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“大食い客”食べ&飲み放題で大量オーダー 店は拒否できる? 弁護士に聞く

客が食べ放題サービスや飲み放題サービスの利用時に、大量に料理や飲み物を取ろうとした場合、店は拒否できるのでしょうか。弁護士に聞きました。

食べ放題サービスで“大食い客”への料理の提供を断れる?
食べ放題サービスで“大食い客”への料理の提供を断れる?

 食べるのが好きな人にとって、飲食店の食べ&飲み放題サービスは、魅力的に感じると思います。ただ、中にはサービスの利用時に、料理や飲み物を一度に大量に取ろうとしたり、大量に注文しようとしたりする人もいるようですが、この場合、店は料理や飲み物の提供を拒否できるのでしょうか。芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士に聞きました。

客への提供義務が生じる

Q.飲食店でバイキング形式、あるいはオーダーバイキング形式の食べ&飲み放題サービスを利用する客がいると仮定します。その客が料理や飲み物を一度に大量に取ろうとしたり、大量に注文しようとしたりした場合、店側は拒否できるでしょうか。

牧野さん「客が食べ放題サービスや飲み放題サービスの利用の旨を伝えた時点で、店との契約が成立します。そのため、店側は“大食い客”であっても、原則として料理や飲み物を提供する義務があります。客が一度に大量に取ろうとしたり、大量に注文しようとしたりしたとしても、基本的に断ることはできません。

ただし、『1人○個まで』『1人○皿まで』『1人1杯まで』といったルールを設けていて、客が事前に承諾していた場合、店はそれに基づき、決められた個数以上の料理や飲み物の提供を断ることは可能です。また、『食べ残しは別途料金をいただきます』とあらかじめ警告することはできると思います」

Q.では、客が料理や飲み物を大量に取ったり、大量に注文したりしたことで店の営業に支障が出た場合、店側は客に賠償を請求できるのでしょうか。

牧野さん「客が料理や飲み物を大量に取ったことで店の営業に支障が出たとしても、その損害と客の行為との因果関係を具体的に証明するのは困難です。客への賠償請求は難しいと思います。ただし、食べ残しがあった場合は別途相応の料金を請求することで対応すべきでしょう」

Q.食べ放題サービスや飲み放題サービスの実施時に在庫切れが発生し、一部サービスの提供を中止した場合、店は客に料金の一部を返金する必要があるのでしょうか。

牧野さん「極端な例ですが、飲み放題サービスを利用したときに店員の不手際や在庫切れで1杯しか飲み物を注文できなかった場合、店側の明らかな債務不履行となり、客は店側に対して不足相当分の支払いの拒否か、すでに支払った場合は損害賠償請求(料金相応部分の一部返金を含む)が可能でしょう。

ただ、店側の明らかな債務不履行と損害が証明できなければ、請求することが難しいです。そのため、場合によっては、賠償請求が認められないケースもあるかと思います」

Q.飲食店の食べ放題サービス、飲み放題サービスを巡って裁判に発展した事例について、教えてください。

牧野さん「特に裁判例は見当たりませんでした。一般的に、飲食代よりも弁護士費用の方が高額なため、裁判をすると赤字になる場合が多いからではないでしょうか」

(オトナンサー編集部)

【写真】食べ放題の定番料理

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牧野和夫(まきの・かずお)

弁護士(日・米ミシガン州)・弁理士

1981年早稲田大学法学部卒、1991年ジョージタウン大学ロースクール法学修士号、1992年米ミシガン州弁護士登録、2006年弁護士・弁理士登録。いすゞ自動車課長・審議役、アップルコンピュータ法務部長、Business Software Alliance(BSA)日本代表事務局長、内閣司法制度改革推進本部法曹養成検討会委員、国士舘大学法学部教授、尚美学園大学大学院客員教授、東京理科大学大学院客員教授を歴任し、現在に至る。専門は国際取引法、知的財産権、ライセンス契約、デジタルコンテンツ、インターネット法、企業法務、製造物責任、IT法務全般、個人情報保護法、法務・知財戦略、一般民事・刑事。

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