花粉症で仕事のパフォーマンスが低下? 屋内での「花粉対策」、アレルギー専門医に聞いた
今年も来てしまった花粉シーズン。症状がつらいあまり、「仕事の効率が下がる」「集中力が続かない」との声もあるようです。仕事のパフォーマンスを維持する花粉対策について、専門医が解説します。
今年もいよいよ本格的な花粉シーズンに突入しました。2023年は「例年より花粉の飛散量が多くなる」と予想されていますが、一方でコロナ禍の規制緩和に伴い、外出や移動、オフィスへの出社は増加傾向がみられます。外へ出る機会が増えれば、おのずと花粉の吸入量も増えるもの。中には既に、「花粉症の症状がつらくて、集中力が続かない」「花粉のせいで仕事の効率が下がる」といった声も聞かれ、花粉の影響が仕事のパフォーマンスに直結している人が多いことがうかがえます。
仕事の効率を維持するために、オフィス内ではどのような「花粉対策」を行えばよいのでしょうか。「All About医師/家庭の医学ガイド」で小児科医・アレルギー専門医の清益功浩さんに聞きました。
屋内で「症状がひどくなる」ことも
Q.「花粉症の症状がつらくて仕事に集中できない」との声もあるようですが、オフィス内や室内に入り込むのを防ぐことはできないのでしょうか。
清益さん「屋内に入り込む花粉をゼロにするのは難しいです。スギは、花粉媒介を風に頼る形の花のため、スギ花粉は風によって数十キロは飛散するとされています。そのため、北海道北部と沖縄県を除いて全国どこでも飛散しており、近くにスギがなくても、スギ花粉症の症状が出てくるのです。
窓を全開にすると、多いときには1時間に1000万個のスギ花粉が入り込むという報告があります。さらに、環境省の『花粉症環境保健マニュアル2022』によると、冬服に多い素材のウールは、綿よりも10倍近くスギ花粉が付着するという報告もあり、花粉が飛び始める冬の時期は特に、花粉を屋内に運び込んでしまいやすい可能性があります。
つまり花粉は、コロナ禍によって小まめに行うようになった換気や、衣服、髪、帽子などへの付着によって屋内に侵入するため、オフィス内や室内の花粉をゼロにするのはなかなか難しいといえるのです」
Q.花粉症の症状によって、仕事のパフォーマンスに影響が出ることがあるのは事実でしょうか。
清益さん「事実といえると思います。個人差はあるものの、身の回りの花粉量が多いと症状はひどくなります。屋外では花粉対策を行う人が多いですが、屋内ではつい油断し、特に対策を行わない人もいることでしょう。しかし先述の通り、屋内にいるときも、換気や衣服への付着で外から侵入した花粉によって、症状がひどくなることもあります。
そうした状況下では、花粉症に悩む人が、症状に気を取られてしまうことで集中力が低下することもあります。『荻野敏 他 診療と新薬 2010』によると、花粉症が仕事のパフォーマンスにマイナスの影響を与えると考えているビジネスマンが92.3%いることが報告されています」
Q.室内では、どのような花粉対策を行うのがよいのでしょうか。
清益さん「花粉が体内に侵入するのを防ぐ有効なアイテムの一つが、眼鏡です。眼鏡を使用しない場合と比較すると、通常の眼鏡を使用した場合、目に入る花粉量はおよそ40%減少し、防御カバーのついた花粉対策用の眼鏡ではさらに減少します。
顔との隙間が少なく、フィット感がある防御カバーのついた眼鏡では、目に入る花粉が減り、 症状が軽くなると考えられます。花粉が飛散している時期は、花粉カット率やフィット感を意識した眼鏡選びを推奨します」
Q.効果的な花粉対策のために、室内で眼鏡をかけるとよいシーンはありますか。
清益さん「1つ目は『朝起きてすぐ』です。実は、起床後すぐは交感神経が活性化しているため、花粉の影響を顕著に受けやすいタイミングであり、さらに、室内にたまっていた花粉が、人が動くことで舞ってしまうことも考えられるためです。つまり、屋内の花粉が少ない状況でも、目に入らないようにする必要があるといえます。
そして2つ目は、『メークをした後』です。メーク後は、目がかゆくてこすったり、目薬をしたりすることで、メークが落ちてしまう心配もあると思います。そのため、メークが終わったら眼鏡をかけることをお勧めします。もちろん、自宅からオフィスまでの通勤中に着用するのもいいですね」
Q.眼鏡をかけることの他に、花粉症による目の症状を緩和させる方法はありますか。
清益さん「洗眼を行うことで、目についた花粉を減らすことができます。目を洗うときには、水道水でなく、少し冷えた生理食塩水(食塩濃度が0.9%の水)で洗うとよいでしょう。目の回りを覆うような形の洗眼カップは、まぶたについた花粉を目に入れてしまう可能性があるので、洗顔した後に使用するなど、注意が必要です。また、防腐剤などを含まない、涙に近い点眼薬を使うとよいでしょう」
(オトナンサー編集部)
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