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「料理が下手」「ブスッとしている」…モラハラ夫に“サゲ”られ続けた妻の“静かな決意”

パートナーのことを「謙遜」し過ぎると、“サゲる”夫や妻になってしまいます。それが続くと夫婦仲にネガティブな影響も…。2つの事例を紹介します。

パートナーを“サゲ”続けると、夫婦仲に悪影響が…
パートナーを“サゲ”続けると、夫婦仲に悪影響が…

 謙遜も、度が過ぎると否定になります。ましてや、夫や妻のことを謙遜するのは嫌みになるだけでなく、相手を不快にさせたり、ひどくなればモラハラになってしまったりする可能性もあります。

 本気の謙遜で夫の評価を“サゲ”、周囲の人をイラつかせた妻と、妻を“サゲ”続け、離婚を決意させた夫の事例を2つご紹介します。

自分に自信がないことで周囲をイラつかせる妻

 楓さん(32歳、仮名)は「私なんて」が口癖の、おとなしく控えめな女性。いつも周囲の目を気にしていて、オドオド感さえ漂います。

 夫の裕さん(32歳、同)は中学の同級生。中学時代、裕さんが楓さんに片思いしていたそうです。同窓会で再会し、裕さんが告白。お付き合いが始まり、結婚したという“あるある”恋愛です。裕さんは社会人ラグビーをしていて、体格がよく、さわやか系の男性。人当たりもよく、はつらつとしていてママ友の受けも抜群です。

「おたくのパパって本当にかっこいいね。優しいし、うらやましい」。楓さんは、ママ友にそう言われるたびに、「そんなことないです。◯◯さんのパパの方がすてきです」と答えます。しかし、それは誰の目から見ても正しいことではありません。

 それに、裕さんを褒めた友達は、自分の夫を褒めてほしくて言っているわけではなく、率直な感想を述べているだけです。当然、その場はしらけます。楓さんは、そのしらけた空気を感じて「私なんかの夫なので…」と意味不明な発言をしてしまい、さらに空気を悪化させます。夫が苦手とする家事のことを、だらだらと補足することもしばしばです。

 彼女は、裕さんがその場にいるときもそんな調子です。ある日、裕さんに「いつも俺が褒められるとサゲるけど、あれ、本当に不愉快。どういうつもりで言ってるの? 本気で思ってる? 周りの人たちも、明らかにリアクションに困ってるよね」と言われ、楓さんは驚きます。反射的に謙遜していた発言が裕さんを傷つけ、さらに周囲の人も不快にさせていたのだと、言われて初めて気付いたのです。

「自分に自信がなくて、無意識に謙遜して相手を持ち上げる発言をしていました。とりあえずそうしていれば、相手を不愉快にさせることはないだろうって思っていたんです。それが夫を傷つけていたばかりか、周囲も不愉快にさせていたなんて最低です。私なんて、夫に嫌われて当然なんです」

 と、ここまで話を聞いたとき、私は「いやいや、そのキャラ、今のうちに改革した方がいいですよ」と伝えました。夫婦仲がしっくりこなくて相談に来られる方々を、私なりに分類しているのですが、楓さんはまさに「自分サゲ妻」からの「夫サゲ妻」の域です。夫のイラつきがピークに達する前に「発する言葉を変えてみましょう」とアドバイスしました。

妻をサゲ続け、離婚へと追い込んだモラハラ夫

 美樹さん(39歳、仮名)の夫、和也さん(46歳、同)はバーを経営し、自身もバーテンダーとしてお店に立っています。

 結婚前、美樹さんは優しく話を聞いてくれる7つ年上の和也さんに恋をしました。女性ファンが多く、複数人と交際していることも知っていましたが、和也さんから誘われるとうれしくて、体の関係を続けていました。そんなある日、美樹さんは妊娠します。そして2人は結婚した…という流れです。

 しかし、和也さんは結婚を機に、美樹さんに「店に来るな」と言うようになりました。美樹さんは友人から、和也さんが「結婚していることを隠している」ことを聞きます。腹を立てた美樹さんがそれを指摘すると、「バーテンダーに妻がいるって分かったら、離れていく客もいるからしょうがない」と開き直りました。そして、「お店に結婚したことを知っているお客さんだけがいるときは、妻をサゲる発言ばかりを繰り返している」ということも耳に入ってきました。「料理が下手」とか「ブスッとしていて面白みがない」など…。

 気にしないようにしてワンオペ育児で頑張っていた美樹さんですが、ある日、ストレスが原因で耳が聞こえなくなってしまいました。それを和也さんに言っても取り合ってくれません。「子どもと一緒に実家に帰っていれば?」と言うだけ。そこで美樹さんは悟りました。「和也さんは私も子どもも愛していない、自分のことしか考えていない」と。

「もう、夫のこと、信じていません。今はまだ子どもが小さくて働けないので、離婚はしません。幸いなことに、夫とは生活時間が違うので、顔を合わせることはほとんどないんです。夫は朝と昼、寝ていますし。この間に、頑張って離婚後のお金をためていこうと思っています。

子どもは本当にかわいくて、結婚したことに後悔はありません。これからは子どもと2人の人生をどう生きるか、それを楽しみに頑張ります」

 妻や夫を“サゲる”といっても、さまざまなパターンがあります。一つ言えることは、サゲられた相手は、直接的でも間接的でも決していい気持ちはしない、ということです。

 謙虚な心、謙遜の態度は日本人の美徳です。しかし、それをしていいのは自分のことだけ。夫や妻、子どものことを褒められたら素直に受け入れ、明るく「ありがとうございます」と言えばいいのです。その方がずっと、周囲も自分も幸せになれます。そして、決して自分以外の他者をサゲたりしないように。サゲ夫、サゲ妻は夫婦円満をぶち壊します。

(「恋人・夫婦仲相談所」所長 三松真由美)

三松真由美(みまつ・まゆみ)

恋人・夫婦仲相談所 所長(すずね所長)・執筆家

夫婦仲・恋仲に悩む女性会員1万3000名を集め、「結婚・再婚」を真剣に考えるコミュニティーを展開。セックスレス・ED・女性の性機能に詳しく、性を通して男女関係をよくするメソッドを考案。20代若者サークルも運営し、未婚世代への結婚アドバイスも好評を呼ぶ。恋愛・夫婦仲コメンテーターとしても活躍中。また、フェムテックの分野で女性を支援する企業「Glad」を創業し、新しいサービスを手掛けている。著書は「夫婦の『幸せ循環』を呼ぶ秘訣」(講談社)「モンスターワイフ」(同)「40歳からの女性ホルモンを操る53の習慣」(扶桑社)「堂々再婚」(wave出版)など多数。コミック「『君とはもうできない』と言われまして」(KADOKAWA)の監修も手掛ける。恋人・夫婦仲相談所(http://fufunaka.com/)、公式note(https://note.com/suzune_16)、Glad(https://www.glad.tech)。LINE登録で「夫婦仲チェックシート」を無料プレゼント(https://fufunaka.com/archives/lp/line)。

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