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悩み解消に「日記」のススメ 人気精神科医が強調するメリットとは?

悩みを抱えているときは、どのように対処したらよいのでしょうか。悩みを解消する上でヒントとなる本を紹介します。

悩んでいるときはどう対処する?
悩んでいるときはどう対処する?

 日々、さまざまな問題に直面し、「悩み」を抱えている人も多いのではないでしょうか。今回は、悩みを解消する上でヒントとなる、「言語化の魔力 言葉にすれば『悩み』は消える」(樺沢紫苑著/幻冬舎)を紹介します。著者の樺沢さんは、精神科医として約30年活動する傍ら、自身のYouTube公式アカウントで4000件以上の悩み相談に応じてきました。

自分の感情を言語化

 樺沢さんによると、悩んでいる人の多くは(1)「つらい」「苦しい」といったネガティブな感情に支配されている(2)「どうしたらいいか分からない」という閉塞(へいそく)感を抱いている(3)「どうしようもない」という思考停止の状態に陥っている――という3つの特徴があるそうです。このままだと、何をやってもうまくいきません。

 こうした状態を解消するために、樺沢さんは、自分の感情や考えを言語化する方法を紹介しています。具体的には、日記として、その日にあった出来事や感じたことを自由に紙に書き出すというもので、毎日書き続けることで自分の悩みが可視化され、悩みの本質的な原因が分かるようになるとのことです。

 ただ、ネガティブな出来事だけを書き続けると、思考がネガティブになる可能性があります。そこで、樺沢さんはもう1つの方法として、「3行ポジティブ日記」を勧めています。これは、就寝前にその日にあった楽しかった出来事を3つ思い出し、それぞれ1行ずつ書くというシンプルな取り組みです。取り組み方法は次の通りです。

(1)洗顔、歯磨きなどを済ませ、いつでも寝られる状態にしておく
(2)寝る直前に、「今日あった楽しかった出来事」を3つ思い出し、それぞれ1行ずつノートに書く
(3)書いたらすぐに、その「楽しかった出来事」をイメージしながら布団に入り、楽しいイメージのまま眠りにつく。ネガティブなこと、余計なことは考えない

 1行以上書いても問題ありませんが、長文を書くと睡眠に影響するようなので、ほどほどに書くのがコツとのこと。ポジティブな出来事や、楽しかった出来事を中心に書くと、日常の中から「楽しい」を発見する能力が高まり、心が軽くなります。

 普通の日記でも3行ポジティブ日記でも、毎日書き続けると、洞察力や内省する力、レジリエンス(状況にうまく適応できる能力)が高まり、自分を客観視できるようになります。そうすることで、困難な状況に直面して悩んだとしても、自分なりの解決方法を見いだし、うまく対処できるようになるのです。

「悩み」で視野が狭くなる

 悩みを抱えたまま、生活を続けるとどうなるのでしょうか。先述の「言語化の魔力」では、家族で小さな会社を経営している50代男性のCさんが登場します。彼は、仕事の失敗で「1000万円」の借金を背負って精神を病み、樺沢さんの元を訪れました。その際、次のように話したそうです。

「今月中に1000万円を用意しないと、会社が倒産する。家族も養えない。もう生きていてもしょうがない。自殺して生命保険で返済するしかない」

 そこで、樺沢さんが「銀行に相談しましたか?」と尋ねたところ、Cさんは「していません」と答えました。今まで自己資金で細々と経営してきたので、銀行からまとまったお金を借りたことがないとのことでした。樺沢さんは「とりあえず銀行に行って相談してみたら?」とアドバイスをするだけで、薬を出さなかったそうです。

 1週間後、Cさんは別人のような明るい顔で来院しました。銀行に相談したところ、家と土地を担保に、1000万円の融資を受けられるようになったのです。Cさんは「月々6万円の返済ですが、それなら何とかなりそうです!」と話しました。

 1000万円の借金がある事実は1週間前と変わっていませんが、樺沢さんのアドバイスがきっかけで悩みをコントロールできると実感し、パニックから立ち直ることができました。樺沢さんは「悩みの根本原因を取り除かなくても、コントロール感があれば、『なんとかなる』という感覚が湧き、実際に行動に移す精神的な余裕も生まれます」と説明しています。

 悩みも書き出してみれば、意外と単純で、自分の視野が狭くなっているだけだと気付くものです。年始のこの時期に、自分自身を客観視する方法を試してみませんか。

(コラムニスト、著述家 尾藤克之)

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尾藤克之(びとう・かつゆき)

コラムニスト、著述家 尾藤克之

コラムニスト、著述家。
議員秘書、コンサル、IT系上場企業等の役員を経て、現在は障害者支援団体の「アスカ王国」を運営。複数のニュースサイトに投稿。代表作として『頭がいい人の読書術』(すばる舎)など21冊。アメーバブログ「コラム秘伝のタレ」も絶賛公開中。

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