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菓子やカップ麺 原材料高騰で「値上げ」も、将来の“値下げ”が期待薄なワケ

原材料高騰などの要因で値上げした菓子やカップ麺などが、原材料の価格が下がっても、値下げされないことが多いように思います。「値下げ」を期待できないのでしょうか。

一度「値上げ」すると、「値下げ」するのは難しい?
一度「値上げ」すると、「値下げ」するのは難しい?

 菓子やカップ麺のように、原材料高騰による値上げが相次いでいます。「企業努力の限界」という企業側の主張も理解できますが、原材料の価格が下がっても、値上げした菓子やカップ麺などが、値下げされなかったことが多いように思います。値上げした商品は、原材料の価格が下がっても、値下げを期待できないのでしょうか。経営コンサルタントの大庭真一郎さんに聞きました。

「再値上げ」反発が怖い

Q.原材料高騰で値上げした商品が、原材料の価格が下がっても値下げされないことが多いように思います。実際、値下げされないことが多いのでしょうか。

大庭さん「値下げされないことが多いです。製造や販売に伴うコストが大幅に減少し、その後も長期的にコストが安定することが見込めるなど、構造的な変化を伴わなければ、原材料の価格が下がっても、値下げされないのが一般的です」

Q.原材料高騰で値上げした商品が、原材料の価格が下がっても値下げされないのは、なぜでしょうか。

大庭さん「1つ目の理由は、再度の原材料コストの高騰が想定されるからです。原材料コストは、天候や生産国の政治情勢、為替などの外部環境要因に左右されやすいです。これらの要因は、良くなったり悪くなったりと変化を繰り返すので、再度、悪くなったときのことを考え、原材料の価格が下がっても商品の販売価格を据え置くケースがあります。

2つ目は、値上げした価格が消費者に受け入れられているからです。値上げを行った後に販売量の減少が見られない場合(あったとしても微量な場合)、値下げを行うことは企業の利益を減少させることにつながるため、原材料の価格が下がっても商品の販売価格を据え置くケースがあります。

3つ目は、原材料以外のコストが高騰しているからです。原材料コストが下がったとしても、人件費など他のコストが高騰している場合、値下げをしてしまうと必要な利益が得られなくなるため、原材料の価格が下がっても商品の販売価格を据え置くケースがあります」

Q.商品の価格が、頻繁に変わることを避けたいことも、企業が値下げしない原因でしょうか。

大庭さん「例えば、ホテルの宿泊料金やテーマパークの入園料などは、繁忙期には通常よりも価格が高くなることが多く、需要量に応じて価格を変動させる『ダイナミックプライシング』が消費者に受け入れられています。

一方、生活必需品など消費財の価格の場合、短期間で価格を変動させる対応は、消費者に悪い印象を与えることが多いです。また、一度値下げした商品を再び値上げすることは、最初に値上げをした時以上に、消費者から反発を買う可能性が高いです。

こうしたことが、原材料の価格が下がっても、値下げされにくい要因となっています」

Q.消費者は、原材料高騰で一度値上げした商品は、よほどのことがない限り、値下げを期待できないのでしょうか。

大庭さん「価格を下げることは、製造や販売を行う事業者の元に残る利益を減らしてしまうことにつながります。加えて、前述したように、値下げをした後の再度の値上げは、消費者からの反発を買うことが多く、実行へのハードルが高くなります。

すなわち、値下げを行うことは、製造や販売を行う事業者にとってのリスクにつながることなので、消費者は一度値上がりしたら、値下げにより以前の価格に戻ることは難しいと認識することが適切と考えます」

(オトナンサー編集部)

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大庭真一郎(おおば・しんいちろう)

中小企業診断士、社会保険労務士

東京都出身。東京理科大学卒業後、企業勤務を経て、1995年4月に大庭経営労務相談所を設立。「支援企業のペースで共に行動を」をモットーに、関西地区を中心に企業に対する経営支援業務を展開。支援実績多数。以下のポリシーを持って、中堅・中小企業に対する支援を行っている。(1)相談企業の実情、特性に配慮した上で、相談企業のペースで改革を進めること(2)相談企業が主体的に実践できる環境をつくりながら、改革を進めること(3)従業員の理解や協力を得られるように改革を進めること(4)相談企業に対して、理論より行動重視という考えに基づき、レスポンスを早めること。大庭経営労務相談所(https://ooba-keieiroumu.jimdo.com/)。

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