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親も子どもも不快にならない! 言葉を変えるだけで“しつけ”効果がアップする「魔法の叱り方」

親も子どもも不快に気持ちにならない「魔法の叱り方」をご存知ですか。子育て本著者・講演家の筆者がお伝えします。

効果抜群「魔法の叱り方」とは?
効果抜群「魔法の叱り方」とは?

 子育ての場面では、しつけなくてはならないことが満載です。言い方、伝え方によっては、子どもも親もストレスを抱えてしまうだけになってしまいます。

 でも実は、伝えるときの言葉を変えるだけで“効果抜群”になる叱り方があるのです。子育て本著者・講演家である筆者がご紹介します。

「手洗いしたの?」は「手洗いしよう」に変える

 シチュエーション別の「言い換え」例は次の通りです。

【片付けない子どもに対して叱るとき】

・「ぐちゃぐちゃに置かないで、きちんと重ねて!」→「大きい物を一番下に置いて。大きい物から順番に重ねてね」
・「散らかすのはやめなさい! 片付けなさい!」→「積み木はこの箱に、絵本は本棚に戻そうね」
・「電車のおもちゃ、いい加減に片付けなさい!」→「終点だから車庫に入れようね」「終電だから車庫に戻してね」

 言葉だけでなく、視覚的に見せることもポイントです。おもちゃなどを入れてほしい指定場所に、入れる物の写真を貼っておきましょう。

【交通安全(外を歩くとき)】

・「走らないで」→「歩こう」「止まろう」
・「信号、赤で渡ってはなりません」→「信号、赤でストップだよ」

【スーパーで買い物中】

・「売り物は触ってはいけません」→「売り物はジーーーッと見ているだけにしようね。指の跡がついたものは、自分が買うときも嫌でしょ」
・「お菓子、買わないよ」→「お菓子は見ているだけね」

【食事中】

・「手で食べないの!」→「フォークを使ってね」
・「スプーン使わないの!」→「お箸を使おうね」
・「残さず食べなさい!」→「お皿をピカピカにしてね」
・「食べないとダメ!」→「食べたくない気持ちなんだ。食べようね」(まず共感してあげることがポイント。その後、課題を出す)
・「音を立てて食べてはいけません!」→「口を閉じて、モグモグしようね」
・「肘をつかないで食べなさい!」→「肘はテーブルから落としてね」
・「犬食いはやめて!」→「左手は上に置いてね」
・「床に落としたものは食べないの!」→「床に落としたものはゴミ箱に捨てよう」

【遊ぶとき】

・「スコップを独り占めするのはやめなさい!」→「あと3回すくったら、お友達に貸してあげよう」
・「順番を守らないとダメでしょ」→「太郎くんの次だよ」「4番目だよ」
・「ブランコ、いつまでも乗っていないで、お友達に交代しなさい」→「あと10回こいだら交代しよう」

【歯磨き、手洗いのとき】

・「もっときちんと歯を磨きなさい」→「タイマーかけるね。1分間、歯磨きスタート」
・「手洗いしたの?」「うがいしたの?」(きっと、やっていないだろうと最初から疑われて不快になる)→「手洗いしよう」「うがいしよう」
・「薬を飲まないと病気が治らないよ」→「薬を飲めば元気になれるよ」

「否定形」を使わないようにした方がよい理由

片付けを促すときは「視覚的に見せる」こともポイント(立石美津子さん提供)
片付けを促すときは「視覚的に見せる」こともポイント(立石美津子さん提供)

 これらの例の共通点として、「否定形が少ない」ことにお気付きかと思います。なぜ、否定形は効果がないのでしょうか。

「紫の象を、絶対に思い浮かべないでください」

「鼻からラーメンをすすっているおじさんを、絶対に思い浮かべないでください」

 この文言を読んだ今、頭には何が浮かんでいますか。おそらく「紫の象」「ラーメンを鼻からすすっている男」ではないでしょうか。「汚く使うな」と言われたら、「汚く使う」という言葉がむしろ強く脳裏に浮かぶもの。注意されたので従おうとすると、一度思い浮かべたことを否定しなくてはならないのです。

 この現象は、子どものしつけにも関係します。例えば、親は子どもに対して「走らないで!」「手で食べないで!」「席を立っちゃだめ!」といった言葉をかけてしまいがちです。こう言われたとき、子どもは「走る」「手で食べる」「席を立つ」ことをまず思います。しかし、親から「それをしてはならない」と言われたので、やめます。一度考えたものを再度考え直さなくてはなりません。

 さらに、「走らないで!」と命令された場合、「歩くのか」、それとも「立ち止まるのか」、子どもには分かりません。しかし、「歩きなさい」「止まりなさい」「お箸を使いなさい」「スプーンを使いなさい」「椅子に座っていましょう」だと、望ましい行動が示されていて分かりやすいのです。

 日々の子育てに追われる中、ついつい頭に血が上ってしまい、子どもに対して否定形や命令形、脅迫系の言葉を使ってしまいがちですが、それを自分で聞いている親自身も不快になったり、「言い過ぎた」と自分を後で責めたりすることになります。

 言い回しを、少しだけ変えてみませんか。

(子育て本著者・講演家 立石美津子)

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立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士。著書は「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)、「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)、「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」(すばる舎)、「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館)など多数。日本医学ジャーナリスト協会賞(2019年度)で大賞を受賞したノンフィクション作品「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社、小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)、Voicy(https://voicy.jp/channel/4272)。

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