「通常学級」「特別支援学級」「特別支援学校」…発達障害のわが子、進級先はどう選ぶ? 自閉症児を育てた専門家の“経験”
「通常学級」か「特別支援学級」か、それとも「特別支援学校」か…発達障害があるわが子の進級先を悩む親へ、自閉症児を育てた筆者が経験談を伝えます。

わが子に発達の凸凹があると、小学校の進級先について「通常学級」か「特別支援学級(支援級)」か、それとも「特別支援学校」がよいのか迷います。定型発達児の中にいた方が、障害児のクラスに入るよりも刺激を受けて伸びるのではないか…そう思ってしまうのが親心です。果たして、実際にそうなのでしょうか。
私の息子は知的障害を伴う自閉症児として育ち、22歳になりました。小学校1年生と2年生の2年間は特別支援学校に在籍し、行政からの指示により、小学校3年生から支援級に転校しました。そのため、息子自身は特別支援学校と支援級の両方を経験しています。
私は現在、子育て本著者・講演家として活動していますが、息子が生まれる前の1995年、特別支援学校の教員免許取得のため、実習生として特別支援学校に入り、わずかな期間ですが教壇に立ったことがあります。
その後は20年間、学習塾を経営していました(現在は会社を手放したので無関係)。その学習塾は受験目的の塾ではなかったので、発達障害ではなくても、学力が低い子を補習塾のような感覚で通わせる保護者も多くいました。
そんな自分の経験からですが、発達が気になる子どもが通常学級に通った場合、考えられることをお話ししたいと思います。
通常学級には「スピード」が求められる

そもそも「通常学級」とは、教科書の内容を理解する知能があるかどうかを前提にしてつくられています。知的障害がなく、支援級に通っていない「境界知能(境界型知能)」と呼ばれる子(おおむねIQ71以上85未満)が、担任から「勉強についていけていないので、塾に通って学力をつけてください」と個人面談で言われているケースもありました。
担任が無責任に見えるかもしれませんが、通常学級では、学年末までに教科書を最後まで終えなくてはなりません。「理解できていない子がいたので、算数は教科書の半分までしか進んでいません」は通じないのです。
この画像は、息子が中学生の頃、特別支援学級で使っていた教科書の内容です。これに沿った一斉指導の時間もありましたが、個別の教育支援計画に基づき、個々の学習時間が多く取られ、その子の能力に応じたきめ細かな指導がありました。
通常学級に在籍していても、自治体に人的予算があれば、加配の先生がついてくれることもあります。そうした環境下において、衣服の着脱といった身辺自立ができていない子の場合についてお話しします。
特別支援教育では、ボタン付きのシャツを着るとき、子どもからは見えにくい上の2つのボタンは先生や支援者が留めてやり、自分の目ではっきりと捉えられる下の方のボタンを自分で留めさせるなど、“スモールステップ”で時間をかけてできることを増やしていこうという考え方のもとで指導されます。
もし、衣服の着脱が苦手な子どもが通常学級に在籍していたとしたら、体育の時間の後、「着替えが遅くなると授業に間に合わなくなる」と考え、加配の先生がボタンを全部留めてやったり、親切な友達が助けてくれたりするかもしれません。クラスの人数が35人いる通常学級では、授業の流れについていくためにスピードも必要になるからです。
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