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福井晴敏さんに聞く 「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」のこれまで、そしてこれから

第四章まで上映している「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」で脚本とシリーズ構成を務める作家の福井晴敏さんにインタビュー。三章を残すだけとなった現在の気持ちなどを聞きました。

福井晴敏さん
福井晴敏さん

 現在、第四章まで上映している「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」で脚本とシリーズ構成を務める作家の福井晴敏さん。同作は「宇宙戦艦ヤマト2199」の続編でイスカンダルへの航海から3年後が舞台。帝星ガトランティスの侵略からテレザート星を守るために、元ヤマト乗組員が再び宇宙戦艦ヤマトでテレザートへの航海に挑む、日本を代表するアニメシリーズの最新作です。

 オトナンサー編集部では、福井さんにインタビューを実施。あと三章を残すだけとなった現在の気持ち、国民的アニメの脚本を手がけることへの思いなどを聞きました。

もう一つやれば、グランドスラム

Q.全七章と伺っていますが、ターニングポイントになる第四章を終え、第五章に突入する今のお気持ちは。

福井さん(以下敬称略)「ここまで来ると『あと一歩』という感じで、そう感じると去年は思っていましたが、そういう気分にならないですね。やることがまだ多すぎて、道半ばという感じで。ここから先、話の密度が濃くなっていきます。そろそろ終わりに入るのですが、こういう方向が見えてきたなと思わせて最後にドカンとひっくり返します」

Q.「ガンダムUC」が終わり、次に「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」のシリーズ構成と脚本を担当されています。日本を代表する2大アニメコンテンツの制作に関わることについて、どのようなことをお感じですか。

福井「あと、もう一つやればグランドスラムという感じですね。それを目指しているわけではないですが(笑)ガンダムを終え、本腰を入れてやる企画がなくて、どうしようかと思っていたらヤマトのお話を頂きました。これは天祐だと思ってやりました。いざ乗ってみたら思っていたよりも大変でした。

ヤマトにしろガンダムにしろ、追いかけ続けてきたかというと、そうでもないというのが重要だと思っています。ヤマトもガンダムも卒業して久しかったので。卒業できずにリメイクすると、僕のエゴしか投影できないものになってしまうと思い、引き受けていませんでした。適度に距離を置いていたから引き受けられました」

Q.「亡国のイージス」ではイージス艦、「終戦のローレライ」では潜水艦、今回は戦艦を扱っていますね。船と縁があるとお感じになりますか。

福井「船と縁があるのは間違いないです。船がまったく出てこない話はないんじゃないでしょうか。群像劇や閉鎖空間を描くのに船は向いています。それ自体が乗組員全体のキャラクターを統合したキャラクターとして、強大な敵に立ち向かっていけるというのもあります。そういう意味では肌に合っているんだと思います」

Q.船舶免許などはお持ちですか。

福井「免許は持っていませんし、乗り込んでみたいとは思いません。日本以外の遠くへ自分を連れて行ってくれるイメージで、子どもの頃は好きだったのかもしれません。自分の世代でヤマトというと、実在した戦艦ではなく宇宙戦艦の方を先に知りました。何百人も乗れる船が東京湾にあったりして、子どもの頃はそんな船に憧れました」

Q.福井さんの作品は、いわゆる「バディーもの」が多いと感じています。「ヤマト」では主人公の古代進とクラウス・キーマンの関係もそれに近いと思いました。

福井「バディーものではなく世代と世代のぶつかり合いということです。何か一つの価値観だけで進む話があるとすると、それは話ではなく説教やプロパガンダになります。何が正解なのか、出てくる人間が最初から持っていてもいいし、持ちようがない少年でもいいし、そういうのがぶつかり合いながら、人間としてこれだけは間違いないなという真理がチラッと見え隠れする、それが群像劇の醍醐味だと思うんです。

昭和は、先代の教えが絶対的正義で揺るぎなかったのですが、平成の世の中ではそうではありません。先代の言う通りにやっていたら会社が潰れましたとか、AIで十分になりましたとか。そんな世の中で、自分はどう生きていけばいいのだろう。先代が直面したことのない問題が毎日起きる世の中で、何を信念に生きていけばいいのだろうと。

そう考えていくと、今回のヤマトはぴったりで『割れ鍋に綴じ蓋(われなべにとじぶた)』とはこのことです。前シリーズの『2199』で出した波動砲は使ってはいけない、という葛藤に対し、先代の沖田艦長の言うことを守りながら、古代がどう対処していくかというのが、平成を生きる大人が共感しやすいというのが目算としてありました。そういう意味でいつもと同じ方法論で描くことができました」

Q.キーマンはそういう意味ではこれまでの作品でいうと、年上に対してのバディーという認識でしょうか。

福井「裏切り含みで入っている、みたいな」

Q.「亡国のイージス」の如月航や「終戦のローレライ」とフリッツ・S・エブナーと同じですね。

福井「一人だけ、皆と違う方向を見ているけど、終わってみると、実は皆と同じ方を見ている。あるいは先頭に立っていたとかですね。その変化の振り幅が物語の面白さだったりするので、そういう意味では、キーマンもまさにそういう感じになっていますね。今では皆の音頭を取っていますから」

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