者さんのインスリンの分泌状況や血糖値に合わせて変えます。
かかる費用としては、インスリン注射+血糖自己測定となると治療方法によって異なりますが、1カ月の自己負担額(3割)は約1万2000円になります」
Q.糖尿病になると、インスリン注射は必ず行うことになるのでしょうか。
市原さん「インスリン分泌が枯渇した1型糖尿病の場合、生命維持のためにインスリン注射が必須です。
一方、2型糖尿病でインスリン注射が必要になるのは、『HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)』が10%以上である、かなり血糖コントロールが悪い人の場合です。あまりに血糖値が高いと、『糖毒性』と呼ばれるインスリン分泌やインスリン感受性の障害が起こり、内服薬が効きにくくなってしまいます。それを解除する鍵が、インスリン注射です。
なるべく早めにインスリン注射を使って膵臓を休めることができれば、インスリン分泌能力が回復し、内服薬への切り替えや薬も不要になる場合も多いです。
これとは別に、糖尿病の罹病(りびょう)期間が長くなるとインスリン分泌が減ってくる人がいます。この場合、飲み薬では血糖値をうまく下げることができないので、インスリン注射をすることになります」
Q.糖尿病になると「一生、インスリン注射が必要」と考えている人は少なくないようです。
市原さん「2型糖尿病を発症したばかりで、医師からインスリン注射を勧められた場合、そのインスリン注射は一時的であることがほとんどです。一生インスリン注射をしなければいけない人は、それまで高血糖の状態を何年も放置して、ついに膵臓がインスリンをうまく分泌することができなくなったとき。つまり、早めに血糖値を下げる対応をしておけば、一生インスリン注射が必要になることはありません。
インスリン製剤は現在、かなり進化しています。持続時間が長かったり、逆にかなり短かったりするので、患者さんに合わせたインスリンの調整がしやすくなりました。しかも、インスリンの針はとても細く短くなっているので、痛みを感じないくらいです。
もし、インスリン注射をしなければいけなくなった場合は、脳梗塞や心筋梗塞などの命に関わる合併症や、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害といった糖尿病特有の合併症を回避するための賢明な治療法になります。疑問点があれば主治医に確認しながら、インスリン注射を受け入れましょう」
(オトナンサー編集部)
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