「もったいない」「理解できない」の声も…「ホワイト企業」で相次ぐ若手社員の離職 その背景とは?
従業員への待遇や福利厚生が充実している「ホワイト企業」で若手社員の離職が相次いでいます。背景について、企業の採用・人事担当として2万人超の面接をしてきた専門家が解説します。

従業員への待遇や福利厚生が充実した、いわゆる「ホワイト企業」で若手社員の離職が相次いでいるようです。こうした動きに対し、SNS上では「もったいない」「ぜいたくすぎる」「理解できない」など、離職を疑問視する声が寄せられています。恵まれた環境にいながら、なぜホワイト企業の若手社員は、退職を決意するのでしょうか。企業の採用・人事担当として2万人超の面接をしてきた、人事コンサルティング会社「人材研究所」の曽和利光代表が解説します。
「ホワイトな職場」に不安
少子化による構造的な人手不足が続く中、若手の早期離職は企業にとって大変頭の痛い課題になっています。若手を引き留める対策として、各企業は待遇改善を図ってきました。
例えば、リクルートワークス研究所の「大手企業新入社会人の就労状況定量調査」によると、新入社員の週労働時間は、1999〜2004年卒で平均49.6時間であったのに対し、2019〜2021年卒では平均44.4時間と約5時間、月換算で約20時間も労働時間が減っています。これ以外にも同調査では、仕事の負荷感は仕事量・仕事の難易度・人間関係のストレスなど、すべて低下傾向にありました。「ホワイト化」は進んでいます。
ところが、意外なことに、新入社員の不安は増加しています。同調査では1999〜2004年卒で不安を感じている人が66.6%であったのに対し、2019〜2021年卒では75.8%もの人が不安だと回答しています。
2019〜2021年卒を入社前の社会的活動経験別で見ると、社会的活動経験が「全くない」新入社員が不安を感じたのは26.2%であるのに対し、「多数」の新入社員は41.9%でした。また、離職率は、社会的活動経験が「全くない」新入社員は11.7%、「多数」の新入社員は25.4%でした。
つまり、入社前の社会的活動経験の多い人の方が不安を感じており、同様に離職率も社会的活動経験の多い人の方が高いということが分かります。
これを踏まえると、労働時間などの仕事の負荷が減っても新入社員の不安は減らず、社会経験の多い人ほど、そのことに不安を感じて、それが離職につながっている可能性がありそうです。
「成長できる」会社で働きたい若手
なぜこのような現象が起こるのでしょうか。1つ考えられるのは若い人たちのキャリア観です。就職みらい研究所の「就職プロセス調査(2023年卒)」によれば、「就職先を確定する際に決め手となった項目」を見ると、第1位は「自らの成長か期待できる」(47.7%)でした。
2位以下は「福利厚生(住宅手当等)や手当が充実している」(43.5%)、「会社や業界の安定性がある」(39.5%)、「希望する地域で働ける」(37.8%)、「会社・団体で働く人が自分に合っている」(32.3%)なので、働きやすさを重視する傾向は強いのですが、一番は「成長」なのです。
「働きやすさ」と「成長」を両立したい
そこで、どれだけ成長できるかを望み入社をした人が、ホワイトな職場を「働きやすい」と思いつつも、一方で不安を感じるというのは理解できます。特に、学生時代に意識高く自発的にさまざまな社会経験を積んできた人は「本当にここでよいのだろうか」「このままぬるい職場で安楽に過ごしていたらダメになってしまうのでは」と思っても不思議はありません。
昭和的なベテラン社員からすれば「どっちやねん」と思うかもしれませんが、長時間労働や“飲みニケーション”などで先輩や上司から広い意味での「OJT(On the Job Training、経験豊富なベテラン社員が、実際の業務を題材に若手社員や後輩に知識や技術を計画的に伝えること)」を受けられなくなってきた彼らにとっては、これをどう両立させるのかが課題なのです。
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