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コミュニケーション、集団行動…発達障害グレーゾーンの子どもを「通常学級」に入れる際の“注意点”

発達障害グレーゾーンのわが子の進級先として「通常学級」を選択する場合、どのようなことに気を付けたらよいのでしょうか。自閉症児を育てた筆者が伝えます。

わが子を通常学級へ…気を付けることは?
わが子を通常学級へ…気を付けることは?

 知的障害はないものの、発達に気になる点がある。けれど、「発達障害である」というはっきりとした診断がつかない――。そうした「グレーゾーン」の子どもの場合、小学校の進級先を通常学級にするのか、通級制度を利用するのか、それとも特別支援学級に行くのがよいのか悩むものです。

 知的発達の遅れがない場合、学力面では問題がありません。その場合、特別支援学級では学習面で物足りなくなるので、通常学級の中で配慮を受けながら頑張らせることもできます。ただし、クラスメートとのコミュニケーションがうまく取れず、いじめに遭う可能性も考えて、落ち着いた環境の特別支援学級にするという選択もあります。

通常学級で求められる「2つの力」

 通常学級は「35人に対して担任が1人」という配置で、教科書に沿って授業が進められます。知的障害のある自閉症児を育てた、子育て本著者・講演家の私は、そのような環境下では、次の“2つの力”が求められるように思います。

【(1)友達とうまくコミュニケーションが取れるか】

幼稚園、保育園時代はまだ、周りの友達も幼児です。“みんなお友達、みんな仲良し”が通用します。しかし、小学生になると友達関係が複雑化し、グループを作ったり、秘密を持ったりします。

学校生活は勉強だけではありません。成績の面では何とかなっても、相手の立場に立ったり、コミュニケーションがうまく取れなかったりすると、仲間外れになることもあります。

【(2)45分間、落ち着いて座っていられるか】

小学校の授業は1コマ45分です。これが毎日、午後2時、3時まで続きます。つまり、45分間は席に着いて机上での勉強に集中できること、さらに、教師の指示に従って集団行動が取れることが前提となります。これらができないと叱られる回数が増え、子どもが自信を失うこともあるかもしれません。

もし、他の子に危害を加えたり、椅子に座っていられず、教室を脱走したりするなどの問題行動があった場合は、「ここにいるのは窮屈だ、つらい」という子どもからのSOSなので、学校側が対応を考えてくれるでしょう。しかし、おとなしいタイプの子は、他の子に迷惑をかけるわけではないので、教師にとっては扱いやすく、放置されてしまうこともあります。

 仮に、「仲間外れになった」「教室を脱走した」などの状況に陥ったからと特別支援学級を選択しても、そもそもは知的発達の遅れがある子どもたちが対象の学級ですから、学力をつけていく上では物足りないこともあります。

 2016年4月に「障害者差別解消法」が施行され、一人一人の困り事に合わせた合理的配慮を行うことが義務化されました。これにより、通常学級に籍を置いて、通級制度(東京都では「特別支援教室」)を利用している子どもには、「個別の指導計画」や「個別の教育支援計画」の作成義務が学校側に生じます。

 もし、「あなたのお子さんは通常学級にいるので、特別扱いはできません」と言われたら、それは学校側に課題があるのではないでしょうか。

わが子の「カルテ」を共有する

 個別支援計画の作成にあたっては、担任とよくコミュニケーションを取り、次のような「カルテ」を準備し、伝えておきましょう。小学校の先生は、障害名は知っていても、その分野への専門的な知識を有しているとは限りません。何より、どんな著名な医師や専門家よりも、生まれたときからずっと育ててきた保護者が一番、子どものことを知っているからです。

・成育歴
・「特別な配慮が必要な子」としての保育園、幼稚園の担任からの細かな申し送り
・主治医や療育施設によるアドバイスの共有(発達検査・心理検査の結果を渡すなど)
・子ども本人が「どんなことが苦手」で「どんなことが得意」か
・子どもが理解しやすい指示の伝え方
・パニックを起こしたときの対処法
・絶対に避けてほしいこと(例:急に音楽を鳴らさないでほしい。事前予告し、小さな音から徐々にボリュームを上げてほしい)
・どのようなタイプの友達が苦手なのか、どんなタイプの子と馬が合うか
・子ども本人に「障害の告知」をしたか、していないか(他の保護者がクラスメートにカミングアウトする場合は、まず本人への告知が優先)
・他の保護者へカミングアウトをするかどうか
・クラスメートへのカミングアウトをするかどうか。また、その方法

 また、多くの保護者がやりたがらないPTA役員を引き受けると、学校に足を運ぶ機会が増えます。そうすると、自然と先生たちと会話できる環境が生まれるので、役員を引き受けるのはいいことだと思います。

 近年、「情緒障害児学級」として、知的発達の遅れがない発達障害の子を対象とした固定級を設置する自治体も出てきました。通常学級と通級指導教室を行ったり来たりしない、固定されたクラスです。このような環境が全国に広まるとよいと感じています。

(子育て本著者・講演家 立石美津子)

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立石美津子(たていし・みつこ)

子育て本著者・講演家

20年間学習塾を経営。現在は著者・講演家として活動。自閉症スペクトラム支援士。著書は「1人でできる子が育つ『テキトー母さん』のすすめ」(日本実業出版社)、「はずれ先生にあたったとき読む本」(青春出版社)、「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方」(すばる舎)、「動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな」(小学館)など多数。日本医学ジャーナリスト協会賞(2019年度)で大賞を受賞したノンフィクション作品「発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年」(中央公論新社、小児外科医・松永正訓著)のモデルにもなっている。オフィシャルブログ(http://www.tateishi-mitsuko.com/blog/)、Voicy(https://voicy.jp/channel/4272)。

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